交通事故でケガをした!損害賠償を算定するための基準は?

対人賠償

|加害者に損害賠償の請求をする算定基準とは?
交通事故によって生じた損害を加害者に賠償請求するためには、被った損害の種類やその金額を証明しなければなりません。

請求のするための証明責任は被害者側にあります。

しかし、根拠を伴う損害額の立証には、労力や時間そして相当の負担を要する作業になります。


現状は、加害者側の保険会社が損害を確認して賠償案を積算し、被害者側に提示している手順が採られています。

当然ですが、保険会社が作成する賠償案は算定基準などの根拠を持って積算しています。

これが被害者側自ら賠償額を算定して加害者側に請求する場合には、算定した基準つまり根拠を明確にして提示することが求められます。

被害者側が損害賠償額を積算する場合、その根拠となる基準は「自動車損害賠償保障法(以下自賠法)」による自賠責保険基準以外には無いのです。

保険会社の任意保険基準は保険会社のみが採用している基準になり、裁判や弁護士が介入してきた場合に適用される裁判
(弁護士)基準は、裁判所や弁護士が採用する基準になります。

つまり、被害者自らが請求の根拠として、採用できるのは自賠責保険基準になるという事なのです。

損害賠償の積算基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の3つ!

よって、保険会社からの示談案も基本的には被害者が算定する場合と同じ様に、自賠法に基づく自賠責保険の基準で算定するのが一般的になっています。

賠償の基準が違うことで何が変わるのか?

治療費は病院に支払った金額や請求された等の実際に費やした費用で、通院費は通院に要した費用でこれも実費になりますので、使用する賠償基準によって金額が変わることはありません。

その他実費以外に被害者の特性や状態、状況などによって生じる固有の損害は適用される基準によって認定額が変わるものもあります。

例えば、ケガによって入院した、付添いが必要な幼児や児童がいる、休業を余儀なくされて収入が減少するなどがありますが、採用される基準によって最も違いが出るのは慰謝料の部分になります。

弁護士基準も任意保険基準も、基本的には自賠責保険の基準より高めに金額設定されています。

良く見聞きするCM等で任意保険基準は安い?!」「納得が行かないまま示談はしないで、交通事故に強い弁護士に依頼して下さい!こんなに高くなりました!」と宣伝しているのは賠償項目の中の「慰謝料」の事と言っていいでしょう。


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|損害賠償額の算定基準としての自賠責保険基準とは?

上述した通り、損害賠償の算定基準は自賠責保険基準の他に保険会社が独自の統計により算出した任意保険基準、弁護士が介入してきた場合や裁判(判例)による基準の3つが主な基準になります。

その他には、裁判の判決(和解含む)がありますが、これは状況等の個別事情を考慮した判断になりますので、参考にする場合はありますが基準とは一線を画すものと思っています。

任意保険基準や弁護士基準などそれぞれ独自の基準になりますが、賠償基準の根幹には自賠責保険基準の存在は大きいと思います。

それは、自動車事故の賠償基準に関して自賠責保険は唯一、自賠法という「第〇条〇項」という様な成文法をベースにして存在しているからです。

判例は法体系的には、刑法や民法などの様な成文法に対して、条文をもたない不文法に分類されています。

その他の、任意保険の基準は各保険会社が持っている(統計上の数値による)基準で、根拠を被害者に明確に示すのは困難な部分が多い。

示すことが出来ない基準は、基準とか根拠とは呼べないのかも知れませんが・・。

|損害賠償項目の「慰謝料」が最も高額になる弁護士基準

弁護士基準は、積算が最も高額になりますが弁護士に示談交渉等を依頼しなければ適用されない基準です。

東京の裁判所や、それ以外の地方の裁判所の判例等に準拠して作成されている基準で、弁護士は当基準を元に賠償額を算出しています。

「弁護士に頼んで示談が成立して、保険会社の提示額より多くなったと喜んだのはいいが着手金や報酬等を精算したら、手元に入った金額が保険会社提示額や自賠責の基準額と僅差だったとしたら洒落にならない!弁護士が報酬として支払ってもらう分を見越して、高く設定した基準にならないと依頼者がいなくなる(笑)!」


親しくさせて頂いている、弁護士の冗談まじりの言葉です。

思わず、そんな一面もあるかも知れないと・・言われて見ると、妙に納得感のある話だったと記憶に残っています。

しかし、被害者に相応の過失が生じる場合は、弁護士基準で積算した金額より過失分の減額率が低い自賠責保険基準の方が、最終的に受け取れる金額が高額になる場合もあるのです。

賠償額が最も高い基準である理由はさて置いて、多くの被害者は加害者側から支払われた賠償金から弁護士へ依頼した際の着手金と、示談完了後の報酬や事務手数料を支払わなければならないのは確かです。

被害者の手元に残る金額は、弁護士に支払った差し引き金額になります。

今の自動車保険は「弁護士費用特約」を付帯することができ、保険に加入することで費用負担もなくなりました。

しかし、高齢者の方等で免許証を返納した、または自動車保険のない人が被害事故にあって弁護士に依頼すると、賠償金から弁護士に支払う費用負担が生じるのは事実です。

「弁護士費用特約」も1998年頃に販売が開始された歴史の浅い特約です。

特約が販売される以前は、弁護士に依頼した事案は受領した賠償金から、費用を精算されて依頼人である被害者の手元に渡っていたことになります。

費用負担を考えると、弁護士に依頼することを躊躇してしまう気持ちも理解できる様な気がします。

|裁判でも自賠責保険の基準がそのまま採用される?!

判決は裁判を経て、個別に賠償額が決定されます。

因みに判例は、裁判所の判決が体系化したものです。

交通事故に関しても時代の変遷に適応している新しい判決も、過去の判例を大きく外れないで踏襲する流れが主流になっており、大きく転換する様な判決は稀な分だけ安定した判決が判例法としてひとつの基準を形成しています。

中には、昭和時代の数十年前の判決が未だに大きい影響を与えているのもありますが・・。

裁判においても自賠責保険の結論を尊重若しくは、そのまま採用する場合もあります。

その代表的なのが後遺障害の等級に関しての項目です。

裁判所は、後遺障害について審理の前に自賠責保険の後遺障害等級認定を経ておくことを推奨しています。

自賠責保険で認定された後遺障害等級は、訴状においてあらかじめ明らかにするとともに、後遺障害等級認定表を書証として提出する様求めています。

裁判手続での後遺障害の認定は、自賠責保険の後遺障害の等級認定に拘束されるものではなく、原則的には裁判所が訴訟上の全証拠から自由な心証に基づいて認定及び判断するものとされています。

しかし、自賠責保険で後遺障害の等級がいずれかの等級に該当すると認定されている場合、加害者側は自賠責保険で該当した後遺障害等級の認定内容自体を争わない場合が多い。

また、加害者が認定内容を争う場合でも自賠責保険で後遺障害等級のいずれかに該当した事実があると特段の事情がない限り、後遺障害等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料の額について、一応の立証ができたとみなしているのが実態としてあります。

裁判所は加害者側からの十分な反証のない限り同様の等級で
認定することが多く、効率的な審理を行うことが可能となっていることは確かです。

自賠法を根拠に持つ、自賠責保険の基準は他の基準にも少なからず影響を与えていると言っても過言ではないでしょう。


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