|統計数値から死亡事故の現況を知る!
損保の事故対応部署では、午前中は昨夜等に報告されていた新しい事故の初動対応に追われます。
当日の報告分がひと段落すると、昨日までの未解決事案や損害が大きくなる様なまとまった時間が必要な事案対応を進めるの一般的なスケジュールになります。
そんな状況の中で死亡事故の報告が入って来ると担当者は通常の業務を中断して、優先して初動の対応にあたる事になります。
死亡事故の報告を受けると、加害者も被害者遺族と同じとまでは言いませんが、人を死に至らしめた責任や生涯背負うであろう心情等を考えると業務とはいえ気持ちは重くなります。
死亡事故を起こすと本当に大変です!!
「経験に勝る知識はない」とよく耳にしますが、死亡事故の加害者になった場合の心労を含めた「大変さ」は経験しないで想像で知って頂きたい!と思ってしまいます。
|死亡事故の発生件数について?!
新型コロナの影響で外出する機会を抑えた結果なのか統計上では、2020年の交通事故による死者数は4年連続で戦後最少を更新して、約2,839人と初めて3,000人を下回りました。
2018年の3,532人と比較しても大幅に減少しています。
しかし、警察庁が発表する「交通事故死者数」は、事故発生から24時間内に亡くなられた人数を「交通事故死者数」としてカウントされているのです。
つまり、交通事故にあって24時間以上経過した後や、集中治療室などで3日位経過してから亡くなった方は「交通事故死者数」にはカウントされていないという事なのです。
国際比較の必要もあって、平成5年からは交通事故にあって「30日以内死者」の集計も警察庁で行われる様になりました。
警察庁は、2020年の30日以内交通事故死者数は3,415人だったと発表しました。
2018年では、24時間経過後の「30日以内死者」に該当した人数は634人となり、合計すると4,166人の方が事故によって亡くなっています。
同様の計算で2020年を振り返ると、2,839人+3,415人=6,254人ということになります。
死亡事故は減少している!といえるのでしょうか?
概算になりますが死亡事故の内、相手のいない単独事故は毎年約20%前後になっています。
つまり、6,2542人の80%=約5,000人位の加害者がいる!ということです。
そして、年数を重ねる事に加算されるので、単純に10年では約50,000人が死亡事故の加害者になる!という計算になります。
誰もが、少しの過ちやタイミングで死亡事故の当事者になりうる!という可能性がある、これは怖い!
|死亡事故を起こした加害者としての責任や対応として
交通事故によって被害者を死亡させてしまった場合、加害者としての誠意や道義的責任として被害者遺族へのお見舞いや謝罪は絶対に必要です。
事故の状況等によって現行犯逮捕されて勾留される場合を除いて、葬儀への参列以前に謝罪の意を示すための訪問はすべきと思っています。
事故直後は、遺族の心情として加害者に対して許し難い状況にありますが、時間の経過と共に落ち着いて来た時に、謝罪訪問があったか否かで加害者に対しての対応や感情は変わることも少なくありません。
加害者の中には「遺族に会うのは嫌なので、保険会社が代わりに謝罪して来て欲しい!そのための保険だから!」と言う人もいますが、被害者遺族にしてみたら「事故を起こしたのは誰なの?保険会社ではないでしょう!」となります。
保険会社も「加害者に代わって誠意を見せる立場ではないし、遺族感情としても納得感はないでしょう?!」と説明して断る事になります。
訪問した際には、例え亡くなった被害者にも過失があったとしても、謝罪のためだけの言葉に終始徹底する事が最良でしょう。
これからの法的処罰や処分の心配もあり、つい事故状況の説明から被害者の過失にも触れて、更に処分軽減の嘆願書の依頼にまで言及したために遺族の怒りを買って大変な状況になった事例もありました。
また、訪問した際に遺族や親族から「図々しく、よく来たな?!」等の辛辣な言葉を投げられる場合も起きるのですが、「保険会社から行く様に言われたので来ました!」と返して、これも・・・想像通りの状況になってしまいました。
保険会社の担当者は誠意を見せる事や謝罪は加害者としての義務であり、後の示談交渉や協議がスムースに進められる様にとの判断もあって、必ずと言っていいほど謝罪訪問について進言するはずです。
保険会社が、契約者である加害者に対して「後は当社に任せて下さい」と言う時は加害者側としての誠意を充分に尽くした!後は賠償の問題だ!と判断した時に言える台詞になるのですが、加害者自身が被害者遺族に「あとは保険会社に任せています」や「要望があれば保険会社に言って下さい」などはやはり、禁句です。
そして、例えば加害者もケガをして入院している場合や、事故現場で逮捕されて身柄を拘束されている場合でも、親族などにお願いをしてお見舞いや謝罪の意を示すべきと思うのです。
加害者自身も大変な状況にあると思いますが、立場を変えて被害者側であったらどうでしょうか?
被害者遺族の気持ちを考えると、加害者として取るべき行動が見えてくるはずです。
遺族側にしてみれば事故の加害者は、悲しみや不幸をもたらした憎むべき殺人者以外の何者でもありません。
被害者の人生を奪い遺族に深い悲しみを与えてしまった加害者として、事故の罪を償う覚悟と深い反省そして哀悼の気持ちを表すことはとても重要なのです。
その哀悼の気持ちを表すひとつに、葬儀への参列も必要になります。
|葬儀には必ず参列すること!そして一人では行かないこと!
亡くなった被害者の葬儀に、加害者として参列するのは正に「針のムシロ」に座らされるのと同じ状況とは思いますが、それでも参列は絶対に必要です!
但し、葬儀には一人では出向かない方がいいでしょう。
遺族や親族の心情から厳しい言葉が出て来る場合もあり、それを一人で受けなければならない状況は納得していてもやはり厳しい。
親族のひとりに同行してもらうのが最良と思います。
謝罪の言葉は付添い同行してもらった親族にお願いして、本人は只々頭を下げるだけ!
これは、遺族から賠償を含めた要求が出て来た場合も同じです。
加害者本人が遺族からの要求や要望をキッパリ断ること、そして返答を濁すのは状況的にかなり難しい。
結果として、「出来る限り要望に沿う様にします」や「どんなことでもします」「わかりました!」などの返答しか出来ないケースが多いのは想像できると思います。
しかし、安請け合いは禁物です!トラブルになる大きな原因のひとつです。
本人は無言で、ただただ頭を下げるだけ!に徹した方が良い。
[供物や献花は不要でいいと思います!]
供物や花は、贈り主の名前が衆知の目に晒されます。
遺族や親族に不必要な刺激を与える事に繋がりますので敢えて、供物や献花は贈らないのが基本です。
[香典や不祝儀袋はどうする?]
香典袋は、どの宗派でも使用できる「御霊前」が最良。
香典袋の中身の金額について、一般的には近親者の金額より最大で50%位多い金額が目安と言われていますが、地域的な相場や慣行もありますので、代理店や知り合いのお寺さん等に事前に確認や相談して決める方が良いでしょう。
損保担当者の多くは、幅がある相場の低い方の金額に10万円位を加算した金額が最良と思っている様です。
任意保険の対人賠償保険には、契約車両で他人を死亡させた場合に契約者(加害者側)に臨時費用が支払われる契約が主流になっています。
保険会社によって金額は異なりますが、概ね10万円~20万円の範囲の金額になります。
この臨時費用については知っている人も多いので、臨時費用のみと受け取られる金額は好ましくないと思われている様です。
臨時費用は香典として使って下さい・・的な決まりは有りませんが、費用保険金の存在は被害者遺族にも知られていることを念頭に入れて判断して欲しい。
そして、もう一つ大切なことは「香典は必ず渡す」ことです。
遺族から「加害者からの香典は受け取りたくない!」と断られた場合、遺族の気持ちを尊重して・・香典を持ち帰るしかないと思うかも知れませんが、香典を持ち帰ってはいけません!
付添いで一緒に来てもらっている親族に渡してもらう、または列席している親族や親せきの人を通してでも渡すことが大切です。
もし香典を持ち帰ったりした場合、事情を知らない遺族関係者などから後日非難される場合もあるからです。
そうなると、当然ですが示談交渉が難航する事になるでしょう。
香典等に限らず、加害者としての対応や判断に迷った場合は、保険会社の担当者や代理店に相談して下さい。
適切なアドバイスをして貰えるはずです!
過失によって起きた「不慮の事故」であることが前提となった対応になりますが、麻薬などの違法薬物や飲酒しての事故、暴走行為や故意に近いと判断される様な事故、そしてひき逃げなどの場合は論外で情状酌量の余地は一切ないという事になります。