盗難された車が事故を起こした!所有者の賠償責任はどうなる?

交通事故が起きた

|車両が盗難されている現状を知って欲しい!
朝になってカーポートを見たら、大切にしている車が忽然と消えて無くなっている!という状況を想像したことがあるでしょうか?

車両盗難はニュースなどで知っているが、住宅街や会社の社員寮内の駐車場なので自分には関係ない、と思っている方が大半だと思います。


しかし、意外なことに実は70%以上がカーポートなど屋外保管の自宅や契約駐車場から盗難されているのです。


最近は、喜ばしい事に車両盗難の件数は年々減少傾向にはありましたが・・・。


2022年の車両盗難の認知件数は5,734件、2003年のピーク時64,223件と比較すると大幅に減少はしていますが、ここ数年では増加傾向にあります。


毎日、どこかで約16台の車両が盗難されていることになります。


車両盗難といっても、大きくは三通りのパターンがある様です。


ひとつは、大掛かりな窃盗団グループ等による、海外や一部国内での車両本体の売却が目的で盗み出す場合。


もうひとつは単純明快で車に乗りたかった、緊急に車が必要になった、目の前にすぐに乗って立ち去る事が可能な車が有った等、短絡的かつ無計画で、機会に便乗した様な盗難。


三つ目は一人以上から数人のグループで、部品取りなどが目的で車両を盗難する場合です。


窃盗団による盗難車両を搬送する場合は、結構大胆かつ堂々とトラック等に積み込んでいる様です。


目撃者がいた場合でも、「まさか盗難の真っ最中とは思わなかった!」と思わせるほど堂々としている様です。


自走による運搬を選択した場合でも、1~2台の伴走車を伴って不慮の事態に備えているということで、その用心さもあるのか?窃盗団による盗難車両が絡んだ事故対応の経験は以外にも有りません。


盗難車両全体としての犯人検挙率は、30%台と他の犯罪の検挙率と比較しても低い割合で推移しているのが現状です。


従って、車両が戻ってくる確率も犯人が逮捕される確率も低くなり、盗難されてしまったらどうする事もできないことが多いというのが現実の様です。


盗難車両が発見される経緯としては、放置された状態にある車両を見つけて警察に届けられたケースがほとんどになります。


検挙率が低いと感じる、この数字は窃盗団による盗難被害が大きく影響しており、車を使用する目的による無計画でチャンスに便乗した様な盗難や、部品取りが目的の盗難については、犯人の検挙率や車両が発見される確率はもっと高くはなります。


盗難された目的を明確に区分けするのは不可能なので統計上の数字は不明ですが、大掛かりな窃盗団の仕業ではないだろうと想定出来る車両盗難の場合、概算として60%以上の確率で車両は発見されている感じです。


しかし、残念な事に車を発見しても、車自体が燃やされてしまった、オーディオやエアコン等は当然ですが、スペアタイヤや車載工具、スピードメーターやシートの類まで外されていたケースも有り、再利用は不可能状態の車両がほとんどでした。


盗難された車両で事故を起こす場合としては、無計画に盗難した車両によるものがほとんどであり、盗難した後の比較的早い時間帯で事故を起こすケースが多い。


|盗難された車や無断使用の車が事故を起こした場合の責任

盗難された車両を使用しての犯行後は、犯罪を実行した地域や車両を盗難した地域から少しでも遠くに離れたい一心で、速度超過を招き事故を起こすケースが多い。

盗難された車両が事故を起こし、他人に損害を与えた場合の責任は誰が負うのでしょうか?


盗難した車を運転していた者が事故を起こして他者に損害を与えた場合、盗難車両を実行した運転者に事故を起こした責任つまり過失があれば、その運転者が過失分の賠償責任を負うことになります。


よって、盗難車両が赤信号に従って停車していた時に追突されたなど、盗難車両に賠償義務が発生しない無過失の場合は、事故の当事者との関係においては賠償の責任は負いません。


一方で、盗難された車両の所有者は、盗難被害にあう原因として明確な管理上の瑕疵があると認められる場合には、車両管理上の責任が問われ賠償責任を負う可能性があります。


過去の裁判例として、車の所有者がイグニッションキーを差し込んだまま、ドアロックもせず放置していたために盗難された場合は、盗難された車両の所有者に賠償責任を負わせた裁判例もありました。


盗難された車両所有者の管理責任については、事案ごとに個別事情や状況等によって検討され責任の有無が判断される事になります。


概ね不特定多数の人が立ち入る様な場所でエンジンをかけたまま一定時間放置していた等、極端ですが正に盗難して下さい!状態と判断される様な場合。


あるいは盗難にあった被害を速やかに警察に届け出さなかった場合や、事故が起きたのが盗難されてから時間が経っていない場合は、賠償責任を負う可能性が高いという事になります。


それでは、無断で車を使用されて所有者が知らない状況で事故が起きた場合の責任はどうなるのでしょうか?


盗難ではありませんが、車両を無断で使用されて事故が起きた場合は、無断使用した運転者と保有者との人間関係や、車両の保管状況、無断使用した状況や目的、車両を戻す予定などの諸事情を個別に勘案して所有者の責任範囲が判断されます。


例えば、日常的かつ継続的に無断で使用されている状況を所有者が認めている様な実態がある場合や、客観的に所有者の運行や管理上の支配が及んでいると判断出来る場合等は、他人に与えた損害について所有者が賠償責任を負う可能性は高いといえるでしょう。


|盗難された車両に付保されている自動車保険が適用される場合は?

盗難された車両が事故を起こして他人に損害を与えた場合であっても、車両の所有者に車両管理上の責任において瑕疵が無い場合は、自賠責保険をはじめ任意自動車保険の「対人賠償保険」や「対物賠償保険」を使用して損害賠償金を支払う義務はありません。

自賠責保険や任意自動車保険は、被保険者が法的な賠償責任を負う範囲においてのみ、契約に基づいて保険金の支払が履行されるということになるからです。


また、盗難車両の運転者が事故によってケガをした場合でも「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」から、当然ですが給付を受けることはできません。


人身傷害保険や搭乗者傷害保険は、自動車保険に加入している車両の使用について、正当な権利を有する人の許諾を得ていることが適用の条件となっているからです。


これに対し、車両の所有者が管理上の責任があると判断された場合は、責任の範囲で自賠責保険や任意自動車保険の「対人賠償保険」や「対物賠償保険」を使用して賠償義務を果たすことは可能です。


また、車両保険についても、盗難車両の所有者の管理上の責任に重大と言える様な瑕疵が無い場合は、車両保険金の支払いを受けることは出来ます。


保険会社は、車両保険が付保されている車両が盗難された場合は、車両が全損したとして取り扱いますので契約の際に設定した保険金全額が支払われることになります。


そのために、盗難された車両に及ぶ全ての権利は保険会社に移る事になりますので、後日車両が発見されたとしても、その車両は所有者に返還はされません。


但し、多くの保険会社は、保険金を支払った日の翌日から60日以内に車両が発見された場合は、受領した保険金を保険会社に返金することで車両を所有者に引き渡すことができる様にはなっています。


そして引き取った場合は、盗難された車両の必要且つ認定された修理費用としての保険金を請求することも可能になります。


車両の引き渡しには、所有者が希望する場合という条件が付きますが、盗難された車両がどの様に使用されていたのか不明であり、気持ちの上で再び所有するには抵抗があるらしく、ほとんどのユーザーは引き取らずに保険会社に所有権を移す処理を選択しています。

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