交通事故の被害者を救済支援する機関(組織)はあるのか?

交通事故が起きた

|交通事故被害者の救済や支援する制度や機関
意外に知られていないと思われるのが、交通事故による被害者を救済するための機関があることです。

交通事故の被害者にならなければ必要ありませんが、万が一の時に引き出せる知識として知っているか否かは大きいと思うのです。

交通事故の被害者が軽度のケガや症状ではなく、後遺障害が残る様な重傷のケースもあり、その場合は何かと用入りで一
日でも早く資金的な援助が必要になることも起こります。

ある意味では「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」も公的な制度であり、その中でも「内払制度」や「仮
金」の制度は相応の時間を要しますが、それでも資金面で比較的早期で救済や支援する制度といえるでしょう。

|自賠責保険の「内払い制度」と「仮渡金」とは?

被害者と加害者等の当事者間で、損害賠償責任の有無について争いがある場合や、示談交渉が難航し示談成立の見通しが立たない場合は、被害者は中長期に渡って損害賠償金の支払いを受けられないことになります。

治療費や生活費等の当面の支出に対応出来ない状況にもなって来ます。


この様な状況になった場合に、加害者側の損害賠償責任の有無にかかわりなく、また損害賠償額が確定する前に被害者は当面の出費に充当するために、政令で定められた金額を仮渡金として自賠責保険会社に請求することが出来ます。(自賠法17条、同法施行令5条)

政令で定められた金額は、平成3年4月1日以降に発生した事故で死亡した場合は290万円、傷害を受けた人は傷害の程度に応じて40万円、20万円、5万円と規定されています。


なお、仮渡金は損害賠償金の一部先渡しになります。


したがって、損害賠償額が仮渡金の金額を下回った場合は、その過払い分を返還しなければなりません。(自賠法17条3項)


また、逆に損害賠償額が仮渡金を上回って確定した場合は、受領済みの仮渡金を差し引いた金額を受領することになります。


それでも、示談成立が難航や長期化する場合は、助けになる制度であることは間違いないと思います。


内払制度については明確に規定されていませんが、傷害による損害について被害者がまだ治療継続中のため損害総額が確定しない場合でも、既に確定した損害額について被保険者又は被害者から、保険会社に損害賠償額の内払い請求された時に実施されます。


内払の金額は、請求された時点での損害額が10万円以上の場合には、傷害による損害の保険金額に達するまで支払われます。


後日、保険金や示談が成立して損害賠償額の請求が行われた時は、既に支払われた内払金を控除した金額が支払われることになります。


以上、「仮渡金」制度や「内払制度」の概略です。


比較的軽傷である場合や、重症でも金額的な賠償は自賠責保険で損害の填補が可能になっています。


加害者が無保険状態や、ひき逃げの場合など自賠責保険で填補できない場合は「政府保障事業」で救済してもらえます。


しかし、被った損害の程度は重傷で、そして重い障害が残る場合もあります。


保険金を支払ってもらっても障害の程度によっては特別な治療や、特段の対応が必要になるケースもあります。


|独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA:ナスバ)の支援

NASVAの支援策は交通事故の重障者に対してが基本になっていますので、日常的ではないかも知れません。

しかし、いつどの様な事態が起きるか分からないのが交通事故です。


事故状況は大きな事故でなくても、例えば自転車や歩行者が転倒した場所に縁石等があって頭部や身体の体幹部が大きな損傷を受けるなど、不運な状況が起きないとは限りません。


万が一何か大きな問題が生じた場合に、ヒントになる知識があるのと無いのでは大きく状況が変わることもあるのです。


頭の隅に置いておいて、何か起きたら取り出せる知識があるのは大きいと思うのです、「NASVA」に関する知識はそのレベルになります。


|NASVA援護の受給資格
自動車事故の被害者の中には、脳や脊髄又は胸腹部臓器に重度の後遺障害が残り、日常生活において「常時」又は「随時」の全面介護を必要とする被害者がいます。

被害者家族の経済的負担を軽減するために一定の受給資格を有する被害者は、「NASVA」による援護を受けることが出来ます。


|平成14年4月1日以降に事故にあった被害者の受給資格

最重度(特Ⅰ種)  :常時要介護で要件として、例として自力移動や摂食が不可、屎尿失禁状態等。

常時要介護(Ⅰ種) :自賠責保険の後遺障害第1級1号か2号が認定されていること。


随時要介護(Ⅱ種) :自賠責保険の後遺障害第2級1号か2号が認定されている事。


自損事故などによって後遺障害の等級は認定されていないが、同程度の障害を受けたと認められ、事故後18ヶ月以上が経過して症状固定されたと認められる事、があげられます。


|平成14年3月31日以前の事故被害者の受給資格

最重度(特Ⅰ種)の要件は、平成14年以降の事故と同じですが、常時要介護(Ⅰ種)は自賠責保険の後遺障害第1級3号か4号の認定になり、随時要介護(Ⅱ種)は自賠責保険の後遺障害第2級3号か4号の認定に変わります。

後遺障害の等級を受けていない場合も、平成14年以降の事故の要件と同様になります。


|NASVAの設立と支援内容

「NASVA」の前身は、昭和48年に自動車事故の発生防止と、自動車事故被害者の救済を目的として自動車事故対策センター法に基づき、当時の運輸大臣の認可によって設立された自動車事故対策センターでした。

その後、特殊法人等の改革の一環として解散した後を受けて、独立行政法人自動車事故対策機構法に基づいて平成15年10月に設立されました。


「NASVA」は被害者救済として、交通遺児等の援護、自賠責保険等から支払いされるまでの立替えや、貸付を行っている他に、交通事故が原因で重度の後遺障害者となった被害者に対して介護料を、貸し付けではなく支給するという援護行っています。


この介護料の支給は損害賠償とは関係なく、損害の填補ではないと解されています。


そのため、加害者等からの損害賠償額から控除されることはありません。


また国内の4ヶ所、千葉市、仙台市、岡山市、美濃加茂市にある「療護センター」と8ヶ所の「療護施設機能委託病床」では、植物状態又はこれに準ずる重度後遺障害者(蔓延性意識障害者)となった交通事故被害者を収容して、治療と看護に当たっています。


その他、障害者自立支援法や身体障害者福祉法に基づく支給や援護が実施されており、身体障害者からの申請に基づく市町村の決定や認定等により、介護給付費等の支給、自立支援医療費の支給等を行う他に、義肢・装具・車椅子などの補装具費の支給を行うものとされています。


これらの社会福祉上の給付も、損害の填補にはならないとされています。


さらに、介護保険法に基づいた保健医療サービス及び福祉サービスの支給も実施されています。


介護保険制度は、社会保険方式を採用し、市町村が保険者や介護を受ける高齢者を被保険者と位置付けるもので、被保険者は市町村の区域内に住所を有する65以上の者と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者です。


そして、受給者は要介護者及び要支援者です。


介護保険法21条により、第三者が起こした事故などにより被保険者が要介護者となった場合において、第三者が被保険者に対する損害賠償義務を履行する前に市町村が保険給付を行った場合は、給付した金額の限度において、被保険者が有する損害賠償請求権を取得するものとされているので、示談や裁判上での和解をする際などには注意を要します。


将来の介護費の算定にあたっては、将来介護保険の適用が有ることを前提として控除はしていません。


|支給にはなりませんが生活資金の貸付制度もあります!

交通事故による被害者に資金を貸し付ける支援制度もあります。

1)交通遺児等貸付

交通事故によって、死亡または重度の後遺障害が残った被害者の子供に対する貸付です。

2)不履行判決等貸付

交通事故の被害者が、確定判決や和解が成立したにも関わらず、損害賠償が受けられない被害者への貸付です。

3)後遺障害保険金(共済金)一部立替貸付

自動車事故により後遺障害が残った被害者が、その後遺障害について自賠責保険(共済)金の請求から支払いがなされるまでの間に対する貸付になります。

4)保障金一部立替貸付

ひき逃げや無保険車による事故で、政府の保障事業に保障金を請求している被害者に対して、保障金の支払いがなされるまでの間に対する貸付です。

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