アルバイトやパートタイム職の休業損害請求について!

ケガの損害賠償

|パートタイム労働者とは?アルバイトとは違う!?
「パートタイム労働法」の対象者である短時間労働者「パートタイム労働者」とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用されている、通常労働者における1週間の所定労働時間に比べて短い労働者とされています。

「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など呼び方は異なっていても、この条件に当てはまる労働者であれば「パートタイム労働者」として「パートタイム労働法」の対象となります。

家庭の主婦が兼業で働く、または時間給で働く場合は「パートタイマー」で、日給で働く場合や働き手が学生であれば「アルバイト」と思われる方もいる様です。


この呼び方は企業が便宜的に使い分けているだけで、「アルバイト」と「パートタイマー」やその他の呼称も法律上の違いはありません。

事故によって発生した休業損害についても
、「パートタイム労働者」など呼称によっての認定方法に違いはありません。


|パートタイム労働者の交通事故による休業損害!

交通事故によって休業した場合の収入損害は、給与所得者に限ったことでは有りません。

労働を提供して対価を得ている全ての職業や職種が、休業損害の賠償対象になるのですが、請求通りに認定される!とはならない場合があります。

アルバイトやパート等も休業損害が認められるのですが、勤務してからの期間が極めて短いケースでは認定が困難と判断される事もあります。


保険会社的には一応の目安として、1年間前後継続して勤めている実績が欲しい!ところではあります。

|事故による休業損害の請求には「休業損害証明書」が必要

給与所得者の場合は、勤務先で「休業損害証明書」を作成してもらう事になります。

「休業損害証明書」には、有給休暇を含む休業日、遅刻や早退などの勤怠状況、前3ヶ月の付加給や基本給などの給与等が明確に記載されています。


「休業損害証明書」の添付書類として、事故にあった年の前年度の「源泉徴収票」と合わせて保険会社に提出するのが請求手続きの基本的な流れになります。


アルバイトやパートタイマーも休業損害を請求するときは、勤務先で「休業損害証明書」を作成してもらうことになります。


そして、給与所得者と同様に「源泉徴収票」の添付が必要です。


しかし、実態としてパートタイム労働者は短期間の勤務の場合が多く、勤務先から事故前年の源泉徴収票が取得できない場合も多いです。


その場合は、添付書類として賃金台帳や給与が振り込まれた通帳の写し等で源泉徴収票の代用とします。


アルバイトを始めたばかりで、一度もアルバイト代をもらったことがない場合では、労働条件が記載されている雇用契約書により認定するケースもあります・・。

|休業損害を算定する為の基礎収入について

「休業損害証明書」や「源泉徴収票」などの内容から休業損害が算定されることになりますが、「休業損害証明書」は認定に際しての基礎資料という位置づけになります。


提出された資料から、認定日額つまり1日あたりの基礎収入を求めることになります。


基本の計算式は次の様になります。


日給が定額の場合        日給✕(事故前3ヶ月の就労日数÷90日)✕休業日数


日給が一定額ではない場合   (事故前3ヶ月の総収入金額÷90日)✕休業日数

しかし、アルバイトやパートの場合は勤務した日数に応じて月収が変わるために、通常の勤務では何日勤務していくらの収入なのかが明確になっていないケースも結構な割合で存在します。


例えば、週によって4日~5日の勤務もあれば、1日~2日位と少ない日数の勤務もあります。


この様なケースでは、事故前3ヶ月分の給与額を90日で割ってしまうと、1日あたりの基礎収入額があまりにも低額になり実態とかけ離れた金額になるため、稼働日数で割った金額で認定することになります。


休業損害の認定日額を自賠責保険基準の定額を下回った場合でも、給与所得者などの様に定額まで引き上げずに、そのままの金額で認定するという事です。

|休業損害を算定する為の休業日数について

基礎収入つまり休業の日額が確定した次は、休業日の認定になります。

休業日数とは、事故でのケガを原因として仕事を休む必要があることを認められた日数(期間)をいいます。

休業した日数や期間、ケガの程度や症状、治療経過等から判断されるので、実際に休んだ日数そのまま全て認められる訳ではありません。


仮に、症状等から休業の必要性や妥当性を認められた場合でも、全休業期間が通して認定されることにはなりません。


予め勤務シフトが決まっていた場合は、その勤務日に休業していればその日数を休業日数として認定することになるでしょう。


その一方で、勤務日が明確に特定されていない場合は、事故前3ヶ月の稼働日数を参考に、事故後も同程度の頻度で勤務すると仮定して休業日数を判断することにもなります。


中には、事故後に勤務予定日数が急激に増えたケースがあったとしても、またいくらシフトが明確になっていたとしても、証明内容の信憑性や状況に応じて事故前3ヶ月の稼働日数を参考にして認定する場合がほとんどです。

|パートタイム労働者の休業損害認定基準

休業損害を算定するための計算方法には、大別して自賠責保険基準や任意保険基準と、裁判(弁護士)基準があります。

任意保険基準は保険会社が持っている基準なので開示されていませんが、概ね自賠責保険基準に近いかも知れません。

|自賠責保険基準による休業損害の認定

自賠責保険の基準は、原則として定額の「日額5,700円✕休業日数」で計算されます。

但し、定額以上の収入減があったとの立証があった場合に最大で1日あたり19,000円までを限度として実額が支給されることがあります。

しかし、一般的には1週間の労働日数や勤務時間が少ないパートタイム労働者の場合、定額の5,700円を下回っても定額まで引き上げられず、計算された実額のまま認定されます。


認定休業日数も原則として、実治療日数の範囲内ということになります。

|裁判(弁護士)基準の休業損害

最近の裁判例を紹介します。


原告は事故当時アルバイト従業員で、事故でアルバイトを休んだことで生じた休業損害の賠償請求をした事例です。


裁判所は、原告の基礎収入額について、事故前までのアルバイトで156日間働いて合計21万6、676円の収入を得ていた事実から、1日1,389円を認定しました。


休業の期間については、原告の勤務実態より1ヶ月あたり5~13日間でしたが、裁判所はケガが回復した期間を通して171日間としました。


原告アルバイト従業員の休業損害として 1、389円✕171日=237,519円であることを認めた判断を下しました。(平成29年11月1日名古屋地裁判決)


基本的には、事故前3ヶ月の収入額を90日で割り算して、事故によって休業した日数分を認定しているのが一般的です。


例えば、事故前3ヶ月の収入が20万円で、事故によって休業した日数が16日間とした場合の認定額は、20万円÷90日≒2,222円から2,222円✕16日=35,552円と判断されるのが多い様です。

|パートタイマーと主婦の兼業主婦の休業損害

家庭の主婦で、パートを兼業している場合の認定です。

主婦休損の認定に関して、休んだ日数を証明するのは難しく、一定の期間や実通院日数をもとに、休業日数を算定することになります。


パートタイマーの休業日数は、基本的には実際に仕事を休んだ日数となりますが、出勤日数が流動的なパートで、休業日数の証明が難しい場合には実通院日数を参考に休業日数を算定することもあります。


主婦休損もパートの休業損害も、他の休業損害の計算式と同様に「1日あたりの基礎収入✕休業日数」で求めることができます。


「1日あたりの基礎収入」は、現実の収入額から算定するのが原則ですが、兼業主婦の場合は女性労働者の平均賃金額や自賠責保険基準の定額と比較して、高い金額を基礎収入とします。


パートの収入額を、女性労働者の平均賃金や自賠責保険基準の金額に上乗せをして認定することにはなりません。


|複数のアルバイトを掛け持ち!兼業パートタイム労働者の休業損害

被害者の中には、複数のアルバイトを掛け持ちしている人もいます。


認定は、収入に関する信憑性のある立証資料によって自賠責保険基準の定額5,700円から上限の19,000円の範囲で認定することになります。


全ての職業が、源泉徴収票や所得証明等で立証された場合は、全て合算した金額が規定額の上限19,000円を超えた場合は19,000円が、一部の職業が立証されその他の職業の収入が立証されない場合は、立証された職業の収入が5,700円以上で19,000円以下の場合はその認定額になります。


全ての職業の収入は立証出来なかったが、休業損害は発生している事実が確認できた場合は5,700円の定額が認定されることになります。


但し、注意です!「複数の仕事の数✕5,700円」にはなりません。


5,700円のみの認定になります。

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