|盗難車両の保険金支払いまでの流れや手続きは?
車両盗難や車上荒らしにあった場合、車両保険や車載品の特約等に加入していることで損害が補償される可能性はあります。
しかし、保険会社に盗難された事実を報告し保険金請求の意思を明示して、手続きが完了しても保険金が支払われるという確約にはなりません。
最初に、車両の盗難や車上荒らしにあった事実を警察に届け出ることが必要で、保険金の支払いを受けるための大前提になります。
盗難があった場合に警察へ届け出をする通知義務の履行によって、保険会社は保険金を支払えるか否かの調査を開始することになります。
請求者の中には、警察が車両盗難の届け出を受理したので直ちに保険金を支払って欲しいと主張される方もいますが、警察は被害届を受け付けただけで車両盗難の事実を証明したことにはなりません。
更に、警察捜査の基本は犯罪者の検挙であり、保険会社の調査は保険金を支払えるか否かに関わる盗難の事実や状況を確認すること等で、警察の捜査とは目的が大きく異なります。
保険会社の調査や確認の期間は、通常では約1ヶ月程度は要するのが一般的です。
車両本体や車載付属品の盗難よる保険金の請求については、保険金の騙取目的による偽装事故も多く、保険会社は認定に対して慎重になっている状況といえるでしょう。
保険会社の調査の目的は、保険金を支払えるか否かを公正かつ公明に結論付けるための調査であって、保険金を支払わない理由を見つけるためではありません。
よって調査のポイントは、「無過失で偶然の盗難」である事を確認出来るか否かに尽きると言ってもいいでしょう!
そのために、契約者や被保険者の車両の保管や施錠等管理の状態から、防犯措置のレベル日常の管理状況等が常識的に行われていたのか等、詳細に聴取することになります。
また、盗難された当時の状況も確認されます。
例えば、キーを付けたまま自動車の外へ出ていた状況ではないのか?コンビニに立ち寄って、数分間でもエンジンをかけたままの状態ではなかったか?等々が確認されます。
保険会社は「キーを抜いて、ドアロックをする」のが最低の防犯対策の条件として見ていますので、逆にキーを付けたままドアロックもしていない等の場合は、容易に盗難が可能な状態であったとして無過失で偶然と認定するのは困難になる可能性はかなり高くなります!
該当の車両を使用するために日常使用しているキーを、盗難後にも所持しているか否かも偶然を判断する大きな要素のひとつです。
盗難状況などから偽装事故の可能性が疑われる様な場合は、保険会社は専門の調査会社と連携して踏み込んだ調査を実施することになります。
日常の管理としては、車両から離れる時はエンジンを切ってドアにロックをしてキーの管理をしっかり行うことで盗難の一次的な防犯対策になりますし、盗難された場合においても最低限ではありますが「無過失」や「偶然」の主張が可能になることを理解頂きたい。
車両の盗難や車上荒らしは、日常の対策をしっかり実施していれば起こらない事件ではありません。
日常の盗難されない対策と並行して、万が一盗難被害にあった場合の対応策も意識しておく事が大切になります。
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|盗難されても保険金が支払われない場合があります!
各保険会社の「車両保険」には一般型と、名称は会社によって違いはありますが「車対車限定危険担保」等と補償を限定して保険料を安く抑えたエコノミー型があります。
一般型でもエコノミー型のどちらでも、盗難による損害は補償されます。
2021年の統計上では自動車盗難認知件数が5,182件とここ数年減少傾向にありますが、これは警察が集計した件数なので、実際の発生件数はこの数字より更に多い件数が盗難にあっていると思われます。
車両保険の請求や支払いに関して、21年統計によると盗難被害による車両保険の支払件数は約2,400件、対象となる一般ユーザーの車両保険加入率は共済を含めて約60%前後といわれていますので、約700件位は保険金受領の権利を行使していないか、請求しても支払われていない状況が起きている可能もあるのかと思います。
参考までに、車上荒らしの件数についても2002年をピークに減少傾向にあるものの、2021年の警察庁の統計では車上荒らしと部品取りの件数は約36,000件と決して減少傾向にあるとは思えない数字です。
対して、損保協会の統計による保険金支払件数は931件ですので、車両保険加入率60%と看做した場合でも約20,000件は保険金を受領していないことになります。
数字上では保険金支払い率は約4%とかなり低い状況になりますが、近年でも支払い率は大きく変わっていません、これは被害金額が少ないとか免責金額や次年度の等級影響を考えて保険を使用しないと判断をされたケースもあるからと思います。
しかし、一方で各保険会社の自動車保険約款には、必ず「保険金を支払わない場合」が記載されています。
そして、車両保険条項も例外ではなく「保険金を支払わない場合」として、複数の免責項目が設定されています。
車両盗難に関して、保険会社の保険金支払いの判断基準のひとつに、保険契約者や被保険者などの「故意」または「重大な過失」が無かったのかが挙げられます。
約款には「故意」や「重大な過失」の具体的かつ詳細な内容は記載されていませんが、車両盗難に関連する可能性として明示されているのが、保険金を受け取るべき者に保険金を取得させる目的があった場合、があります。
つまり、保険金を受け取る目的で車両を盗ませた場合です。
この行為は犯罪としての認識があるために、実行に移すにはそれなりの覚悟をもって行う様ですが、車上荒らしを装ってオーディオを外して転売し、保険金を受け取ってから再度設置するなどの行為は、重罪との意識が低く結構気軽に考えられていると感じています。
しかし、保険会社の調査能力は思っている程低くありません!
特に車上荒らしを装った、保険金の請求事件についてはかなり高い確率でほぼ阻止出来ているはずです。
余談ですが、刑事事件になっていないのは、請求者が保険契約者側であることより大きな事件や出来事にしたくない思惑が保険会社と契約者側双方にあって、形式的には結論を出していない調査中としている段階で請求者自らの意思で「保険金請求を取り下げた」事にするケースが多いからです。
但し!・・当然ですが、ペナルティとして契約の解除か次回の契約は更新しない引き受け拒絶にはなります。
その他に、所有者の管理上の瑕疵が認められる様な「重大な過失」が認定される状況で、盗難車両が事故を起こした場合、所有者にも他人に対する損害賠償の義務が発生する場合があります。
それだけではなく、車両管理上の「重大な過失」の程度によっては、車両保険が支払われない可能性も出てきます。
例えば、ドアロックをせず、エンジンをかけた状態で車から離れたなどです。
注目すべきはキーを付けた状態で盗難された「キー有り盗難」件数は、若干古いデータになりますが2019年の車両盗難件数7,143件の内1,801件が報告されています。
このドライバーの安易な行動を「重大な過失」として認定される状況が、車両保険金が支払われない事に影響する可能性が高くなります。
万が一車両が盗難された場合の対応として、車両保険は必要かも知れませんが「重大な過失」が認定されて、保険金が支払われなければ車両保険の付保も意味がありません。
時々、コンビニなどの駐車場でエンジンをかけたままの状態で無人の車を見かけることがありますが、「盗んで下さい!」と言っている状態になっている様に見えます。
盗難されてからでは遅いのです。
車両から離れる場合は、キーを抜いて施錠するのが最低限の防犯対策です。
繰り返しになりますが、車両が盗難された場合に、キーを所持しているか否かは保険金を支払う調査においては、大きなジャッジポイントのひとつになります。