対物賠償保険とはどんな保険?賠償の対象範囲はどこまで?

自動車保険の知識

|対物賠償保険は他人の車や財物に損害を与えた時の保険
対物賠償保険は、契約している自動車を運転していた時や管理上の原因によって他人の自動車や財物を壊した際に、法律上の損害賠償責任を負う範囲で1回の事故につき契約保険金額を限度に保険金を支払うという保険です。

また、保険会社が承認した場合の条件付きではありますが、解決に向けた示談や訴訟・調停等に要した費用の支払いも対象になります。

物の損害に対する保険なので、財産的な価値があるとして認められる範囲であれば、ほとんど全て対物賠償保険の対象になります。

参考までに、広義の財物とは原則として物の形が有る有体物になりますが、例えば刑法245条で有体物ではないとされる電気も財物とみなすものと規定されています。

電気以外にも、有体物では無いが経済的価値のあるものが存在しています。

対物賠償保険でいう財物とは、有体物や否かを問わず物理的に管理が可能なものであれば、直接的な損害も間接的な損害も賠償の対象として認められるということです。

但し、対物賠償保険は、契約車両が他人の財物を損壊したことで法的な損害賠償の義務を負う範囲で保険金を支払う事になっています。

つまり、
他人の財物を損壊してしまったこと、法的な賠償義務を負う事が基本的な支払要件ということです。


よって、例えば踏切の中で車両が停止してしまい、電車との衝突は無かったが鉄道会社の営業上の損害を与えたとしても、電車や踏切が壊れたなど財物の損壊はないので対物賠償保険の支払いは対象外となります。


これが、電車と衝突してしまった場合は物を損壊したことになるので、電車が壊れた損害も衝突したことによる営業上の損害、復旧するまでの将来の収益まで賠償の対象になるということです。

これなら、衝突した方がいいかも?!と不謹慎なことを考えてはいけませんが、気持ちとしては理解できるかも・・。


また、運転中に突発的に生じた意識喪失によって交通事故を起こし、他人の財物に損害を与えたとしても運転者に責任能力が認められなければ、法律上の賠償責任が無いので対物賠償保険の支払いも無いということになります。
 
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|直接損害と間接損害とは?目に見えない損害が高額になる場合も・・

直接損害とは、その事故が起きたことで発生した損害そのものをいいます。

代表的な損害としては、衝突事故が起きて相手の自動車が壊れてしまった。

また、電柱やガードレールに衝突して倒してしまった、家屋や店舗に突っ込んで建物を損壊してしまった!・・などです。


対して、
間接損害は事故がなければ得られたであろう利益や、事故によって失われた将来の利益のことをいいます。


例えば、電車の踏切に衝突したために、電車が不通になって運賃収入が減少した!または、店舗に衝突して商売が出来なくなった、トラックと衝突して積み荷が散乱し商品価値が無くなった等です。

その他にも、事故の相手車両がタクシーやトラック等の場合、営業車が稼働できなかったことによる「休車損」も発生します。

ひとつの事故で、直接損害と間接損害の両方が生じることも少なくありません。

例えば、コンビニに来て駐車する際にブレーキとアクセルを踏み間違えて、店舗に突っ込んでしまった事故など・・・。

直接損害としては、店舗の建物を損壊した事による復旧工事費用や、衝突の衝撃で壊れた陳列ケースや棚など設備の買い替え費用、または衝突によってガラスが飛散して店舗内に陳列されていた商品がガラスにまみれた為、商品として販売ができなくなった損害などが有ります。

間接損害として店舗閉鎖による、売上収入の減少や、従業員の給与を補償した場合の損害、消費期限の有る食品や生鮮食料品の廃棄による損害などがあります。

店舗の修理等で1週間程休業したとしたら、賠償総額で〇百万円の単位になり、保険会社の社内的には大口支払の申請が必要な金額になる可能性は高くなるでしょう。

対物損害の請求額で高額になった事例としては、平成6年7月神戸地裁の判決が記憶に残っています。

呉服や毛皮などを運搬していたトラックが、高速道路で前走車に追突した後、中央分離帯に乗り上げて対向車線を越えて横転してしまい炎上。

車両と積荷が焼失した事故で賠償請求額は4億円、裁判所は約2億6千万円の賠償命令の判決を下したという事例もあります。


|対物賠償保険の設定金額は無制限が最良なのか?

対物賠償保険の保険金は、金額の設定を選択できる様になっています。

保険会社により多少設定金額は異なりますが、多くの保険会社は「500万円・1000万円・2000万円・3000万円・5000万円・それ以上は無制限」という設定が一般的になっています。


最近の保険加入状況としては、対物賠償保険を無制限に設定する傾向にありますが、それでも依然として保険金額に制限を設けた契約内容は少なくありません。


確かに、平成6年の事故の様な、2億6千万円という高額賠償は極端かも知れませんが、数千万円レベルの損害が生じる交通事故は一定の割合で発生しています。

損害賠償額が明らかに対物賠償保険の契約した保険金額を超えてしまうと、保険会社の当事者性が失われるので、示談代行サービスも受けられなくなります。

つまり、損害額を特定する事を含めて相手方との交渉を自分で行わなければなりません。

仮に、対物賠償保険に1,000万円で加入していた契約者が、チョットしたはずみで鉄道の踏切を壊した場合でも、踏切の復旧工事費用で数百万円、乗客の移送に係る費用や復旧に至るまでの営業上の損害として数千万円は普通の金額です。

総損害で約3,000万円になった場合、2、000万円程は自己負担ということになります。


対物賠償保険の付保額を明らかに超えているので、 保険会社は契約者に1,000万円の保険金を支払って対応は終了することになります。

保険料は年間で1,000円位の差で大きく変わらないと思いますので、無制限を選択する事を勧めたい。


|対物賠償保険に無制限で加入しても請求額全額を支払えない場合ある!

対物賠償保険に無制限で加入した契約者が、「これで相手方から要求された賠償額は全額支払ってもらえるから安心!」と思われているかも知れません。

しかし、必ずしも相手から要求される賠償額を全て支払えるわけではありません。

全ての物損害の
賠償額は基本的に「時価額」が限度という賠償上のルールがあります。

自動車でいうなら時価額は交通事故が発生した時を基準として、被害車両と同一の車種で年式や型式、使用状態や走行距離などが同程度であることをもとにして、「中古車市場において取得できる価格によって定める」とされています。


但し、時価額を超えて修理を希望される場合は、特約を付帯していることで対応が可能になる場合があります。

年式がかなり古いクラシックカーについては特約を使用しても修理が困難な場合が多いですが、一部ではその希少性などを認めた判決が出されたケースもあります。


しかし、単に年式が古いというだけで、その希少性を認めているわけではありません。

また、内外装に拘って相応の費用をかけてカスタマイズした車両であっても、基本的には中古車市場に出回っている一般的な同一車両の時価が賠償の上限になります。

なお、事故車両から後付されたパーツを取り外して使用するのは問題ありません。

自動車以外の物損害に対しては、使用年数に対して減価償却した残存価格までが一般的な賠償範囲ということになります。

対物賠償保険は、無制限の付保額で加入される事を勧めたい!そして、効果的な特約を付帯することで更にきめ細かく対物賠償保険をカバーすることが可能になります。

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