後遺障害に該当した場合に支払われる賠償項目は?

対人賠償

|後遺障害の等級に該当した場合に何が支払われるの?
後遺障害の等級が第1級から第14級のいずれかに該当した場合、「逸失利益」「後遺障害慰謝料」を請求することが出来ます。

なお、後遺障害別表1の第1級と第2級に該当した場合と、別表2の第1級~第3級に該当した場合は、更に「介護料」の請求も可能です。


また、これも個別事情で判断される事にはなりますが、後遺障害の等級や障害を負った部位によっては「自動車改造費用」「住居改造費用」の請求も可能になります。


更に障害の状況等に応じて、将来の義足や義手、義眼、車椅子等の購入や修繕費用等、器具や装具の耐用年数に従って、平均余命期間の範囲内で認定される場合もあります。


この場合は、逸失利益の算出と同様に「中間利息」が控除されるのが一般的です。


|ケガの休業損害とは違う後遺障害の「逸失利益」とは?

交通事故でケガをしたことによって、治療や通院などで時間を要したり、症状や痛み等から仕事が出来なかったり、会社を休業した等で収入が減少した部分ついては「休業損害」が支払われます。

休業損害は休んだことによって生じた過去の損害になります。

「休業損害」に対して「逸失利益」は、後遺障害が残ったことで今後の仕事に支障をきたし減収するであろう状況を見越した、将来の損害を補償するための項目です。

この「逸失利益」については、多くの問題や争点を抱えております。


例えば、若年有職者と無職の学生の損害が、基本や原則に則った計算をすると損害額において逆転する現象が起きる可能性があること。


他には、令和2年4月に改正民法が施行されて、中間利息控除の利率が変わりましたが、それでも社会情勢との乖離は埋まったとはいえないかも知れません。


逸失利益の認定についても、「差額説」と「労働能力喪失説」では認定が異なる場合があり、実務上や立証性などで争点となるケースがあります。


|傷害の慰謝料の他に「後遺障害慰謝料」もあります!
慰謝料といえば、事故でケガをして治療のために通院した場合の、心的損害を填補する傷害慰謝料が聞き慣れた身近な損害になります。


病院で治療を受けさせる状況を生じさせた事や、通院することによる時間的なロスを含めて、交通事故で痛い思いをさせて、ごめんなさい的な謝罪料の位置づけになります。


「後遺障害慰謝料」も同様に、事故によって障害が残ってしまった事に対する謝罪の意味合いを持った損害賠償項目になります。


後遺障害の等級に該当した被害者は、傷害慰謝料と該当等級に応じた「後遺障害慰謝料」の2項目の慰謝料を受領するという事です。

|後遺障害における慰謝料の請求について
交通事故によって後遺障害が残ってしまった場合の、精神的な苦痛に対する賠償が「後遺障害慰謝料」になります。

精神的な苦痛に対する評価は、個人によっても後遺障害の程度や部位、器質的および機能的な障害等の種類によっても大きく違ってきます。


被害者の心的要因に関わる部分なので、個別に客観的な判定をすることは不可能です。


そこで、後遺障害に対しての慰謝料については、事例の蓄積等によって一定の基準が設けられています。

この後遺障害における慰謝料の算定基準は、傷害の慰謝料と同様に自賠責保険基準、各損害保険会社の任意保険基準、弁護士(裁判)基準のいずれかで認定されるのが一般的です。

|自賠責保険における基準で支払われると・・
自賠責保険における後遺障害の慰謝料は、後遺障害の認定等級に応じて決められています。


一例として・・

後遺障害等級  自賠責認定額     (内)慰謝料
第14級          75万円       32万円
第12級         224万円       93万円
第 8級         819万円      324万円
第 4級        1889万円      712万円
第 1級        3000万円     1100万円

別表1と別表2の1級~3級に該当した被害者に被扶養者がいる場合は慰謝料額が一定額増額され、別表1に該当する場合は初期費用として250~500万円が増額されます。


基本となる金額についての詳細は、自賠責保険基準に関する後遺障害等級認定額で確認頂きたい。

|損害保険会社の任意保険基準では

任意保険の基準については、損保協会による統一された基準が過去にはありました。

現在は保険の完全自由化が認められ、各損害保険会社によって慰謝料の支払い基準が異なっているのですが・・、知っている限りにおいては各社の認定基準はほとんど変わらない金額になっています。


賠償の認定額については、各保険会社の慰謝料算定基準を確認頂いた方がいいでしょう!としかいえないのですが、損害程度が同じなのに対応する保険会社によって賠償額に差が付くのは公平性の部分では問題あるということになるので、ほぼであっても同額で良しとするのが妥当なのでしょう。


各社が蓄積して来た統計資料から慰謝料を算出しているので根拠や基準は現状では開示されていません。


実態としては、自賠責保険基準よりも高額で、弁護士(裁判)基準よりは低い金額になると理解頂いていいと思います。

|弁護士(裁判)基準もあります!

裁判で争う場合や、弁護士に解決を依頼した場合に適用される基準です。

日弁連交通事故相談センター東京支部編の「損害賠償額算定基準」(赤本)や、日弁連交通事故センター編の「交通事故損害額算定基準」(青本)で確認すると、例えば後遺障害第12級は(赤本)では290万円、(青本)では250万円~300万円と明記されていますので、比較的に確認は容易と思います。

|その他ADRにも基準はあるのか?

基準とは言えませんが、その他として「交通事故紛争処理センター」など裁判外紛争解決機関(ADR)を活用して、慰謝料を含めた示談をあっ旋してもらう方法があります。

ADRについては慰謝料等の基準は設定されていませんし、基本的には強制力が及ばない機関がほとんどなので合意内容について一律とはなりません。


しかし、裁判基準より若干低くなるケースが多いものの、それでも任意保険基準より高く合意に至っている様です。


事故状況や後遺障害の程度によっては、弁護士(裁判)基準に近い認定の示談になるケースもあります。


|慰謝料や逸失履歴の他にも請求可能な項目はあるのか?
高い等級が認定された場合や、被害者の生活状況等を個別に判断して認定される損害項目があります。


認定された等級が高くない場合でも、障害の状態や生活環境に合わせて請求が可能な損害もあります。

|認定された等級によって「介護料」の請求が可能
自賠責保険の後遺障害等級は、労災における後遺障害の等級を準用していますが、労災では自賠責保険の様に別表1と別表2の区分はありません。

別表による区分は、自賠責保険が介護を要するレベルの後遺障害に対して、保険金額を増額する目的で設定されたものです。


よって、自賠責保険の基準では「介護料」の名目で保険金を認定する規定は設けられていませんが、任意保険基準や弁護士(裁判)基準では認められています。

「介護料」とは、介護が必要な後遺障害が確定した事で生じる、付添い看護料や諸雑費などをいいます。

任意保険基準で算定する介護料は「
年間介護料✕中間利息控除(介護期間に対応のライプニッツ係数)」で計算されます。

介護料は、概ね別表1の第1級で月額13万円前後、別表1の第2級や別表2の第1級~第3級に該当した場合で、月額6万円程度になります。


弁護士(裁判)基準では、職業付添人は実費、近親者付添は8、000円/日が目安とされており、被害者の態様や具体的な看護状況により増減する場合があるという事になります。

|障害の程度などによっては「住居改造費用」「自動車改造費用」の請求も可能
「住居改造費用」は後遺障害の程度に応じて、必要かつ妥当な範囲で損害として認定されることになります。


但し、請求した改造費の全額が認定されるかは別問題で、まさに個別事情によって判断されます。


例えば、改造することで同居家族も便益を受ける場合や、家屋の耐用年数が延びることで資産価値に影響が出て来る等の状況によっては減額される事もあります。

また、自宅の改造が構造上困難である場合や適さない状態等によって、新たに介護用住宅を建築する場合でも基本的には通常の新築費用と介護用住宅費用の差額を認定することになります。


実例としては、下肢障害によって廊下やトイレ、風呂などに手すりを取り付けるや、車椅子を使用する障害を負った場合はバリアフリーに改造する等が多い。


「自動車改造費用」も住居改造費用と同様に、改造する必要性や妥当な範囲で損害として認められます。


交通の不便な地方で、一人で通院しなければならない環境にある場合や、車椅子のままでの移動が必要な状況等では認められる可能性は高くなると思います。


現に使用している車両の改造が困難な場合は、新たに介護車両を購入する費用を認める事になるのですが、この場合も購入費用全額ではなく介護用車両と一般車両の差額が賠償の対象になります。

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