|左側通行は自動車で走行する際の絶対的な条件!
過失の基本割合が100%:0%の事故形態のひとつに、センターオーバーした車両が対向車と接触や衝突した事故があります。
センターオーバーした側の車両による一方的な過失事故として対応を進めることになります。
車両は道路の左側部分、つまり道路の中央又はセンターラインから左の部分を通行しなければならないと道交法17条4項において規定されています。
また原則として道路の左側に寄って通行しなければならない。(法18条1項)
道路の左側部分通行は、車を運転する者にとって信号表示に従うことと同様に最も基本的なルールになります。
そのために、左側通行の車両とセンターオーバーして来た対向車両が接触や衝突した場合は、原則としてセンターオーバーした車両の一方的過失によるものとの判断です。
無料の自動車保険一括見積もりサービス
|左側走行の車両側にも過失が認められる場合とは?
走行の状態や事故状況によっては、左側の自車線を走行していた車両にも過失が認められる場合があります。
|「著しい過失」が認められて加算修正される事故とは?
センターオーバーして来た車両を発見した際、走行進路を更に左側に寄せた状態や「直ちに」の状況までは要求されないとしても、遅滞なくブレーキをかけて制動させたら容易に接触や衝突を回避することができたと認められた場合です。
また、センターオーバーしている車両が早急に自車線内に戻るだろうとの軽信や、あるいは前方不注視で発見が遅れてハンドル操作などの避譲措置をとらなかった場合も該当します。
しかし、左側の自車線を走行していた車両の過失を考えるにあたっては、一般的に自車線内を走行する車両運転者に対向車のセンターオーバーを予見すべき注意義務までは要求されていません。
よって、具体的危険を認識するに至るまでの若干の時間的余裕を認める必要がありますし、また更に左側に寄せる避譲については後続車や左側の歩行者及び、自車の安全に対する配慮するための余裕も考慮する必要があります。
実務上では、これらを全て考慮してなお回避や避譲措置をとらなかった場合に「著しい過失」が適用されることになります。
|左側走行車両の「重過失」により修正するケース
「著しい過失」の場合と比較して、前方不注視の経過時間が長い場合などは「重過失修正」される可能性があります。
道路があまり広くなく、かつセンターラインも無い状況の道路において前方不注視によってわずかに道路中央を越えた対向車と接触した場合など、左側通行の車両に加算修正しても妥当と判断されることもあります。
更に修正要素に該当するとされた項目に、センターオーバーの車両が他の車両を追い越し中であった場合と限定されますが、左側の自車線を走行している車両に15km以上の速度違反がある場合は10%を加算し、30km以上の速度違反は20%が加算されることになります。
これは追い越しを行うに当たっては、対向車の速度を正確に把握することが基本になりますが、実際にはその把握は困難であるため対向車の速度違反が時間や距離の判断に特に重要な意味を持つと考えられるからです。
したがって、追い越し以外の場合でも左側走行車両の速度違反が、事故が起きた場合に因果関係をあると判断される場合は速度違反を斟酌すべきとの考え方もあるのです。
当然ですがセンターオーバーの車両について、速度違反や追い越し禁止場所での追い越し等については、10%から20%が左側走行車両に減算修正され、結果的に過失が0%になる場合もあります。
その場合は、センターオーバーした車両の基本過失が100%なので、センターオーバー車両には加算修正はされません。
|道路状況などの事情を勘案して厳然と規定されないケースは?
センターラインが表示された道路や幅員の十分に広い道路におけるオーバーと、車両が行き違い出来るがあまり幅員が広くなくセンターラインの表示もない道路におけるオーバーとでは、法が要求している範囲に明らかな差があります。
あまり幅員が広くなくセンターラインの表示もない道路においては左側部分を通行している車両といえども、対向車の進路に対する相応の注意が要求されてしかるべきと考えられています。
また、次のケースは過失割合の認定基準対象外になります。
・一方通行や道路左側部分の幅員が車両通行するのに十分でない時
・道路の損壊や道路工事等の障害のため道路左側部分の通行ができない時
・左側部分の幅員が6m未満の道路において他車を追い越す時
・勾配の急な道路の曲がり角付近について道路標識等より通行方法が指定されている時
・道路中央から右の部分にはみ出して通行することが出来る場合(法17条5項各号)
これらの状況における事故の場合は、具体的事情に基づいて個別に過失割合を検討することが必要になってきます。
|路外に出るためにセンターオーバーする場合は?
センターオーバーする状況を広い意味で捉えると、駐車場やコンビニに入るために右折して対向車線に入り、その後対向車線を横切ってから路外に出る場合があります。
センターオーバーは100%:0%の過失割合ですが、路外に出るために対向車線に進入した車両と対向直進車両との事故の過失はセンターオーバーの事故とは別の事故類型になります。
「別冊判例タイムズ」では<路外に出る車両90%:10%直進車>と直進車両にも過失が認定されています。
状況によっては、「センターオーバーでは無く路外に出ようとしたが入り口や目的場所を誤って、ほんの数メートル対向車線を走行したかも知れない」とか、「過失割合を検討する場合は、路外に出る車と対向直進車両の事故で進めるのが正当」と申し入れや主張される当事者もいます。
路外に何もない山道の場合なら、申し入れに正当性がないと主張出来ますが路外の側にパーキングエリアがあったり、自販機が設置してあったり等の状況では否定しきれない状況も起こり得ます。
まして、対向車線を何メートル走行したらセンターオーバーの過失を適用します的な規定もありません。
最終的な判断材料のひとつとして、直進車両運転者がセンターオーバーの運転者から聴取した証言頼りになってくる場合もあります。
事故直後の当事者の証言は、後日の過失協議の対策を考える余裕がないのが一般的なので、証言の信憑性が高いと思われます。
センターオーバーしたのか、「Pエリアに入ろうと思って・・」等の路外に出るためなのか、対向車線に進入して来た運転者の目的を確認し、事故状況や相手車両の動向に照らして、印象や心証に違和感やズレがないかを直進車両の運転者はチェックしておくことも必要になります。
居眠り運転などではない限り、前走車両を追い越すためのセンターオーバーなのか路外に出るために対向車線に入ってきたのか等、センターオーバーの車両側には必ず目的があります。
事故直後のセンターオーバーした運転者の目的に関する供述は重要で、後日過失割合の協議や解決の方向性等に大きく影響する場合があります。
対向車両と事故が起きた場合は、信号の色を争う場合の第三者の目撃者を確保することと同じくらい、事故直後の運転者の供述や証言は解決や示談交渉等に大きな影響を持つことになる場合が少なくありません。
「なぜ?対向車線に出てきたのか」「どうして?・・」など理由を問い詰められると、加害者比較的口が重くなり易い。
質問の仕方を少し変えて「前走車両が遅かったのか?」「急いでいたからなのか?」「トイレタイムが目的か?」「喉が渇いて自販機に立ち寄りたかっただけなのか?」
原因や理由を問い詰めるのではなく、目的を聞いてあげる話法の方が証言を得やすい。
目的が確認できれば、純然たるセンターオーバーか?それとも路外に出ようとしていたのかが明確になると思います。
事故現場では気が動転するとは思いますが、しっかりとセンターオーバーした車両運転者の目的等を確認する事が大切になってきます。