|信号機による規制はほとんど絶対的!
過失割合の基本が<100%:0%>になる事故形態のひとつに、信号機が赤を表示している状況で交差点に進入した車両が、青信号に従って進入して来た車両と衝突する事故があります。
当然ですが、赤信号での進入車両が100%の賠償責任を負います。
信号機により交通整理が行われている交差点とは、信号機の色によって交互に一方の交通を止め、もう一方を通す方式により交通規制が行われている交差点を指します。
したがって、黄色や赤色の点滅信号機が設置されている交差点や、歩行者専用の押しボタン式信号機が設置されており押しボタンを操作した場合にのみ車道側の信号が赤信号となる交差点は、信号機により交通整理が行われている交差点には該当しません。
自動車に限らず道路交通法の対象になる全ては、信号機が表示する信号に従わなければならず(法7条)、信号機が設置された交差点における信号による規制は、ほとんど絶対的なものになります。
よって、青色進入車両と赤色進入車両との事故は、原則的に赤色進入車両の一方的な過失によるものとなります。
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|青信号側の車両にも課せられる軽度の注意義務とは?
現実の交通状況を見ると、実際には信号の変わり目では赤信号側の停止はあまり期待できず、青信号側にしても見込み発進する車両も少なくありません。
そのため、信号に従っている車両であっても、前方に対して通常の注意を払っていれば容易に信号違反車両を発見して事故を回避できるのに、その回避措置を全く取らなかった場合等には道路交通法36条4項又は70条違反の過失認めても良いと解されています。
法36条4項は「交差点手前や交差点内では安全に十分気を付けて通行すること」そして70条は「車両等のハンドルやブレーキなどの装置を確実に操作、道路や交通状況などに応じて、他人に危害を及ぼさない速度と方法で運転しなければならない」と規定されています。
もっとも、一般的には自動車の運転者は信号機の表示するところに従って、自動車を運転することを求められています。
赤信号等の違反者が交差点内に進入して来るかも知れないと予見しての徐行や、交差点内において右方や左方側車両との安全を確認しなければならないレベルの注意義務はない!というのが裁判上においても明確に示されています。
したがって、青信号に従った信号遵守車両に過失が認められる場合については、例えば赤信号での停車から青信号で発進する際に軽度の注意で赤信号側の車両が進入して来るのを発見するのが可能だったのに、信号のみを見て発進した場合等がこれに該当します。
また、赤信号側の車両が明らかに先入している場合も、その発見は容易なので同じ様に過失が認められると考えられます。
特に減速して左右の安全を確認するレベルではなく、通常の速度で極めて普通に前方の注意を払ってさえいれば事故を回避し得る場合など、かなり限定的な注意義務ということにはなります。
青信号側の車両が、軽度および限定的であっても注意義務を怠っていたことが証明される事が大前提なので、証明ができない場合は無過失が認定されるのは当然ということです。
青信号側車両に軽度でも注意義務違反が証明された場合、具体的な過失修正される数値として例えば赤信号側の車両が明らかに交差点内に先に進入していた場合は、青信号側の車両に過失10%が認定されることになります。
その他に、青信号側車両に「著しい過失」が認められた場合は更に10%が、「重過失」の場合で20%の修正数値が加算されますが、加算修正される事故状況が当事者一方の主張や言い分ではなく、証明されることが条件なのは軽度の注意義務違反があった場合と同じです。
|事故当事者双方とも青信号で交差点に進入したと主張した場合
保険会社にとっても最も悩ましいひとつに、事故当事者双方が青信号で交差点への進入を主張されるケースがあります。
事故の直後には信号機の色も変わりますので、どちらが虚偽や勘違いによって報告をしているのか数分で不明になります。
後日、事故現場で事故当事者双方が立ち会っても事故状況を特定できない!検証に意味をもたない事故類型ということになります。
最近では、あおり運転対策もあってドライブレコーダーの普及が広まってきて、2020年では約3台に1台の割合で設置されている様ですが、現状は数値より少ない感じがしています。
しかし、設置希望のユーザーが70%以上おりますので、将来的には多くの事故で事実関係が明確になると期待しています。
事故車両にドライブレコーダーが設置されていなかった場合はどうなるのでしょうか?
交通量も多く、目撃者がいる場合はまだいいのですが、深夜や人気の無い交差点の場合は特定するのが困難な場合が多く、保険会社にとっては最も難解なケースになります。
解決や示談はどうなる?
|示談や解決の方法ー1 過失割合<50%:50%>で協定
青信号を遵守して交差点に進入した車両側にしてみたら、虚偽の申告をしている相手に対しては腹立たしい事この上ない心情と理解できます。
信号機の色は青信号だった!と双方が主張した状態で、真偽を明確にできないままで解決を図ろうとすると、過失割合は<50%:50%>で進めるしかないのです。
当然ですが、賠償も双方が半分ずつ負担することになります。
青信号遵守の車両側が車両保険の付保ない場合は、修理費用等の損害の半分は自己負担になります。
信号機の色で協議が難航する事案を経験すると、車対車限定でも車両保険に加入する必要性を感じてしまいます。
|もうひとつの示談や解決方法ー2 自損自弁を通知する
保険会社が保険金を支払って解決する場合は<50%:50%>の過失割合を当事者に提示するしかないのは理解頂けたと思います。
余談でかつ個人的な感想になりますが、解決案として<50%:50%>の過失割合を提示した時の反応と対応で大よその真偽は判断が付きます。
概して、納得がいかないと憤慨し抵抗する方が正しい申告をされている印象が強く、ほぼ印象通りなのかも知れません。
自分が青信号なのに、赤信号無視の相手に半分支払うことに対する抵抗感が如実に現れます。
それに対して、「お互い信号の色が証明出来ないから50%:50%の示談提示を了解する!」と返事をした方が大体・・・でした。
保険会社にしてみたら、抵抗する側より解決優先で示談案を了承してくれる方が嬉しいのですが、例え契約者側だったとしても虚偽の主張は如何なものか!と思ってしまいます。
赤信号見落としか無視して事故にあい、損害の半分を受けられるのはやはりラッキーと思うのでしょか・・?
青信号で進入した側の抵抗として、自分の車の損害填補はしょうがないが赤信号を無視した相手には1円も支払いたくない心情も理解できるとして「自損自弁」の選択を進言する担当者もいます。
「自損自弁」とは、自分の損害は自分側で填補するが相手方には払いませんと言う抗戦的な意味合いが強いのが一般的ですが、双方の損害が小さい場合は保険を使用したくない意向からお互いに相手方に請求しないで自分の損害は自分で処理しましょうと、賠償の持ち別れを意味する場合もあります。
この「自損自弁」は示談とは違い、相手方の了解を取り付けなければ成立しないという条件はありません。
言い換えれば、当事者の一方からの「通告」で足りるのです。
「自損自弁」を通告された、もう一方の当事者は「通告」を受け入れるのかそれとも拒否して法的手段に出るかの選択肢しかありません。
損害額によっては費用効果などから判断して、保険会社は「自損自弁」の受諾を選択することをアドバイスするかも知れません。
しかし、これが事故状況から明らかに過失の大きい側が支払を免れるためや過失を認めない目的で通知して来た様な「自損自弁」の場合は、被害者側や保険会社は弁護士を介して争う事になります。
過失が大きい加害者側の保険会社は「それでは自損自弁で協力します!」にはなりません。
争ったら負けるのは明白なので被害者側の事故による損害のみではなく、係争に要した費用まで請求される可能性が出て来るために総額での支出額が増えることになります。
保険会社は敏感に損得計算をします。
結果として、加害者側は保険金以外の係争費用等の支払いは自己負担ということになります。
事故当事者が青信号の主張を通す場合は、保険会社は保険金を支払うという当事者性がないのでアドバイスはできても、交渉の表面に出ることはできなくはなります。
|信号機の色を証明するドライブレコーダーは万能ではない!
事故直後の現場では、気が動転して頭の中が真っ白な状態になるのは理解出来ます。
しかし、その様な状態であったとしても、信号の色が主な原因になる事故の場合は、即周囲を見渡して目撃者か事故の相手方以外の他の車の運転者等を探して欲しい!
そして、それ以上に相手の車種や特徴、できればナンバーの一部でも記憶する努力はして欲しい。
普段から意識していると、いざとなった時に自分でも驚くレベルでできる様です??!
特にドライブレコーダーを設置していない場合は、目撃者の確保や可能な限りの視認を最優先にして欲しいと個人的には思うのです。
仮に、明らかな信号無視をドライブレコーダーが記録していても、軽微な事故で相手が事故現場から逃走した等の場合はドライブレコーダーだけでは相手を特定できない事も起こり得ます。
普段から意識していないと、事故が起きた時に行動に移せないことが多い。
事故直後の対応策を想定した経験があるだけでも、万が一事故にあった場合は思った以上に動けるものです。
今後はどんどん高性能のドライブレコーダーが普及して、信号機の色が賠償協議の争点になる事故が少なくなることを期待していますが、ドライブレコーダーは万能ではないことを意識しておくことも必要かも知れません。
|信号機の色には時間のサイクルがあります!
保険会社が、本気になって信号状況を明確にしようと思ったらどうするのか?
社外の調査機関(主として損害保険会社のみの調査依頼により事故や保険、モラルリスク等に関連して調査を行う専門調査会社)を使用して、確認調査を行うことで信号の色を特定することは・・・可能?!
信号機には表示する時間的なサイクルがあります。
事故当事者の車両が走行して来た経路が特定できると、信号機のサイクルによって事故場所の交差点に至るまで信号機が青ばかりで走行して来たのか?赤信号で停止した交差点は?・・の証言を取りつけることで、可能性として事故場所交差点の信号機は何色?だった!
調査の簡単な概略のみしか記載できませんが、ナビのGPS機能等と経路に設置している防犯カメラの時系列の映像と合わせて証明は可能になる・・かも?!