交差点以外でも修正項目に該当し過失が0%になる事故がある!

過失の基本的判断

|交差点以外で過失割合が修正されて責任が0%になる事故がある!
交差点で起きる事故の大半は出会い頭による衝突事故になるため、徐行義務違反や速度超過、信号無視、注意義務違反などが主な修正要素になる場合が多い。

交差点以外の事故でも過失修正された結果、一方が無過失になる事故があります。

多いのが、追越しをする状況での法令違反や速度超過など。

基本的には交差点内で起きる事故と、修正項目も大きくは変わりませんが、適用項目には特有の要因等があります。


ここでも「別冊判例タイムズ」を基準にした内容になっています。

|基本の過失割合が<90%:10%>で認定される交差点以外の事故形態

過失割合が[90%:10%]が認定される交差点以外の事故形態として、大きくは3通り。

|1|交差点を右折予定している車両の右側から追い越しをした後続車両との事故

追越しが禁止されている一般的な交差点内で、先行車両(A)が交差点であらかじめ道路中央に寄って、合図も出して右折を開始しようとする状況にあった時に、後続車両(B)が右折予定の車両(A)の右側から中央線や、道路中央を越えて追越しをした時に起きた事故です。

基本の過失割合は、<先行して右折予定の車両(A)10%:90%後続の右側追越し直進車両(B)>になります。


後続車両が前方の車両に追いついた後、進路を変更して先行車両の右側から追い抜いて通過する際に衝突した場合を想定しています。


右折予定の車両が、あらかじめ中央に寄ると右折が出来ない様な鋭角に曲がる道路における右折車両と後続直進車との事故や、左側に寄ると左折出来ない様な鋭角に曲がる必要がある道路の場合は形態が異なる事故になります。


追越し予定の車両が優先道路を通行している場合を除いて、交差点及びその手前30m以内での追越しは道交法で禁止されています。


したがって、追越しが禁止されている通常の交差点においては先行右折車(A)にある程度の過失があったとしても、基本的には追越し直進車(B)が劣後車になります。


この事故形態では、ほとんどの追い越し車両は「著しい速度違反」が適用され過失の数字が加算修正される状況になります。


通常の「著しい過失」で認定される速度違反は時速15km以上で30km以下になりますが、この事故の形態では、概ね時速20km程度の速度で過失の数字が加算修正されることになります。


それ以下の速度違反は追越し中であることを考慮し、基本の過失割合に織り込み済みという事です。


後続車両は先行車両に追いつく速度差を保って、追越しをかけているのが実態の様です。


追越しをかける車両にしてみれば時間をかけずに、一気に追越しを完了させたいのが一般的なので、ほとんど20km以上の速度超過が認められています。


実際には、交差点内の事故なので目撃者の証言も多く、車の損傷状態より速度超過が客観的に認定されやすいのも特徴です。


追越し車両の20km以上の速度違反が認定された場合は10%の過失が加算されますので、先行の右折車両の過失は0%になります。


但し、先行右折車両に、早回り右折や直近右折、合図なしの場合は加算修正されるのは当然ですが、後続直進車の速度超過の他に「前方不注視」など他の修正項目に該当するケースも少なくありません。


劣後車(B)にとって、過失がほぼ100%認定される可能性が高い事故形態になります。


|2|道路の外に出るために右折した際に、対向の直進車と衝突した事故

公道などの一般道から駐車場な路外に出るために右折した車両(B)と、対向の直進車(A)と衝突した事故を想定しています。

基本の過失割合は<直進車両(A)10%:90%路外に出るために右折した車両(B)>になります。


衝突した場所は、道路上になるのが一般的です。


右折車両が道路外に出ようとしたのか、前走車を追い越すために対向車線に出てから自車線に戻ろうとしていた事故なのかは非常に重要になります。


事故現場での証言の記録や確認は、しっかり行うことを忘れないで頂きたい!


路外に出るための右折による事故の場合は、右折する車両に徐行が認められなければ直進車両に10%を、合図なしや合図遅れの場合も10%が減額修正されます。


また、事故現場が幹線道路の場合は更に5%が、その他に「著しい過失」などが認定された場合も10%が減額修正されます。


結果として公道を直進してきた車両の過失は、0%以下になる可能性が高くなるということです。


但し、右折車両の徐行なしで修正される可能性は高いのですが、これは直進車両の速度にも影響されます。


直進車同士の場合は、対向車の速度に対する目測精度は低くなるのは普通です。


その状況で、直進車両が15kmや30kmの速度違反がある場合は、直進車両に加算修正されて対向右折車の徐行なしと相殺される可能性もあります。


また、直進車両が何らかの状況で、導流体(ゼブラゾーン)を走行していた場合は10%から状況によっては20%が加算される場合もあります。


それでは
ゼブラゾーンを走行するのは法令違反になるのでしょうか?


そもそも、導流帯(ゼブラゾーン)とは?なのですが、ゼブラゾーンの規制に関しての根拠は・・意外と知られていないのです、

設置管理者のひとつである「公安委員会」が法に基づいて、交通規制の手段で道路標示として設置するもの(道路標識、区画線及び道路表示に関する命令9条、等)

もうひとつは「道路管理者」が、道路法45条1項の規定に基づいて道路の構造を保全し、交通の安全と円滑を図るために区画線として設置するもの(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令5条)とがあります。


いずれの場合も交差点等において、通行する車両の安全かつ円滑な走行を誘導するために設置されるものです。


ゼブラゾーンの立ち入りについて、安全地帯や立入禁止部分の場合に設けられている様な禁止条項(法17条6項)や罰則(法119条1項2号の2)はなく、単に車両の走行を誘導するものに過ぎないのですが、運転者の意識として、ゼブラゾーンへは進入は禁止と考えられているのが一般的と思います。


ゼブラゾーンは車両の安全かつ円滑な走行を誘導するために設けられた場所であり、ゼブラゾーンを通行すること自体は違反や違法行為にはなりません!が、警察においてもゼブラゾーンの主旨から極力進入しない様に指導はしているとの事です。


ゼブラゾーンへの進入などの実態によって、事故発生の危険が生じる可能性が高い場合には立ち入り禁止の規制や、実質的に進入や通行ができないようにポストコーンを設置するなど、必要な安全対策措置がとられることになるでしょう。


ゼブラゾーンの通行や進入が違反や違法行為にはならないからといって
、消極的であっても通行や進入を認めているのではありません。

運行慣習としてゼブラゾーン進入は違反と認識している多くの車両運転者は、ゼブラゾーンを走行および進入して来る車はいないだろう!と想定しているのが一般的なのかも知れません。


その認識や状況の中で、ゼブラゾーンに進入して来た車両と事故が起きた場合に、賠償の金額に影響を及ぼす修正要素としてゼブラゾーン進入を過失割合に反映させることは正しいのか?は、疑問が残ります。


|3|追越し禁止場所において、追越しされる車両と追越す車両との事故

追越し禁止場所とは、道路標識等により指定された場所、道路の曲がりかど付近や上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂、トンネル(車両通行帯の設けられた以外)など基本的な法令や常識的に判断できる範囲で間違いはないでしょう。

その他にも、交差点(優先道路を除く)、踏切や横断歩道、または自転車横断帯及びこれらの手前側端から前に30m以内の箇所も禁止されています。(法30条)


基本の過失割合は<追越される車両(A)10%:90%追越しする車両(B)>になります。


追越しをした車両がセンターラインを越える場合と、越えない場合とがありますが追越しされる車両との関係では区別する必要性はないと判断されています。


追越しをされる車両(A)に10%の過失が認められているのは、結果として事故が起きたことで安全に走行する何らかの義務違反があることが前提になっています。


更に、追越しされる車両に法27条2項の左側端に寄って進路を譲るべき注意義務違反があると認められる場合ですが・・。


追越し車の存在を認識し、かつ対向車両との関係で追越される側の車両がそのままの速度と方法で走行した場合は、事故に至る危険があることを具体的に認識することが容易なはずなのに、減速するなど適切な措置を取らなかったことで事故が起きた場合などは、追越される車両(A)に10%加算修正することもあります。


また、追越される側の車両が法27条1項に反して追越し車の追越し最中に加速し、そのため追越する車両が追越される車両の前方に進路変更や進入ができなくなったこで起きた事故については、追越しをされる車両(A)に20%の加算修正することになります。


27条2項は、追越し車は追い越される車両の避譲を確認して、追越しを開始する余地があるために追越される車両側の消極的過失になりますが、同条1項は追越し開始後に危険を増大させる事になる追越される車両の積極的な過失と認識されています。


なお、追越される車両が追越しをする車両の追越しを故意に妨害したために危険な状態を発生させ、その結果事故に至ったという事故は法27条での判断の対象外になります。


本基準は、追越し禁止場所であっても、追越される車両は安全にかつ上手に追越しをさせなさい!的な内容になっています。


追越される側の車両に対して、加算する修正要素の項目は多く感じられるかも知れません。


それに対して追越しをする車両には、法令違反が反映された過失割合になっていますので、基本的には修正要素は速度違反のみとなっています。


但し、事故が起きた場合の損害状況から速度違反が肯定されるのがほとんどです。


15km以上の速度違反で10%が加算修正されることになります。


追越しをしようとする車両の15km以上の速度違反は、容易に出る速度なので加算されやすい修正要素になります。


実務的には追越しされる側の車両に、よほど加算する要素が無い場合は過失0%になる可能性は高くなる事故形態になります。


なお、追越車の後部に追越しされた車が追突する形になった場合でも、追突が割り込み直後である場合は追突事故としてではなく、追越し事故の形態として対応する事になるのが基本です。

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