後遺障害等級の認定までどの様な手順で進められるのか?

対人賠償

|後遺障害等級の申請手続きが終了した後は?
医師によって作成された後遺障害診断書は、他の必要な書類や資料と共に損害保険料率算出機構の調査事務所へ提出されることになります。

加害者側の保険会社が実施する「事前認定」の場合は任意保険会社経由で提出され、結果についても任意保険会社経由で通知されます。

「被害者請求」の場合は、被害者が直接加害者の自賠責保険会社へ後遺障害診断書等の必要な申請書類を提出することになるので、結果についても自賠責保険会社を経由して被害者に文書で通知されます。

加害者側の保険会社が事前認定として手続きするのか、被害者請求とするのかは被害者が自由に選択ることが出来ます。

事前認定の場合も、被害者請求の場合も等級の認定結果には一切の影響はありませんが、被害者請求をされる場合は被害者の事務上や費用負担(画像がCDにコピーされて買い取りになるケースが増えています)大きくなります。

事前認定の場合、被害者は後遺障害診断書を医師に作成してもらい、任意保険会社に提出するだけで済んでしまいますので、一括対応をしている場合はそのままの流れで「事前認定」を選択されることを、事務手続きの煩雑さを回避する意味でもお勧めします。

後遺障害の等級認定が判明する期間は一概にいえず、神経症状の場合でも約1ヶ月位で結果が出れば早い方かも知れません。

障害の程度によっては3ヶ月や、まれに6ヶ月位の期間を要する場合もあります。

加害側の任意保険会社が行う事前認定のデメリットは、仕事が出来ない状態の被害者にとって後遺障害の等級が確定しても示談が成立しなければ、後遺障害保険金の支払いはされません。

よって、例えば生活費に困窮する場合が起こる可能性も出て来ます。

自賠責の救済制度を利用することや、傷害部分のみの示談を検討するなど対応を考えておかなければならない場合もあるでしょう。

保険会社が行う事前認定に対して、被害者請求での手続きで後遺障害の等級に該当した場合は、数日から1ヶ月以内の比較的早期に等級に応じた自賠責保険金が支払われることになるのが一般的です。

事前認定による申請手続きは任意保険会社が行うために、必要な書類や立証資料等を省略して申請する等、被害者にとって不利な状況が起きるのではないかと懸念されるかも知れませんが、等級認定を行う「損保料率機構」は認定をするために必要な資料や書類を、被害者にとって有利や不利を問わず見逃すことがほとんどありません。

認定された等級の妥当性や信憑性が高いことで損害賠償請求の訴訟になった場合でも、後遺障害の等級について裁判所は「損保料率機構自賠責保険」の認定をそのまま採用しているケースが多いのです。

等級申請をする場合の必要な書類は以下になりますが、被害者に直接関係のある書類を列記しています(この他に一部加害者側の必要書類があります)。

・交通事故証明書


・事故状況説明書(図)


・後遺障害診断書


・診断書と診療報酬明細書(全期間)


・最初と最後の画像診断書(レントゲン写真等、状態によっては適宜撮影された画像写真)


・保険会社が必要に応じて実施した医療照会回答書    


が基本書類になります。

以上の書類を整えて、最終的には損害保険料率算出機構の調査事務所に提出することになります。



|認定に関する審査のプロセスについて

事前認定の場合でも被害者請求の場合でも提出された書類は、「損保料率機構」の自賠責調査事務所に送付されそこで審査されることになります。

後遺障害の等級は自賠責の別表で定められていますので、調査事務所では必要な調査を実施した結果で別表のどの等級に該当するのか判断します。

後遺障害の症状等によっては積極的な確認調査も実施されますが、等級申請の件数が多く物理的にどうしても限界は出てきます。

被害者の中には、認定の担当者に直接会って症状を確認して欲しいと要望を出される方もおりますが、醜状痕の程度や範囲確認などで面接を求められる以外は面談による認定作業は原則として行われておりません。

等級の認定は、ケガを負ってから症状固定日までの全ての診断書や診療報酬明細書、後遺障害診断書、画像診断書(診療報酬明細書にはレントゲン写真やMRI等が撮影された記録が全て記載されています)が主な資料になります。

その他の資料として保険会社が実施した医療照会の回答書や、調査事務所が自らの判断で実施した照会回答書等も必要に応じて提出を求められ、これらの資料等によって判断されることになります。


必要な調査が行われて、診断書の記載内容が正確であれば妥当な等級認定がなされるはずなのですが、現実には被害者の症状に合った等級が認定されていない!といわれる事があります。

何をもって妥当性に欠けると言うのか?何を根拠にして、どの様な等級であったら被害者の症状に見合った等級になると言うのか?疑問に感じることも少なくありませんが、状態によっては妥当性に疑問?と感じられる認定が起こる可能性はあるかも知れません。

例えば、後遺障害診断書を作成する医師個人の交通事故の賠償に関する考え方や、交通事故の被害者が医師に求める治療レベルが高い場合。

他にも、自費負担で通院する私病患者と負担なしで通院する交通事故患者の通院頻度の違いや、医師の治療に代えて、または併用して整骨院に通院する等の諸条件の組み合わせによっては、診断書への記載内容に影響する可能性は否定できないかも知れません。


また、被害者本人の要因として、時間的制約から十分な治療が受けられなかった場合も個別事情に該当するかも知れません。

他にも、例えば可動域制限の角度や醜状痕の大きさなど、等級に該当するか否かの線が引かれる分岐点があって少しの差で該当や非該当に分かれる状況になるのはその通りなのです。

その意味で、後遺障害の等級は100%妥当な等級が認定されているかは不明ですが、認定の判断基準としては現状の人員や組織状況ではギリギリであっても許容範囲内ではないでしょうか?

結果として等級認定の内容は実情や実態から大きく外れていないと思っています。

そして、全ての後遺障害の認定は調査事務所のみで認定されている訳ではありません。

ある程度の高度な判断や認定が必要な事案は地区本部で、認定判断が困難な事案や異議申し立て事案は自賠責保険審査会高次脳機能障害等はそれぞれ専門部会で認定作業が行われることになります。

|後遺障害が認定されるために必要な条件はあるのか?
後遺障害が何らかの等級に該当!と認定されるためには、一定の条件を満たすことが必要になります。

|治療による症状改善の効果がなくなったときに症状が残っている事

症状が固定にならなければ、後遺障害の等級申請には進めません。

症状固定日はケガの程度や部位等、治療経過によって変わりますが、一般的に神経症状などは受傷してから6ヶ月以上治療を継続してなお症状が残存した場合になります。

症状残存は単に症状があることでは無く、将来においても回復の見込みのないものであることが必要になります。

|交通事故と相当因果関係のある症状が残っている事

例として、事故にあってから10日位経ってから首に症状が出て来たが、仕事が忙しかったので病院に行ったのはその2週間後だったという様な場合ですが・・。

事故の発生から3週間以上も受診しなかったことになるため、事故と症状の間に因果関係を認めるのは困難という理由で、賠償による治療が認められないことで後遺障害の等級申請は不可と判断される可能性は高くなるでしょう。

|症状の残存が医学的に認められる事

例として、肩が上がらない症状に関しては肩関節が損傷している等の客観的な原因があるのが普通です。

また、捻挫により痛みが残存した場合は受傷時に靭帯等の軟部組織に損傷が認められた、或いは強い衝撃を受けたなどの原因があるはずです。

それらが証明されなければ等級が認定される可能性は低いという事になります。

手指等の欠損や、レントゲン等の画像所見で客観的に判別できる症状は、障害の存在が明白なので妥当な等級が認定されますが、客観的にも視覚的にも捉える事が困難な神経症状などの障害については、日常生活に支障が出ている状態であっても認定される可能性は低いという事になります。

|治療の目的は後遺症が残らずケガを治す事です!
後遺障害の等級に該当するのが難しいとされている、むち打ち損傷の様な後遺障害に対しては症状固定前からの準備が大切になります。

ポイントは「適正な治療を受けておく」こと、つまりケガのレベルと症状に合った治療を適切な期間受けることが大切になります。

院期間や通院頻度は、ケガの部位や症状によって医師の指示は異なるのは当然ですが、同じ症状や部位であっても医師によって違いはあります。

治療は医師の指示に従うのが大前提になりますが、医師の指示に従って通院したことで後遺障害の等級が「非該当」になる被害者もいます。

医師は完治を前提にしている治療行為であり、将来において後遺障害の等級申請をすることや、申請した場合は「該当」する様には治療をしていないので当然ではあります。

後遺障害が残って等級申請をする状況は、医師にとっては不本意な状態と受け止められている場合が多い様です。

後遺障害診断書の作成や検査内容等について、等級に該当する様に医師に協力を求めるのは本来的には無理と理解するのが正しいということになるでしょう。


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