自動車保険の「免責事由」に該当すると保険金は支払われない!

自動車保険の知識

|自動車保険の免責事由とは?
自動車保険の免責には「金額」と「事由」があります。


「免責金額」は、保険会社が支払わない保険契約者の自己負担額を意味し、「免責事由(約款免責)」とは保険会社が保険金を支払わない理由のことをいいます。


自動車保険は、事故によって被った自動車に関連した損害を補償しますが、保険会社が保険金の支払ができないとの判断や支払いを断る場合とは保険金を支払わない理由、つまり「免責事由」に該当した場合です。


免責事由は、自動車保険共通だけではなく車両保険や対物賠償保険など、それぞれの担保ごとにも定められている事由もあります。


事故が起きて、保険を使おうとした際に免責事由に該当するという理由で支払を拒否されても困りますので、事前に約款の確認や、知識を入れておくことは必要かも知れません。

対人と対物に関する賠償保険の免責事由には、両者に共通するものが多いので概略だけでも知っておくことで保険金が支払われるか?否か?の判断は可能になるはずです。

「免責事由」といっても、特別で難解な内容ではなく社会常識的には保険金が支払われない理由として納得できる範囲と思います。

|自動車保険共通の免責事由とは?

「免責事由」には各担保に応じた事由がありますが、自動車保険共通の事由もあります。

大きくは4項目に分類可能な「共通の免責事由」とは?

|故意や異常危険行為などによる免責

保険契約者や被保険者の故意によって生じた損害になりますが、重過失は共通の免責事由にはなりません。

人身傷害保険や車両保険は、「故意または重大な過失」によって生じた損害が免責となりますが、対人や対物賠償保険では、保険契約者や被保険者の「故意」は免責事由に該当しますが、「重大な過失」は免責事由とはなりません。


そして、異常危険も共通の免責事由になります。


代表的なのが、戦争や外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、類似の事変や暴動、
そして地震や噴火、津波。

核燃料物質や汚染された物の放射性や爆発性、その他有害な特性の作用やこれらに起因する事故、それ以外の放射線照射または放射能汚染。


以上の事由に随伴して生じた事故や、これらにともなう秩序の混乱に基づいて生じた事故。


自然災害を事由とする免責については、自動車保険に共通するのは「地震、噴火、これらによる津波」になります。


対人や対物賠償保険の場合は、これに「台風・洪水・高潮」による損害も免責です。


その他に、ロードレースやサーキットレースなどの競技や、サーカスなどの曲技、試験のためや練習のための使用、これらを目的とする場所での使用は、全てといっていい範囲で免責になります。

|保険料の領収前による免責

保険契約が成立して保険会社の責任が開始された場合でも、保険料が支払われる前に発生した交通事故に対しては、免責とされて保険会社は保険金を支払いません。

これは、保険料が支払われていない場合でも保険会社に保険金の支払い義務があるとした場合、交通事故が起きるまで保険料を支払わない契約者がいるかも知れない!・・からです。

|保険契約上の告知や通知などの義務違反による免責

保険契約上の義務に違反した場合は、保険金は支払われないことになっています。

保険契約上の義務のひとつは、保険契約時の告知義務と告知事項があります。


保険会社が求めた事項について、契約者や被保険者には告知の義務が課せられており、告知された内容が事実と相違している場合は、契約の解除や保険金が支払われないことがあります。


主だった告知の項目には、記名被保険者や生年月日、運転免許証の色、契約自動車の所有者などありますが、気になるところでは過去一年間の他の保険会社からの解除の有無、前契約における事故の有無や件数、等級、事故有係数適用期間などもあります。


そして、ふたつ目は、契約後の通知義務と通知事項です。


自動車保険契約後に変更があった場合は、遅滞なく保険会社に通知しなければならないとする義務があります。


遅滞なく通知がされない、変更手続き書類の未提出、変更による追加保険料の支払いが履行されない場合などは、契約の解除や保険金が支払われないことがあります。


基本的な通知事項の他に、例えば運転者の年齢条件や運転者限定特約が変更になる場合、自動車を譲渡するなど、保険証券の記載事項に重要な変更を生じさせる場合の通知は必要という事です。


契約条件の変更手続き完了前に起きた事故については、保険金が支払われない場合や、変更前の契約条件が適用される事もあります。


告知義務や通知義務違反は、保険契約の解除事由にもなります。


保険金支払いの対象となる事故が起きた後でも、義務違反によって保険契約の解除がなされた場合は免責となり、保険会社が保険金を支払っていた場合は契約の始期に遡って返還請求をすることになります。


その他にも、事故が起きた時に事故発生通知義務などの報告義務もあります。


契約者や被保険者は損害の拡大防止に努める義務を負います。


これに違反した場合は、防止や軽減できた損害額を保険金から差し引いて支払われるという可能性もあります。


保険契約時に保険証券に同封されている「ご契約のしおり」などで、具体的な義務の範囲を確認しておいて頂きたい。

|保険契約当事者の限定特約による免責

限定特約は、保険が適用される事故の範囲を限定する特約を付けている場合のことをいいます。

例えば、保険を適用させる運転者の範囲を家族だけに限定するというものです。


限定特約を付けることで保険料を安く抑えることができますが、家族以外が運転して事故を起こしたときは、免責となって保険金が支払われません。


保険会社によっては若干の違いはありますが概ね共通した内容になっています。


個別の保険約款に必ず記載されているますので、機会がありましたら確認しておくことをお勧めします。

|車両保険に関連した主な免責事由

各担保共通の免責事由の他に、車両保険が免責になる事由もあります。

[1]契約者や被保険者、保険金受取人の故意または重大な過失による損害


[2]保険金の受け取りを目的とした、詐欺や横領による損害


[3]無免許運転によって生じた損害


[4]酒気帯び運転、麻薬や危険ドラッグなどの影響を受けた状態の運転による損害


[5]契約車両の欠陥による損害、摩滅や腐しょく、さび、その他の自然に発生する消耗を起因とする損害


[6]偶発的な外部要因を起因としない故障による損害
一部の保険会社では「故障運搬時車両損害特約」等の名目で故障損害を補填する特約を発売していますが、自走が可能な故障やオイルやバッテリー等の消耗品損害、法定点検未実施に起因する故障は対象外になりますので要注意。


[7]火災や盗難を除く、タイヤ、タイヤチューブのみの損害


[8]法令により禁止されている違法改造よる部品や付属品の損害


[9]カーナビ等の付属品のうち、契約車両に固定や定着されていない物、取り外された部品や付属品の損害

|対物(対人)賠償保険の免責事由
自動車保険に共通の免責事由がありますが、対物や対人賠償にも特定の事由があります。


例えば、天災による損害について地震や噴火、津波は各担保共通の免責事由ですが、車両保険では台風や洪水、高潮は免責にはなりません。


しかし、対人や対物の賠償保険では免責になります(賠償に台風や洪水が、損害にどの様に絡んでくるのか明確な線引きは曖昧ですが・・)。

|対物賠償保険に関連の免責事由

[1]契約者や被保険者などの故意によって生じた損害

[2]台風・洪水・高潮・などの災害による損害


[3]対物賠償保険の態様に関する免責事由として、事故の被害者が被保険者等と一定の関係にある場合について定められており、以下の人が所有・使用・管理している財物が滅失、破損や汚損による損害を受けて、被保険者が被る損害については補償対象外となり保険金は支払われないことになります。

・記名被保険者所有・管理・使用している財物


・契約車両の運転者またはその配偶者、父母、子がの所有・管理・使用する財物


・被保険者またはその配偶者、父母、子が所有・管理・使用する財物


|対物賠償保険が免責事由に該当するのか?の事例
詳細な諸条件を加味しない事を前提としてですが、例えば悩ましい事案として、記名被保険者が賃貸マンションに入居していてマンションに併設されたガレージのシャッターを、記名被保険者本人の過失により破損してしまった場合です。


シャッターの所有者=マンションの所有者になりますが、記名被保険者のみが専用で使用しており他の入居者が近寄る状況にもない場所である場合は、被保険者の「管理財物」とみなして免責事由に該当する可能性が極めて高い!

|対人賠償保険の免責事由
対人賠償保険における免責事由は、対物賠償保険とほとんど共通していますが、一部ですが対人賠償保険だけの免責事由が増えます(対物賠償保険の[1]と[2]は共通です)。


[3]の対人賠償保険に関する免責事由として、被保険者としていずれかに該当する方の生命や身体が害された場合は免責です。


①家事を除く、被保険者の業務に従事中の使用人

被保険者の業務に従事中の使用人が被害者となった場合は労働災害になり、労災保険により損害が補償されるから、対人賠償責任保険では免責という事です。


②被保険者が契約車両を使用者の業務に使用している場合、被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人が損害を被った場合。

被害者が被保険者と同じ使用者に雇用されている使用人ということは、被保険者の同僚になるので「同僚災害」ということで免責になります。

但し、契約車両の所有者が個人の場合、記名被保険者が被った損害は補償されます。


対人賠償保険・対物賠償保険の場合は、任意保険を契約している記名被保険者を中心として、その配偶者や子供、同居の親族などは補償の対象になりませんので、注意を要します。

|その他の免責事由に関して!
被害者側が加入している保険における免責事由は、加害者側が加入する賠償責任保険の免責事由と異なる点があります。


被害者側が加入している担保(保険)からの視点では、事故の状況によっては被保険者自身に原因がある場合もあって、その原因によっては被保険者に保険金請求権を認めることが妥当でない場合があります。


代表的な担保(保険)として人身傷害保険があります。


他にも、搭乗者傷害保険や自損事故保険もありますが、補償内容が人身傷害保険と重複または含まれる形で存在するため、免責事由は概ね人身傷害補償保険と同様になります。

|被害者が加入している担保(人身傷害保険等)の主な免責事由
自動車保険共通の免責事由は省略しています。


[1]無免許運転、または酒気を帯びた状態や、麻薬、覚せい剤、危険ドラッグ等の影響を受けた状態で自動車を運転し、本人に生じた傷害


[2]被保険者が、正当な権利者の承諾なしに契約車両に搭乗して生じた傷害


[3]被保険者の闘争行為や自殺行為、犯罪行為によって本人に生じた傷害


[4]被保険者の脳疾患や疾病、または心神喪失によって本人に生じた傷害


[5]保険金を受取る人の、故意や重過失によって生じた傷害で、本人が受け取るべき金額の部分


[6]異常かつ危険な方法で自動車に搭乗して生じた傷害

「この様な事故の場合、保険金は支払われないだろうな!」と常識的な経験等による判断は概ね間違っていないと思っていい・・はずです?!

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