ケガの損害を加害者に請求するには病院の証明が必要!

対人賠償

|交通事故によるケガで損害が生じたことの証明が必要!
交通事故でケガをした為に治療の必要性が生じた、そしてケガが交通事故と相当因果関係があることを被害者が証明しなければなりません。


損害を被ったことによる賠償請求の妥当性や正当性を加害者に示す必要があるからです。


被害者がケガをしたことを証明する方法として、医療機関の診察によって作成される「診断書」や治療費の詳細が記入されている「診療報酬明細書」が基本的な唯一といっていい立証書類になります。

事故当初の「診断書」や「診療報酬明細書」には、受傷の事実、傷病名、治療見込みを、治療の経過等、さらに期間の経過によって入通院期間、通院実日数などの被害者が被った損害を加害者側に請求するために必要な情報が記載されることになります。

また、個別状況によっては入院諸雑費や通院交通費、休業損害、ケガの苦痛に対する慰謝料などの人的な総損害額を算定する資料でもあります。

つまり、交通事故でケガをしたと被害者が主張しても、病院で診断を受けていない状況では客観的な証明がされていないので、加害者側に損害賠償の請求はできないという事です。


|治療費として認められる範囲は?
治療費は必要かつ相当な実費全額が賠償の対象です。

保険会社は自賠責保険と任意保険を合わせて、直接医療機関に治療費を支払う旨の「一括払い」の依頼連絡を行います。

依頼の際に、被害者から取付け次第「同意書」の提出を約して、それを前提に自賠責保険の定型書式の用紙を用いた「診断書」と「診療報酬明細書」の作成及び提出を依頼します。


保険担当者は提出してもらった「診断書」と「診療報酬明細書」の内容を確認し、初診時における診断書二通分の作成費用は認定することになります。

一通は事故対応する保険会社への提出用、もう一通は警察に人身事故として届け出をする提出する費用。


なお、被害者が個人的に使用するための(被害者本人が加入している傷害保険などの請求や、事故報告や休業申請等のために勤務先に提出する等)診断書作成料は、認められませんので被害者の個人的負担となります。

入院治療が必要な場合においても、通常は4人~6人位の入院部屋になります。

個室など特別室を使用する際は、基本的には病院の判断が優先されています。

被害者の看護や治療上の必要性、病院に空きベッドが無かった等の特別な事情がある場合、病院の証明等によって必要かつ相当な損害として認めることが可能になります。

但し、治療や容体を含めて特別な事情が解消された時点で、入院部屋を移って頂くか以降の室料差額分を負担頂くかの対応になります。

被害者の希望などによって最初から個室を使用する場合は、一般病室との差額分を負担することになります。

|整骨院の施術は損害の証明や請求根拠になるのか?

交通事故による傷害事案で最も多いケガが頸椎捻挫や頸部挫傷、一般的には「むち打ち損傷」や「むち打ち症」といわれる傷害です。

この症状は首の骨が事故による衝撃で折れた、または外れた等の明らかな他覚的所見に乏しく、自覚症状での訴えが主になっています。

この「むち打ち症」や「打撲」「捻挫」を治療するうえで、整骨院(含む整骨院、
以下整骨院に統一)は医療上の賠償範囲に含まれるのでしょうか?

賠償上の理屈の上では、整骨院の施術は医療賠償の範囲に含まれないと解されるところです。

交通事故によりケガをした場合、「治療費」が賠償の対象となるからです。

整骨院は柔道整復師という国家資格を有して、補完的医療の知識をもって施術を行っています。

しかし、その施術は治療行為ではなく、医療類似行為と呼ばれるものです。

つまり、整骨院は治療ではなく「施術」になります。

病院の「診断書」に対して、整骨院は「施術証明書」と呼ばれ人身事故届けの場合も「施術証明書」では警察は受理しません。

しかし、自賠責保険の支払基準は柔道整復師が行う施術費用は「免許を有する柔道整復師、あんま、マッサージ、指圧師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする」として認めているのです。


保険会社は、自賠責保険の支払基準に準じて「必要かつ妥当な実費」の範囲であることや、条件付きで整骨院の通院を認めているのが現状です。

整骨院での施術が治療の補完的役割を果たしていると医師が認めて、整骨院への通院に同意することが条件のひとつになります。

また、施術の期間についても、症状の変化等の医療効果を定期的に確認しながらを条件に通院を認めるはずです。

例えば、「3週間位通院して症状改善等の効果を感じられる様なら、後どの位通院したら良いか協議しましょう。効果を感じられなければ、中止を検討して下さい」的な申し入れを保険会社の担当者は行うことになるでしょう。

理屈の上では治療行為ではない施術ですが、実務的には治療の補完的な医療行為として治療費の範疇に含めて認定しているのが現状です。


|治療費として認定する期間や終了時期は?そして例外的な認定

治療費の認定は、治癒するか症状が固定した段階で終了となります。

症状固定とは治療を継続しても、それ以上の症状の改善の望めない状態を言います。

現在の症状が残存したこと、等級認定の可否は別にして障害として確定されたことになります。

実務上は、診断書によって認められた症状固定時までが、相当かつ妥当な治療期間であり症状固定までの治療費を相当因果関係がある損害と認められます。

よって、症状固定後に支出した治療費については「特段の事情」がない限り損害として認めていません。

症状固定後の治療費を認める「特段の事情」の範囲として主だった例は多くありません。


例えば、意識のない寝たきりの植物状態になって、保存的治療のために将来にわたり治療を継続する必要がある場合。

子供の歯牙欠損等で、大人になって顎関節や顔の骨格が有る程度固まった時期に行う、補綴装具の交換やインプラント等を実施する場合。

そして、大きくは症状が固定した後も症状固定時の状態を維持するため、将来にわたる治療費の支出が確実に予測される等の事情が認められる場合に限り、将来の治療費を請求することができると解されています。

この場合は、将来の治療が必要とされる具体的事情や見込まれる治療費の額について、医師等からの診断書に代わる証明書等の資料が必要になります。

医療機関の証明書に基づいて、治療が必要な期間に応じ、中間利息を控除した治療費を算出することになります。

実務上中間利息を控除する場合は、症状固定日を基準として算定します。

治療費や休業損害等の傷害部分の損害は症状固定日が限度となりますので、症状固定日がいつになるかは賠償の算定に重要な意味を持つことになります。

症状固定や固定日についても、保険会社のみで判断や認定はしません。


医療機関が作成する証明書や、「診断書」「診療報酬明細書」が認定の根拠書類になります。

|保険会社は整骨院の施術費用を賠償範囲と判断している?!

整骨院も接骨院も同じで呼称は地域によって違いますが、保険会社は整骨院の通院を正直にいうと歓迎していない?!と言えるでしょう。

通院期間が病院だけの場合と比較しても、長期化しているのが統計上の数値で明確に出ています。

保険会社の担当者も整骨院へ通院する被害者は、無意識的に通院期間や通院の頻度等に注目してしまいます。


担当者は定期的に症状確認のために、通常は電話で被害者本人から症状や状態等を聴取しますが、整骨院へ通院している被害者へは面談にて確認する確率が高くなります。

施術期間の管理は常に意識することになります。


ここ数年で増えているのが、整形外科の病院内で理学療法士を置いて、リハビリテーション科や理学療法科を設置していることです。

医師の診察を受けながらの、電気療法やマッサージ等は整骨院と違い病院で治療しているとの認識により意外とノーマークになってしまいます。

ケガの程度や症状の推移等について病院が「診断書」等で証明する場合、保険会社は基本的に納得しなければなりません。

病院に通院していることで、担当者の通院期間の管理意識が緩めになるのも現状では致し方ないのかも知れませんが・・?!


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