|台風発生件数と車両保険の支払件数は比例しているのか?
毎年度、台風発生の予想数値を保険会社はとても注視しています。
気象庁データによりますと令和4年の台風発生数は25件、ほぼ平年並みだった様です。
しかし、1995年~2009年の集中豪雨の事例を気象庁で解析したところ、台風による影響を除いた、およそ3分の2で線状降水帯が確認されています。
台風だけではなく、この線状降水帯や数年前からいわれているゲリラ豪雨の発生は増加傾向にある様です。
台風や豪雨が時期的に集中すると、河川の氾濫などによる水害が拡大する要因になります。
自動車の水難事故も天災や自然災害に関連して、車の性能を過信した無謀ともいえる判断による、人災といえる様な水難事故も増加傾向にあると感じています。
台風などによる集中豪雨や、ゲリラ豪雨で冠水した道路を「エイ!ヤーッ!」の掛け声と共に突破をしようとして車を損壊させたや、水没させてしまうユーザーは結構な数にのぼります。
水害による損害は車両保険に加入してさえいれば保険で填補されますが、大きな衝撃を受けたために負傷や場合によっては生命の危険に及ぶことも起こり得ます。
車がいかに水に弱くて、冠水した道路を走ることがどれ程危険なのかを知って頂きたい。
その上で豪雨の時や、やむを得ず冠水した道路を運転する場合に気を付けなければならない事や、注意する事を知って頂きたいと思うのです。
水害事故は同じ車両事故でも、少しの知識と意識を持つことで回避できることも多い。
水害事故の件数が減る事は、結果的には車両保険金の支払額にも影響が出て来ます。
保険会社にとっても、見過ごせない災害ということになります。
|車は思っている以上に水に弱い!
集中豪雨やゲリラ豪雨などで、駐車場や道路が冠水して車が水没している映像をテレビで見た事があるかと思いますが、水没している映像と対照的に車が冠水している道路で水しぶきを上げながら、勢い良く走行している映像もあります。
勢いがある分印象に残っていませんか?
車は多少水に浸かったところで機能に支障は無く、走行して当たり前!というイメージに影響を及ぼしている映像かも知れません。
雨が降っている時の車は、有り難いなぁ~と思って利用するので、道路が浅い川の状態になっている状況で降雨の中を走行することに特段の関心も意識もしていないのが一般的なのかも知れません。
しかし、自動車メーカーの技術者は口を揃えて「車の防水対策は無いに等しく、わずかに浸水するのを防ぐレベル、よって冠水している道路に進入することは大変危険」と言います。
テレビのニュースで、冠水道路を勢いよく走行している車両の映像が自分の会社の車だと、「今にも止まるのではないかと思い、見ていてドキドキする」とまで技術者の友人が言っていたことを思い出します。
車両の浸水を防ぐレベルはどの位なのでしょうか?
悪路を走破する様なジープなどは別にして、一般的な車両の場合は水がかかって濡れる位までは大丈夫ですが、エンジンが水に浸かっても走行できる様には作られていないといいます。
その意味では、最近の防水対策を売りにしている、時計や携帯電話、テレビやラジオ、防災用懐中電灯等のレベルより低い!・・と自動車メーカーの技術者は言いきっています。
冠水道路での水没損害の原因としては、ゲリラ豪雨の様に予想以上の早さで道路の冠水や、思わぬ場所が冠水していた場合などがありますが、運転者の判断よる無理な走行がその根本にあります。
悪天候や豪雨の際は、情報収集に努め冠水している可能性がある場所には近寄らない!そして、少しでも無理や無謀と思える軽率な判断や行動はとらないことです。
進路が少し冠水している様な場合は、引き返して他のルートを探す勇気も必要になります。
冠水した道路に進入して車を損壊してしまい、保険金請求をしてきた契約者のほとんどが「引き返すべきだった!判断があまかった」と言います。
|冠水道路を通過する際の注意点とその方法は?
冠水している道路を走行しないのが最良の対策ですが、やむをえず通過せざるを得ない場合は、通行が可能なのか?水の深さは?等客観的な情報や見極めが絶対に必要です。
逆に、情報が不完全なら進入は止めるべきなのです。
|冠水する雨量の予測をするための目安は?
道路が冠水する可能性がある雨あしは、雨が路面から跳ねる水しぶきが白く見え、路面上の白線や横断歩道などが判別出来ない状態だと危険度はアップします。
その他には、信号機の地面との設置面が見えにくい、歩行者の靴の形状が判別出来ないなども目安になるでしょう。
豪雨の時は、アンダーパスなどの通行は避け、排水能力の高い幹線道路を利用することを選択して下さい。
|冠水道路を走行する場合
冠水した道路をやむを得ず通行しなければならない状況でも、道路脇など車を安全な場所にいったん停車させ、ジープや車高のあるトラックなど進入する車両が水に浸かっている高さを確認して欲しい。
また、路側帯の街路樹や街路灯、縁石やガードレールなどで浸水の状況や水深状態を見極めて、100%水没しないことを確信して進入の決定をして下さい。
自動車メーカーの技術者が進入可能と判断する目安としては、「水深20cm」!
幹線道路の縁石の基準は15cmの高さで作られているので「縁石が隠れていたら水深は20cm前後」と認識して間違いないでしょう。
20cm以上の水深があって、マンホールが外れていたなど、水の中の障害物など危険を予測することができない場合は、安易な進入はやはり危険です。
無理して進入した結果、車室内のドアの下部等から水が入ってきて床部分だけ汚濁された程度であっても、独特な悪臭の立ち込める車に乗り続けることになり、これはこれで辛いものがあります。
可能であれば迂回する、または大型スーパーなどの駐車場で待機するなどの安全策を取りましょう。
|水深が20cm以下で安全と判断された場合
冠水道路に進入する時は、ローギアまたはLレンジなど、もっとも低いギヤでエンジン回転を2000rpm程度に保ち、ゆっくりと一定の速度で進入するようにしましょう。
前方車両との車間は十分に開けて下さい。
前走車両からの波を回避するためと、前走車がトラブル等で急に停止しても、回避できるゆとりを持って進入することが大切になります。
エンジン回転をある程度上げて速度を保つコツは、ブレーキをかけながら進むことです。
イメージ的には、マニュアル車は坂道発進の時の様にサイドブレーキをかけながら(ペダル式は踏んでブレーキで引きずる感じ)アクセルを開けて速度調整をする要領になります。
オートマ車は右足でアクセル、左足でブレーキを踏み込む動作を同時に行っての調整になります。
|冠水した道路に突っ込んだ車はどうなる・・ドアは開く?!
タイヤのフェンダー が隠れる位の深さで冠水した道路に、1.5Lクラスの普通乗用車がフロント部分からゆっくり進入しすると車は浮き始めます。
軽自動車なら、勢い良く進入した場合はタイヤの直径に満たない位の水深でも浮いてしまいます。
車が水に浮いて、路面からタイヤが離れてしまった状態では当然ですが、車の操作はできませんし多くの場合は、その後水没という状況になることを免れる事はできません。
車の操作が不可能になった場合は、迷うこと無く車から脱出することです!選択の余地はありません。
何とか対応できないかなどと、少し躊躇して1分の時間が経過したことで、水圧によってドアが開かなくなり車に閉じ込められてしまう事態も起こります。
開閉式のドアに限らず、ミニバンのスライドドア式でも、セダン同様にドアを開けることはできません。
スライドドアの場合ドアが長く大きい分、水圧が強くかかることになり、わずかに動かすのも困難になります。
また、車が前のめりで傾斜した状態ではドアの重さもかさなって女性では、ほとんど100%開けることは不可能になります。
しかし、完全に水没するとドアの内側と外側との水圧が等しくなるためドア開けることができる様になります。
車が水没する時に、車内に生存できる空間が確保されているとは限らないので、直ぐに窓を開けることが必要になります。
|最悪の事態!水没車両からの脱出
車が完全に水没し、車室内に閉じ込められて溺れるケースは、道路の冠水では稀ですが「アンダーパス」など、鉄道や道路の下を潜り抜ける状況で通常の地表面より掘り下げてある道路は、予想以上に浸水が早くまたたく間にルーフの高さまで水が達することもあるのです。
また、十数年前の出来事ですが用水路が氾濫して道路が冠水、用水路と道路の境が分からなくなり用水路に落ちて水没したケースもありました。
迅速な行動が結果に影響します。
完全に水没や、水没した場合を想定して検証したい。
水没の過程では、ドアは浸水するまで容易に開けることができません。
無駄な時間と体力を費やすこと無く、確実な方法を選択することが重要です。
緊急を要する状況と認識しなければなりません。
最初に、電気系統に問題が発生しない内に、パワーウインドウを全開にする。
次に、シートベルトを外す。
そして迷わずに即、窓から脱出する。
仮に、電気系統に問題が生じてパワーウインドウが作動しない時は、車の窓ガラスを割る必要が出てきます。
車の窓ガラスは、金槌やドライバーの先端を使っても上手く割れません。
専用の工具が必要になります。
脱出用ハンマーや脱出用ポンチなどが市販されていますので、購入しておいてドアポケットやグローブボックスに準備されておくと良いでしょう。
なお、車のガラスを割る場合はサイドガラスにして下さい。
フロントガラスはガラスの間に特殊なフィルムが入っているために割れにくく、割れた場合の破片も鋭利な形状になりますので危険です。
車の水没事故は、少しの知識と引き返す勇気で避けられることもあるということを認識頂きたい。