|そもそも高速道路(高速自動車国道と自動車専用道路)とは?
高速道路とは、自動車が高速で走行するための道路で、高速自動車国道や自動車専用道路の総称になります。
東名高速道路や名神高速道路に代表されるように、路線の名称に高速道路と名前が付いている道路もありますし、関越自動車道や中央自動車道のように、高速道路と名前が付かない高速道路もあります。
高速道路では一方通行が基本で、交差点や信号もなく、歩行者もいないため交通事故の絶対件数は一般の道路と比較しても断然少ない。
しかし、その反面に高速道路という名前の通り、自動車の走行スピードが早いため、事故が起きた場合は死傷者が出る様な大惨事になるケースが多いのも頷けます。
高速道路では、125cc以下の自動二輪車や原動機付自転車の乗り入れや走行は不可で、当然ですが歩行者や自転車などの軽車両も通行することはできません。
高速道路は走行が許される車両が限定されているので、ある意味では快適で走りやすいのですが、その分事故が起きた場合の損害も大きくなるのです。
高速道路では、法的規制や過失割合等についても一般道とは異なった扱いになります。
|高速道路事故の過失割合に関しての基本
高速道路は、道路交通法や高速自動車国道法及び道路法等で、一般道路とは異なった法的な規制をされています。
一般の道路については、人や車両等が混在している道路が前提とされているため、人と車両や車両同士の接触や衝突を回避することが目的とされているのに対して、高速道路については一般道の特例としての法令が定められています。
1)最低速度を維持する義務(法75条の4)
2)横断・転回・後退の禁止(法75条の5)
3)本線車道通行車の本線車道進入車に対する優先性(法75条の6)
4)本線車道出入時の加速車線・減速車線通行義務(法75条の7)
5)駐停車の原則禁止(法75条の8)
6)燃料・冷却水・オイル量、貨物の積載状態を点検する義務(法75条の10)
7)本線車道等に停止した時に停止表示を行う義務(法75条の11第1項)
8)本線車道等において運転できなくなったときの退避義務(法75条の11第2項)
以上の8項目は、高速道路が一般道と異なって自動車のみの通行を予定している道路であり、高速走行を前提として、自動車の安全かつ円滑な走行を確保するための特例になります。
事故が起きた場合の過失割合についても、一般道と高速道路とでは明確な違いが有るので、高速道路上で発生した事故については一般道とは別に過失割合を定めることが必要と判断されています。
すなわち、時速80kmを超える高速走行で事故が起きた場合は、重大な結果を招く蓋然性も高くなるため、法規制に従って走行される事が一般道以上に強く求められているから・・。
よって法に従わないで事故が発生した場合の過失は、一般道路より重く評価されます。
但し、速度違反については他の車両の流れに沿って走行することが一般道路以上に要求されることも有り、その過失割合に与える影響は実態に合わせて評価する必要があります。
「判例タイムズ」では、「修正要素」として速度違反を取り上げていますが、保険会社の実務上で適用させたという事例はほとんど有りません。
また、高速道路上の事故であっても渋滞状況が原因で発生した場合は、周囲の車は高速で走行していないので、速度超過分を過失割合に反映させないのは当然でしょう。
渋滞が事故原因の場合は、一般道での過失割合を適用させるのか、高速道路上の過失割合を適宜修正して適用させるのかを、状況によって判断する事になるかと思います。
高速道路上で最も多いのは、やはり追突事故になりますが、特徴的なのが合流する際の事故や車線変更時の事故があります。
そして、絶対件数は少ないのですが思っている以上に起きている事故として、落下物や歩行者との衝突になります。
|本線に合流する際に起きた事故の過失割合
高速道路は車両のみが走行を許されており、基本的には一方通行で信号も交差点もなく、一般道と比較しても事故が発生する確率は低くなっています。
しかし、車両の走行スピードが早いために、いちど事故が起きてしまったら被害や損害は大きくなるケースが多い。
交差点のない高速道路で、交通事故が起こる確率の高い場所のひとつに、合流地点があげられます。
一般道から加速車線を経て、高速道路に進入する時や、インターチェンジから他線に移る時、サービスエリア・パーキングエリアから本線に戻る時などは、車両は必ず合流地点を通過する事になります。
合流地点で事故が発生するのは、単に走行ラインが重なるだけではなく、本線を走る車両と合流してくる車両の速度の差が大きいのも原因のひとつになっています。
高速道路の合流地点での交通事故において、基本的に過失責任が高くなるのは、本線に進入する車両側になります。
過失割合の基本として、同じ車線を走行している車両と車線を変更した車両が事故を起こした場合は、車線変更した車両の過失が大きくなるのが一般的です。
合流車線から本線に進入するのは、車線変更の一態様との考え方も有るのです。
また、優先道路や本線を走行している車両が優先されるので、合流車線や劣後車側の責任が大きくなるのは、高速道路も一般道も同じです。
法75条の6の規定を基に、本線に合流しようとする自動車と、本線走行車両と事故が起きた場合の過失割合は、<合流する車両70%:30%本線走行車両>が妥当な基本の過失割合になると判断されています。
本線走行車両にも30%の過失が認定されているのは、合流車線が有ることで合流して来る車両があるかも知れないと、予見することが可能であること。
軽度の前方注視によって、合流してくる自動車を確認することは容易であるため、減速や車線変更によって事故を回避することが可能である等より、本線走行車両においても過失は生じると判断されています。
また、事故当事者の一方が二輪車の場合は、自動車同士の事故で認定される過失割合の基本数字を、二輪車側に10%を減算修正して認定しています。
合流しようとするのが二輪車で本線走行が自動車の場合は<本線走行車両40%:60%合流する二輪車>になりますし、逆の場合は<本線走行の二輪車20%:80%合流するのが自動車>になります。
合流する場合の事故に限らず、高速道路上での他の事故についても、片方の当事者が二輪車の場合は、自動車同士の事故の基本過失割合から、交通弱者保護の観点から二輪車側に10%を減算修正して認定されています。
実務上、大きな修正要素として取り上げられるのが、「合図なし又は合図遅れ」が有ります。
直進車両側に10%の減算修正をされるのですが、特に「合図遅れ」は争点になり易いので要注意という事になります。
|走行車線変更により起きた事故の過失割合
全国の高速道路のほとんどは、走行車線と追越し車線に分けられており、速度の速い自動車は普通に追越し車線を利用しています。
一般道と違って対向車が来ないため、相応の頻度で走行車線から追越し車線、追越し車線から走行車線へと進路変更が行われているのが普通の走行状態になっています。
そして、その進路変更時に事故が起きる事も多い!
高速道路上で、走行車線から追越し車線に進路変更した際に、追越し車線を後方から走行してきた車両と事故が起きた場合です。
基本的な過失割合は<進路変更車両80%:20%追越し車線を走行してきた車両>になります。
片側2車線ある一般道で同様の事故が起きた場合は<進路変更車両70%:30%同一車線の走行車両>になるので、高速道路上で車線変更する車両は、より高い注意義務が課せられており一般道における割合より10%加算された認定になります。
「道路交通法26条の2第2項、法75条の2の3」が認定に関しての根拠になっています。
同規定において「車両は、進路を変更した場合にその変更後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度または方向を急に変更させる事となるおそれがあるときは、進路を変更してはならない」とされています。
後方からの車両に減速や方向変更をさせる様な、前走車の進路変更は原則として許されないとされており、進路変更したことによって事故が起きた場合は、基本的に進路変更車が責任の多くを負うべきという事です。
但し、前方走行車両が進路変更を行う際に、適法に進路変更の合図を行っている場合には、後方直進車としても前走車の進路変更を察知して、適宜減速等の措置を講ずることによって事故を回避することはさほど困難ではないと考えられます。
これらの状況を考慮した上で、前走車両が適法に進路変更の合図をしていること、後方直進車が制限速度を遵守していること、及び後方直進車に前方車両の動向に対する軽度の不注視があることを前提として、基本の過失割合が定められています。
したがって、例えば、後方から進行してきた車両が前走車を追い抜いてその直後に再び進路を変更して事故が起きた場合などは、進路変更車両として過失割合を検討するのではなく、別の事故形態として判断する事になります。
なお、進路変更に起因した事故について、追越し車線から走行車線へ進路変更した場合や、3車線以上の高速道路で走行車線から走行車線に進路変更をした際に事故が起きた場合の基本割合は<後続直進車30%:70%進路変更車>の認定になります。
ここでも、事故当事者の一方が二輪車の場合は10%が二輪車側に減算修正されることになります。そして、「合図なし又は合図遅れ」も要注意となるのは同じ!です。