「共同不法行為」とは・・加害者が複数!賠償責任はどうなる?

交通事故が起きた

|交通事故には特異の「共同不法行為」があります!
最初に「不法行為責任」とは?を知りましょう。


民法第709条において「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とされています。


交通事故に当てはめると、追突などによって被害者にケガをさせた!或いは車などの物を損壊した!等の場合は、不法行為による賠償の責任を負うという事になります。

この賠償の責任は、事故状況によっては1人とは限りません。


複数の加害者が関与して1つの不法行為を構成する場合もあるのです。


例えば、双方の車両に過失が生じる交差点での出会い頭事故が起きて、事故にあった車両の同乗者がケガをした場合です。


相手方の車を運転していた者と、ケガをした被害者を乗せていた車両の運転者の2人が加害者となって「共同不法行為」を構成する事になります。

他には、車両同士の衝突による衝撃で一方の車両が民家や店舗に突っ込んでしまった場合や、道路上の歩行者を1台若しくは2台の車両が連続して撥ねてしまった場合等もあります。

昨今の注目される事例としては、車両を運転することを知っていて運転者に酒を提供した者、無免許で運転する事を知っていながら車を貸した者も事故が起きれば「共同不法行為」が成立し、「共同不法行為者」として責任を負う事態も起こっています。


飲酒の運転者は当然ですが、運転者に酒を提供した者、また無免許と知っていながら車を提供した者などが、共同の不法行為によって他人に損害を与えたとして、不法行為者全員が連帯して損害賠償の
責任を負うという事になります。

共同不法行為の責任を問われた一方の加害者が、「もう一方の方が過失が大きいので、過失が大きい方に請求して欲しい」とか「被ったケガはもう一方から受けた衝撃が原因なので、大きい衝撃を与えた方に請求して欲しい」と主張する加害者もいます。


しかし、共同不法行為は連帯債務なので、それぞれの責任(過失)割合にかかわらず被害者から請求された場合は賠償しなければならない義務があるのです。


被害者は、不法行為者全員に順次または同時に損害賠償の請求をすることができ、その中の一人が損害額全額の賠償をした場合には、他の加害者の賠償責任は消滅することになります。


これを、「不真正連帯債務」と言います。


共同行為者のうち、どちらが直接の損害を加えたか不明の場合でも、被害者から請求された場合は損害賠償金を支払わなければなりません。


「共同不法行為責任」は、直接の加害者に限らず、加害者の使用者や運行供用者との間においても成立します。

また、レアなケースとして、交通事故によるケガの治療を受けた際に、医療過誤によって症状が悪化し損害が拡大した様な場合は、事故の加害者と治療に携わった医師との共同不法行為が成立する場合も有り得るのです。


|少し複雑な「不真正連帯債務」とは?

例えば、A車両とB車両双方に過失が生じる衝突事故によって操作性を失い、2台とも歩道に乗り上げてしまい、歩道上にいた被害者Xの右足にA車両が、同じ被害者Xの左腕にB車両が衝突した場合です。

A車両とB車両は、被害者Xに対して共同不法行為の責任を負うことは明確なのですが、被害者Xに対して、A車両は右足でB車両は左腕と、被害者に与えた損害がそれぞれ違う場合はどうなるのでしょう?


民法719条第1項では「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする」と明示しています。

この条項によって、A車両は被害者Xの足で、B車両が腕であったとしても、AとB双方とも、被害者Xの腕および足の傷害と、転倒してケガを負った場合など
相当因果関係を有する全ての損害について、連帯して責任を負うという事になります。

被害者Xの総損害が、仮に100万円の損害だった場合は、AとBのいずれも連帯して賠償の義務を負うということです。


この場合、Aが被害者Xに損害額の全額100万円を支払った場合は、被った損害の全額が賠償された事になるので、被害者Xは別途Bに対して賠償金を請求することは出来ません。

このような責任を「不真正連帯債務」といい、共同不法行為者全員が損害賠償を支払う義務を負いますが、そのうちの一人が損害賠償金を支払えば、支払った限度でそれ以外の義務者の支払義務は免れるということになります。


少し踏み込んで、被害者Xが受けた損害100万円のうち、Aが60万円を支払った場合は、Bの賠償責任額はどうなるのでしょうか?

AとBの債務は不真正連帯債務なので、一部弁済(賠償金の支払)であっても、他の連帯債務者に影響を及ぼすことになります。


つまり、Bの支払い義務は100万円から60万円を差し引いた残額40万円に変わります。
そして更に、仮にAだけが被害者Xから60万円の支払免除を受けた場合、Bの債務は40万円に減額されるのでしょうか?


最高裁は「債務は別々に存在するので、その一人の債務について和解等がされても、現実の弁済がないかぎり、他の債務については影響がない。」(最高裁判昭45.4.21)


つまり、Bの債務は減額されず100万円全額の支払い義務を負うことになります。

それでは、Aが被害者Xに100万円全額を支払った場合ですが、その場合は現実の弁済がなされたことになるので、その効果はBに及んでBは債務を全て免れることになります。

共同不法行為の一方のAが、被害者に全額賠償した場合は、公平上の見地からAはBに対して求償権を認めるというのが、判例においても実務的にも通説と解されています。


求償権行使の範囲としては、AとBの過失割合に応じて按分するという考え方が一般的に採用されています。


例えば、AとBの過失割合が<A70%:30%B>の場合は、100万円のうち30万円はBの責任範囲となり、AはB対して30万円を求償できるということになります。

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|自賠責保険における共同不法行為の対応は?

交通事故によってケガをした被害者は「傷害による損害」として、自賠責保険から120万円を限度として補償されます。

自賠責保険の保険金額120万円は、被害者1名に対しての補償額になります。

2台の加害車両によってケガをさせられた場合は、車2台による共同不法行為が成立するので事故の被害者は加害車両2台に対して損害賠償の請求をすることができます。

ケガの損害賠償は、当初は自賠責保険の限度額で補償することになりますので、共同不法行為の場合は自賠責保険2本で支払うことが出来ます。


つまり、120万円✕加害車両2台=240万円まで自賠責保険で支払えることになります。

過失の無い被害者にとっては、自賠責保険が1台分であろうが2台分であろうが、被った損害の全てを補償してもらえるので、どうでもいいのですが保険会社にとっては自賠責保険だけで240万円を支払えるのは大きい!!のです。

なお、共同不法行為の自賠責保険2台分は、傷害のみではなく、後遺障害や死亡事故の場合も適用になります。


例えば、後遺障害14級に該当した場合は、75万円✕自賠責2本=150万円を自賠責保険のみで支払う事ができるのです。


|自賠責保険特有の「異時共同不法行為」とは?
次に「共同不法行為」の頭に「異時」が付いた「共同不法行為」についてです。


「異時共同不法行為」とは、交通事故によってケガをして治療継続中に、2回目の事故が発生して、その結果治療していた部位を更に負傷してしまった場合をいいます。

「共同不法行為」は、法律上の用語で該当する条文も有るのですが、この「異時」が付くと法律上の概念ではなく、自賠責保険が交通事故の賠償に関して実務的に使用している概念になります。

弁護士等の法律専門家は、「異時」が付いた共同不法行為は法的には違和感が有る!といいます。


更に、法律上の「共同不法行為」と認定するのは困難とさえ言い切る弁護士もいます。


現在の法律実務においては「客観的関連共同性」という共同不法行為の要件が満たされていない、つまり、全く別の日時や場所においての不法行為で、被害者が同一というだけで時間や場所が接触していない状況を、共同不法行為と認定すること困難と言う意味です。


その代わりに、「寄与分」という概念を持ち出してきます。


「寄与分」とは、最初の事故の対応をした保険会社Aと2回目の保険会社Bとの間で、2事故目で被害者に与えた損害の影響等を考慮して、按分して損害額を認定するということです。

例として、最初の事故と2事故目の「寄与分」が仮に<2:8>で損害額が300万円だった場合、2回目の事故の損害について保険会社Aは60万円、保険会社Bは240万円を認定するという事になります。


保険会社Aは最初の事故の損害額の全額と2回目の事故の60万円を支払うことになります。


この考え方であれば、ほとんどの弁護士が納得感のある理論構成といえる様です。


しかし、保険会社の立場から見た場合、「寄与分」について調査を行い、割合などの判断や結論に至るまで相応の時間を費やす可能性を考えると、迅速な被害者対応に問題があるという考え方もあります。


被害者の迅速な救済という意味では、自賠責保険に限った認定かも知れませんが、保険会社のほとんどの担当者は被ったケガを引き継ぐ感覚なので「異時共同不法行為」の認定に違和感は持っていないのです。


|「異時共同不法行為」の事故が起きた時に対応できる知識は必要!

「異時共同不法行為」が認定された場合、最初の事故と2回目の事故でケガをした同じ部位の取り扱いが問題になります。

保険会社の対応としては、最初の事故の治療費を一括払い対応をしている場合は、2回目の事故日前日までの分を支払って終了となります。


被害者は、2回目の事故直前までの損害の範囲で慰謝料等が計算されて、最初の事故対応をしていた保険会社と示談することになります。

2回目の事故以降の治療費等の損害については、2回目の事故の加害者が加入する保険会社がバトンタッチされて対応することになり、治療が終了した場合の示談は二度目の事故の保険会社と交渉する事になります。

但し、2回目の事故による損害が大きくなって、傷害の自賠責保険の限度額である120万円を超えた場合で、最初の事故の示談額が120万円未満の場合は、120万円迄の範囲で最初の事故の自賠責保険から支払いを受けることができます。


最初の事故と2回目の事故の対応をする保険会社が同じ場合は、情報を共有することが可能ですが、保険会社が異なる場合は事故当初は把握できない場合も起こり得ます。

2回目の事故が起きた場合は、必ず最初の事故を対応している保険会社に報告することが必要になります。


そのままにしておくと、一定の時期まで重複請求をする状況も起きてしまいます。

加害者請求の対応をする途中の手続きの中で、例えば自賠責保険の現存確認(自賠責保険の有効性や、加害者や被害者登録、車両の特定等を確認する問い合わせ等)や中途精算等で、重複通院は判明する事にはなります。


示談まで不明の状況で推移することは、ほとんどと言っていい程絶対に有りません。

保険会社が何らかの手続きを介して判明した場合、モラルハザード案件として訴訟以外では解決が困難になる可能性も出て来ます。


また、治療状況や内容から、認定金額が減額されてしまう場合もありますし、治療費や休業損害等の既払い金額によっては、不当利得として返還請求をされることも起こります。

「異時共同不法行為」を知らなければ、事故によって通院している時に更に事故にあった場合は、重複通院になって且つ重複した請求を行ってしまう事態が起きてしまう可能性もありますし、それが問題になるとの認識を持つことも出来ません。


仮に、事故が起きた場合に「そう言えば・・」的にでも、思い出して対応できる基礎的な知識として理解頂きたい。


「共同不法行為」も「異時共同不法行為」も決して珍しい事案ではありません。


チョットしたタイミングで、容易に起きてしまうのです。


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