過失割合の基本が100%:0%になる車両同士の事故形態は3つ!

過失の基本的判断

|自動車同士の事故で過失割合が100%:0%になる事故とは?
車両同士の交通事故の場合で、加害者側が基本の過失割合100%になる事故形態は意外と少なく、大きくは3通りしかありません。

[1]一方が交差点の信号無視をして起きた事故
信号機により交通整理の行われている交差点で、片方の車が赤信号で進入してきたために青信号で進入してきた車両と衝突した場合、赤信号の車両が過失100%になります。


右折の矢印信号を含む、信号機の全ての指示が該当です。


2]センターオーバーをして事故を起こした場合
センターラインや左側走行エリアを越えて、反対側の対向車線への進入や走行により対向車両と事故を起こした場合です。

当然ですが、センターラインや左側走行エリアを越えた車両が100%の過失を負います。

[3]追突した事故

赤信号の指示に従って停止している車両や停止しようとしている車両、またはブレーキ操作により減速した車両等に前方不注視や車間距離不保持等により追突した場合、追突した車両が100%の過失を負います。

また、後退して停車している車両に逆突した事故も追突の一形態として扱うことになります。

|無過失が修正要素に該当すると0%にならないケースも・・

以上の3通りの事故が基本の過失割合100%:0%になるのですが、事故の状況や相手側の主張等によってはスムースに被害者側が無過失、つまり過失0%にならない場合もあります。


また、基本的には双方の車両に過失が生じる様な事故であっても、保険会社などの事故調査などが行われ「判例タイムズ」で設定されている修正要素に該当した場合、
基本の過失割合が加算や減算修正によって加害側と被害側が逆転される事態が起こる事もあります。

これは、どちらかの一方が過失修正された場合は、当事者のもう一方の割合の数字も変わることになるために起きる現象です。

例えば基本割合が<90%:10%>でも、過失が大きい側(事故第一原因者)に「著しい過失」として10%が加算修正されると、100%:0%の絶対的加害者になってしまう状況にもなります。

しかし、過失割合が10%の被害側(第二原因者)は追突された車両と同じ様に無過失かというと、修正されたことによって数字の上で0%になっただけで、
追突された等の様に絶対的な無過失ではありません。


      
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|特例としての示談の形態「片賠」での解決とは?

過失割合が修正項目に適用になった結果、過失割合が100%になる加害側の損保担当者なら被害側の過失0%は認め難く「片賠」という特例的な示談も視野に入れた交渉を画策することになるでしょう。

「片賠」とは、事故当事者の過失が大きい方が一方的に賠償するという
特殊な示談形態になります

通常は、<90%:10%>や<80%:20%>などと、事故を起こした当事者双方の責任割合を合計すると100%になります。

しかし、修正要素に該当し過失割合が加減算される様な事故状況や、過失が小さい被害側が過失割合の減算や無過失を主張するのも理解できる状況がある場合など、当事者間の協議を尽くした上でひとつの解決策として「片賠」による示談を図ることもあります。


仮に、加害側に加算修正されたために計算上では被害側の過失0%になったとしても、特段の注意や回避行動を取ったという状況ではなく加害側に過失割合を加算したことによって0%になっただけなので、被害者側に追突されたなどと同様の無過失を認めるのは無理!ということです。

解決案の特例として、「加害側の賠償請求はしないので、被害者損害の90%の賠償で了解頂く片賠で解決したい」と、過失が大きい側から全額ではない賠償で解決を提案してみます。

つまり、数字的には<90%:0%>や<95%:0%>と
合計しても100%にならない過失割合になります。

過失が少ない被害者側にしても、相手方に対する賠償は不要になりますので、保険を使用しない選択も可能になります。

よって、自動車保険の等級が継承できて、次年度の保険料がアップしないというメリットも生じることになります。

交通事故で被った損害全てを必ず請求しなければならない法的義務はありませんので、請求をしないことも一部や全部を放棄することは可能なのです。

過失が大きい小さいに関わらず法的に「片賠」は、賠償上の一部請求放棄になります。


|参考|過失割合修正項目の一部である「著しい過失」と「重過失」は?

「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」における過失割合は、事故の形態に応じて通常想定される過失を織り込んで算出しています。

しかし、更に細かく事故の実態に近づけるために、状況に応じて修正要素を適用させています。

例えば、「直進車両の直前を右折した」や「徐行義務を果たしていなかった」等があり、加算や減算によって修正される数字は概ね5%~15%の範囲になっています。

そして、協議や交渉がこう着状況になったり、難航した事案を動かしたり進捗させるきっかけとして損保担当者が使用する項目のひとつに「著しい過失」があります。


「著しい過失」とは、通常想定されている程度を超える様な過失を示していますが、若干抽象的な意味合いを含んでいるニュアンスもあるためか結構広い範囲で使われています。

そして「重過失修正」ですが、一部15%の修正もありますが概ね20%と大きい数字で修正されますが、これは過失というより故意に近い状況と判断される様な場合があるため、通常の事故ではほとんど適用されることがありません。

なお、認定に際して「著しい過失」と「重過失」が修正要素として区別されている事故形態では、それぞれ与えられた数値は択一的に適用されて、重複しての適用はされていません。


例えば、「重過失」が適用される様な場合は、更に「著しい過失」分の修正の数値は加算されない認定になっています。

よく適用される一般的な「著しい過失」の例]

・わき見運転等著しい前方不注視(法70条)

・著しいハンドルやブレーキ操作不適切(法70条)


・携帯電話等の使用や画像注視のながら運転(法71条5号ノ5 平成16年法改正によって罰則規定が整備)


・概ね時速15km以上30km未満の速度超過違反(高速道路を除く)


・酒気帯び運転(法65条1項)等々


[該当になることが多い「重過失」の例]

・酒酔い運転(法117条の2第1号)

・居眠り運転


・無免許運転


・概ね時速30km以上の速度超過違反(高速道路を除く)


・過労、病気や薬物の影響その他の理由により、正常な運転が出来ないおそれがある場合(法66条)


|「過失割合」と「過失相殺」の違い

自動車同士や自動車と人など、当事者が2者以上絡んで事故が発生した場合の責任割合を示すのが「過失割合」になります。

事故当事者双方に何らかの過失があった場合、損害を公平に負担するために、過失小側の責任相当する部分を損害総額から差し引いて賠償することになります。

この「過失割合」に基づいて、事故によって発生した損害総額を案分することを「過失相殺」といいます。

よって一方が過失0%の無過失の事故では、過失100%の側が全額賠償することになるので「過失相殺」は行われないということです。


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