自転車で加害事故!運転者が高齢者や児童でも賠償責任を負う!

交通事故が起きた

|自転車による事故の現状は?
警察庁の統計資料では、自転車事故の件数は減少の傾向にあるといえますが、それでも全事故件数の約20%弱を占めています。


交通事故件数が減少傾向にある中で、自転車事故の件数比率は2022年で約23%強と高くなる様相も見せています。


特に自転車事故の当事者別件数の調査では、対自動車や自動二輪車との事故について絶対件数は高いが、減少傾向が見えるのに対し、対歩行者との事故は増加しており、大きな社会問題になってきています。


特に最近では、公道を走行する事ができないはずのフル電動自転車による事故が目立ってきた傾向にある様です。

保険会社においても、日常の事故受付を通して自転車が加害者になった事故が増加傾向にあることや、ながらスマホが原因?!と思える様な時代を反映していると言っても過言ではない自転車特有の事故報告も増えています。


自転車事故の原因は、いろいろな要素が重なり合って発生しています。


その要因のひとつとして、道路整備や交通ルールの徹底といった環境整備が進んでいないことがあります。


自動車の運転は免許制度がとられているため、運転者は道交法などの規制内容について一定レベルの知識を持っています。


また、運転者年齢には下限を設けられているので、危険予知や回避など咄嗟に判断する能力もこれも一定レベルは有るはずです。


その自動車でも事故は起きているのです。


自転車は、道交法や規制に関する知識がなくても、老若男女誰でも気楽に乗りたい時に乗れる状況にあること、そして年齢制限も無いので中学生や高校生に限らず、小学生や児童が乗ることも出来ます。


しかし、自転車は道路交通法(以下道交法)上では「軽車両」に該当します。


その「軽車両」に危険予知力や判断力等が不十分な小学生や児童や、そして自動車の運転が危険になったと家族や本人が判断して自動車の免許を返納した高齢者が乗るのです。


更に、昨今ではスマホなどの普及により、自転車に乗車しながらの操作をするという行為を目にする機会も増えています。


そして、自転車と同様に歩行者側も「歩きスマホ」で周囲や自転車への注意も散漫になっていることがあります。


そんな自転車と歩行者が同じエリアの中で動いているのです。


事故が起きない方が不思議なのかも知れません。

|自転車事故が起きた場合の損害レベルは結構大きくなる!

自転車事故を起こしたのが中学生や高齢者だから・・と言って、損害賠償の義務を免れることには絶対になりません。

一般的かつ通常の損害賠償義務が発生します。

そして、保険会社の担当者は自転車で事故を起こした場合の大変さと、それ以上に賠償責任を負うことの恐怖がまだまだ知られていないことを実感します。


保険会社に入る事故報告は「自転車で歩行者にケガを負わせてしまいました。保険を使って賠償したい」という内容ならまだいいのですが、最も多いのは「自転車で歩行者にケガを負わせてしまいました。賠償のために使える保険はどんな保険?」になります。

自転車に乗って事故を起こした大変さは、不謹慎かも知れませんが自動車事故と同レベルか状況によってはそれ以上!!


自転車で事故が起きた場合の損害は、大きくなる場合が多い。


その理由は、自転車は転ぶ!そして、事故の相手が歩行者である場合はこれも・・無防備で転ぶ!から。

2018年7月、1歳の幼児を抱えて自転車を運転していた母親が転倒し、地面に打ちつけられた幼児が死亡するという痛ましい事故も起きてしまいました。

そして、車道などの道路を走行する自動車と違い、高齢者や幼児や児童などの歩行者と同じエリアで乗車する場合が多い自転車は、必然的に「人」と事故を起こす確率が圧倒的に高くなります。

過去には、加害事故を起こした小学生の保護者が9、000万円を超す損害賠償金を請求された裁判も話題になりました。


また、相談を受けた事例です(詳細には紹介出来ませんので、ご了承頂きたい)。


中学生の子供がスマホを見ながら自転車を運転し、前方不注視により買い物帰りの50歳代の主婦に後から衝突した事故がありました。


被害者は転倒して右側の膝蓋骨(膝の骨)を骨折し、9ヶ月に及ぶ治療の甲斐なく後遺障害が残存してしまいました。


後遺障害と傷害分の賠償金総額は、一般的な家庭が簡単に支払える金額でありません。


さらに、対応できる保険の加入も一切無かったので、結果的には親が自宅を売却して賠償金に充てたという、加害者にとっても痛ましいと思える事例もありました。


また、76歳の高齢者が商店街を走行中にバランスを崩して転倒!その巻き添えで、幼稚園児が自転車の下敷きになり、上腕骨骨折。・・・・
賠償請求の訴訟まで発展し、途中で自らの生命で償ってしまったという事例もありました。

|自転車の賠償保険に保険に加入している割合はどの位?
またまた、警察庁の調査ですが、2022年に自転車が加害事故となった件数は1万6千件を超えており、19歳以下の若年層で30%近くが死傷しています。


更に、自転車の損害保険加入率は約63%であった事が判明しています。


自転車保険の加入率63%を、想定していたより高いと見るかどうか?です。


比較にはなりませんが、例えば「損害保険料率算出機構」の調査概況によりますと、自動車の任意保険の加入率でも約75%程度なので、自転車保険の付保率63%は予想以上高い!と感じたかも知れません。


しかし、この加入率は人身事故などを起こしたために判明した自転車の加入率です。


統計上には出て来ない、軽微な事故や自転車の保有台数に対しての自転車保険加入率は、ずっと遥かに低い状況で一説では40%を切るのではないかといわれています。


自転車事故に対応できる保険に未加入であったり、フル電動自転車の様に公道を走行すること自体が違法な自転車等に乗って、事故を起した場合は損害賠償金全額が個人負担になるということです。

|自転車保険は自転車に乗る人には絶対に必要な保険です!

家族の中に一人でも自転車に乗る人がいる場合は、自転車保険は絶対に必要です!

自転車保険は主に「自転車の事故によって、被害者に与えた損害賠償を補償するため」に加入します。


自転車保険に加入する方法もいろいろありますので、加入する気持ちがあれば即日は言い過ぎかも知れませんが直ぐにでも加入は可能です。


専用の自転車保険もありますし、既に加入している自動車保険に「個人賠償責任特約」を加える方法もあります。


「個人賠償責任特約」の場合は、契約が1本で「本人・配偶者・同居の親族・別居の未婚の子」が補償対象となるのが一般的です(保険会社によっては若干内容が変わる場合もありますので、加入の保険については代理店等に確認ください)。


何度も言いますが、自転車の賠償責任保険に未加入で事故を起こしてしまった場合、相手への損害賠償は加害者自身が自ら負担することになります。


自動車事故の場合は、強制加入の自賠責保険があるため、不幸にも事故を起こした場合は仮に任意保険が未加入であっても被害者への最低限の補償は可能です。


また、無保険車やひき逃げ事故にあった場合でも、政府保障事業により被害者は一定の範囲で補償を得ることはできますが、自転車事故には最低限の補償も政府援助もありません。


被害者側にしてみても、加害者側が保険の加入もなく、損害賠償の義務を履行する資力が無ければ結果的には、一切の補償が受けられない事になります。

自転車による事故が自動車事故より怖いと言われるのは、児童や高齢者も自転車に乗れるために事故が起きる確率や可能性が高い、事故が発生した場合の損害レベルを軽視しており、事故が起きて加害者になるかも知れない意識が低い!こと等があげられます。


万が一事故が起きると加害者の資力が全てになります。


資力の状況によっては、被害者は充分な損害填補が受けられない事も起きます。


加害者、被害者の双方にとって不幸です。

|加害者になって高額賠償義務が生じた場合は破産で逃げられる?

自転車事故に限らず、交通事故を起こして損害賠償が確定した場合は破産して逃げる!と、とんでもない発想をする人もいる様です。

しかし、法律は逃げ得を許さない!ように作られています。


重過失など不法行為による高額な損害賠償の義務は「破産法」において免責の対象にならないことが明確に規定されています。


つまり、自己破産をしても賠償金の支払義務は消滅しませんので、資力レベルによっては一生をかけて償っていく状況にもなるのです。


|自転車と「人」が事故にあった場合の過失認定の傾向

事故には必ずと言っていいほど「過失相殺」の問題が生じる事が多く、状況によっては歩行者であっても過失が生じる場合が有ります。

自転車と「人」が事故にあった場合、過失割合のイメージはどうでしょうか?

歩行者の過失が認定される場合は確かにありますが、自転車と歩行者では歩行者側は交通弱者、つまり被害者側になります。

一例として、青信号に従って横断歩道上を渡っていた歩行者と、同じ横断歩道上を通行していた自転車が歩行者と並走や対向にかかわらずに接触や衝突した場合です。


歩行者の過失は0%と判断される判例が主流で「別冊判例タイムズ」においても同様に記載されておりますし、実務上でも同様の判断がなされています。

また、歩行者に最大の過失が認定される可能性が高い事故形態としては、歩行者が信号を無視して赤信号で横断を開始した際に右方や左方から、青信号で直進して来た自転車と横断歩道上で衝突する場合です。


「判例タイムズ」においては、歩行者に80%の過失、自転車に20%の過失と判断しています。

これが、目撃者もいなくて歩行者が青信号によって、横断をしていたと勘違いを含めて主張した場合はどうでしょうか?

自転車側が青信号であったことを立証できない場合は、自転車側が過失大の第一原因者として処理されることになる可能性も考慮しなければなりません。


見方を変えれば、自転車が「人」と接触や衝突した場合は、必ず何らかの負担が自転車側に生じるという事なのです。


最低限の対策として、自転車保険には加入すること、そして自転車に乗る際はアクシデントが発生しても直ちに停車するか、容易に回避できる様に低速で走行することが重要と思っています。

自転車による歩行者との事故はホントに怖い!!

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