|飛び石によって傷がつくなど車の損壊は結構多い!
交通事故といっても相手がいる事故や、自損事故などの単独事故と形態はいろいろあります。
相手がいる事故では、相手の過失割合に応じて賠償を受けることが出来るのですが、相手を特定する事ができても損害賠償の請求が難しい事故もあるのです。
道路上を走行していた時に、前を走行している車両から小石などが飛んで来て、ライトが壊れたり、ボンネットに傷が付いたり、フロントガラスが割れたりする飛び石による事故もそのひとつです。
先行の自動車が走行中に道路上の小石を跳ね上げたり、タイヤの溝に挟まっていた小石が遠心力によって飛ばされて、後続の車両に当たってしまうケースで、飛び石事故と聞くと、フロントガラスに亀裂が入る程度・・と思われるのが一般的ですが、中には損害が大きくなったり、もう少し状況が変わっていたら大惨事になる様な事故もあります。
実際に起きた事故ですが、後輪が内側と外側に横に並んだダブルタイヤを装着している大型コンテナの車両が、タイヤ間に挟まっていた女性のこぶし大の石を飛ばして、後続車のフロントガラスに突き刺さった事故もありました。
また、冬の東北地方で、タイヤの回転により跳ね上げた雪が、フェンダーの内側に張り付いて行き、それが大きな氷になって剥がれて飛ばされ、対向車線を走行して来た車両の運転席側のサイドガラスを、すれ違いざまに直撃した事故もありました。
飛び石による損傷は、たまたま運が悪かっただけ、タイミングが悪かったと思うかも知れませんが、洗車等の機会がある時に車のボンネットやグリルなどのフロント部分を見て下さい。
購入して半年位も乗っていると、必ずと言っていいほど、先行車両からの飛び石かも・・と思われる傷が付いているはずです。
飛んで来た石などが小さかっただけで、起きる確率が低い事故ではないのです。
「飛び石でフロントガラスに亀裂が入った!先行のダンプカーの登録番号は記録した。相手に損害賠償請求をしたい」と、損保の窓口などに、保険使用を含めて相談に来られるケースは一定数あります!
自分で跳ね上げた石なら諦めも付くのでしょうが、他人の車が跳ね上げた石によって損害が発生した場合、損害賠償請求したくなる気持ちも理解出来ます。
|飛び石の相手に損害賠償請求をしたい!
飛び石によって、フロントガラスが割れたり車に傷がついた場合、飛ばしてきた相手に損害賠償を請求できるのでしょうか?
ほぼ100%の加害車両側は、後続車両に飛び石被害をもたらした意識も無く、気が付きもせずそのまま走り去ってしまうのが一般的です。
そのため、加害車両を特定するのは困難なので、損害賠償の請求をする相手も不明というケースがほとんど!
ドライブレコーダー搭載車であれば、加害車両を特定できる可能性は否定しませんが・・。
実際に、高速道路上で飛び石被害が起きた時の、ドライブレコーダーの映像を見せてもらった事がありました。
映像は、先行車両の登録番号も確認出来るレベルで記録されていました。
突然フロントガラスに、大きな音で「バチン」と何かが当たる音がして、その瞬間に亀裂が四方に走ったのですが、映像によって何がどこから飛んで来たのか?を特定することは出来ませんでした。
何がフロントガラスに当ったのか?!小石?落ちていた車などの部品?前走車両から外れた小さなボルト?
そして、本当に前走車両が跳ね飛ばしたのか?それとも、追い越し車線を走行して来た車両?対向車線から飛んで来た?・・どのケースも可能性は否定できないのです。
損害賠償を請求するには、相手を特定することや被った損害の立証義務と法的な根拠が求められます。
それでは、相手が特定できれば飛び石による損害の請求が可能になるのでしょうか?
|飛び石による損害賠償請求は法的に可能?!それとも請求は不可?!
飛び石によって車が壊れた場合、石を飛ばした相手は法的にどんな罪になるのでしょうか?
最初に検討するのが、道路交通法なのですが・・道路上の石に注意をして車を走行させなければならない!という義務は明記されていません。
更に、車の運転者が遵守しなければならない項目が「道交法第71条」にて規定されていますが、その中にも道路上の石に注意して走行すべきとも明記されていません。
最後は、「道交法第70条」の「安全運転義務違反」をもって違法性を主張する事になるのですが、一般条項で責任を負わせるにはかなり限定的で特殊な状況が必要になってきます。
例えば、舗装されていない相応に大きな石も有る砂利道で、後続車両の存在も認識していている状況下でありながら、石が飛んだ場合は後続車に衝突する具体的な可能性を予見できるにも関わらず、車輪を空転させる様な走り方をした状況など・・・を想定しています。
そして、この様な状況であった事全てを、損害賠償を請求する側が立証する必要があるのですが、現実には極めて困難です。
次に、刑法上の罪状で最も近いイメージとしては、「器物破損罪」になるのかも知れませんが、過失では器物破損罪は問えず「故意犯」であることが必要になります。
石を飛ばして、後続車両を壊してやろう!とか、後続車のフロントガラスを狙って石を飛ばそうと思って走っている車はそうはいないと思いますし、狙って出来ることでもありません。
となると、「故意」という認識が入って来る余地はないのが普通です・・、よって「器物損壊罪」も該当しない事になります。
それでは、「過失責任」は?
一般的には、過失とは注意義務に違反する状態や不注意などによる失敗のことをいいますが、交通事故で損害賠償責任が生じるための「過失」とは、事故の発生が予見でき、その結果を避ける義務を怠ったことをいいます。
つまり、石を飛ばして後続車両のフロントガラスに亀裂を生じさせる事が予見出来るのか?そして、絶対に石を飛ばさない走行が可能か?という事になるのですが・・・。
社会的に求められる、注意義務の範ちゅうを超えた要求になるのでしょう!
結論としては、飛び石による事故は「故意」とは認められず、「過失」とも看做されず、不可抗力と判断されるしかないのです。
仮に、「過失」かも・・と考えられた場合でも予想外の過失は不可罰になります。
飛び石の相手を特定出来たとしても、通常の走行をしている車両に対して損害賠償の請求は残念ながら出来ないという事です。
怖いのは、一般道で飛び石が歩行者などに当った場合ですが、ケガをした或いは更に大きな損害を被った人に対して一概に「運が悪かった」だけでは済まない賠償上?の問題が内在していると、気持ちの上では思うのです・・・。
道路交通法や刑法では該当する罪状は認められない、賠償上でも無責なのか?!
自賠責保険上の有責3条件でも無責?!、つまり運転者が自動車の運行に関して注意を怠らなかった事になるのか?
任意保険の対人賠償保険も適用にならない?・・人身傷害保険は?
そもそも、歩行者に飛んで来てケガをする様な石がある道路の管理自治体などの責任は?
どの場合でも、管理上を含めた責任を求めるのは困難であるということになるのでしょう。
|飛び石の被害事故にあった場合はどうする?
自動車で走行すると、小さい石を含めていやでも飛び石被害にはあいます!
飛び石によって車が壊れる事故は、かなりの確率で起きる「運」としかいい様がありません。
飛び石事故が起きた場合でも、「運転者には警察に連絡する義務があります」と損保の社員の立場ではいわなければなりません。
しかし、警察を呼んで事故の検証してもらったところで、あまり意味はありませんし、そもそも警察が受理するのかも疑問です。
飛び石によって損害賠償請求することは可能なのですが、立証性を含めて認定は難しく費用効果もありません。
ほとんどの保険会社は、飛び石損害による車両保険金の支払いは、最小限の請求手続きで対応するはずです。
飛び石損害の事故は、簡単にいえば「不可抗力の単独事故」です。
保険会社のアジャスターが飛び石による損害を確認出来れば、保険金支払い手続きは実務上速やかに進捗します。
更に、ついでです!
飛び石をした相手方の運転者がいい人?で、飛び石の責任も認めてくれて、いくらかの金額を支払ってくれるなら書類を交わして現場示談も有りと思います。
それ以外の当事者間での現場示談は、絶対に厳禁ですが・・!!
警察へ事故報告をしたところ、飛び石事故が多いと判断される様な事故現場であれば、該当する道路管理者や自治体に連絡を入れて、対応策を取ってくれる場合も・・あるかも知れません。
自動車保険で、飛び石損害による修理金額を補償されるのかは、車両保険に加入していることが前提になります。
フロントガラスが破損した場合は、車両保険を使用してでも迅速に修理すべきですが、保険を使えば翌年の料率ランクは下がり、保険料はアップします。
保険の使用に際しては、料率変更による翌年度の保険料と修理代金を比較して判断頂きたいと思います。
|前走車が飛ばしたのが小石でない場合は?
トラックなどの荷台から積荷が飛んできたり、砂利の運搬車の積み方に問題があって砂利が飛んできたり、前走車のボルトなどの部品が飛んできた場合は、不可抗力とはいえません!
積荷の固定が万全では無かった、または過積載などで積荷や荷台の管理に不備があり、結果として飛来物になって損害が生じた場合は、管理責任や整備不良などを理由とした賠償責任は生じることになります。
但し、この場合でも被害側には立証責任が求められます。
危うい様相のトラックが先行していたら後続走行せず、思い切り車間距離を開けるか、さっさと追い抜いて先行するなどの判断が必要になるかも知れません。
|飛び石事故に遭わない!防ぐにはどうする?
一番の対策は、「飛び石被害にあいません様に」と神様に祈ることです。
それだけ「運」が左右するということ、そしてほぼ100%に近い確率で既に小石は飛んで来ています。
絶対的な対策はありません!が、少しでも飛び石事故に遭う確率を減らす事は可能です。
ダンプカーやトラックの直後は極力走らないことだけでも、車に付く傷は違ってきます。
やむを得ず後続に付いてしまった場合は、やはり「車間距離を十分にとる」という事です。
大型車との車間距離が開いたことで、その間に他の車両が入ってきたら、飛び石からの盾になってくれると思って前方に進入してきた車に少し感謝してもいいかも知れません。
最近社会的に話題になっている、「あおり運転」も見方を変えたら先行車両の直後を走行している状況になります。
これは細かい石も含めて、飛び石を自ら進んで当てられに行っている様なものです。
少~し余談になります。
飛び石被害にあいやすい車種や、逆にあいづらい車種はあるのでしょうか?
事故を受け付けて来た経験上からの個人的な感想になります。
先行車両が跳ね飛ばした小石は、放物線を描いて飛んで来ます。
車間距離が充分にとられていない場合は直接衝突するので論外としても、車間距離を取っている場合は道路上でバウンドして下から跳ね上がって飛んで来る場合が多い。
当然ですが、バウンドした石の方が衝撃力が削がれて弱くなりますので、車間距離を充分に取りましょうという事になります。
そして、車間距離や跳ね返る飛来物の速度など同じ条件で見た場合、損害が大きくなる確率が高いのは単純に表面からの投影面積が大きい車です。
例えば、ミニバンやワーキング車両、大型のトラックやダンプカーになるのですが、トラックやダンプカーは高い位置にフロントガラスがあるので大きさの割には損害が意外と少ないのです。
フロントガラスの損壊で絞ってみると、投影面積もそうですが中途半端な車高も影響してミニバンの報告は結構多いかも・・。
意外ということでは、登録台数が少ないということもあるでしょうが、スポーツタイプの車両は飛び石被害は思ったより少ないと感じています。
車高が低い分、投影面積も小さいので当たる確率が低いこともあるのでしょうし、その上フロントガラスの傾斜角も影響しているのは間違いないと思うのです。
道路上で跳ねた小石は、下の方から上に向かってきます。
フロントガラスの傾斜が寝ているほど、衝突した石の力は更に上方にそれます。
逆にフロントガラスの角度が立っているほど衝撃をまともに受ける事になります。
最近のミニバンのフロントガラスの傾斜を寝かせている傾向にあるのは、燃費競争に影響のある空力抵抗の削減と合わせて、衝突物をそらす等の対策の一環も少しは考えられているかも・・!と自動車メーカーに勤務する友人から聞いたことがあります。
当然ですが、石が飛んで来る軌道は決まっていません。
特段に注意を要する車種も決まっていませんが、表面からの投影面積が大きい車や、フロントガラスが大きい車や傾斜角が立っている車は、より注意されてもいいかと思っています。