後遺障害等級の申請に関して知っておくべき手順

対人賠償

|症状固定が確定した次は後遺障害診断書を作成します!
ケガの受傷内容や症状などによっては、治療を継続しても明らかな回復や改善が見込めないと医師が判断した時点で、症状が固定された事になります。

治療終了により症状が固定された場合は、残存した障害が後遺障害の等級に該当するのか否か、該当する場合には等級を確定させなければなりません。

後遺障害の等級を確定させるための手続きは、医師に自賠責帳票である「後遺障害診断書」を作成してもらうことから始まります。

後遺障害診断書の帳票は、加害者側の保険会社が一括払い対応している場合は保険会社から直接病院へ送付してもらうか、被害者宛に送付か手交してもらい被害者自身で医師に作成依頼をするのが一般的です。

被害者請求の場合は、加害者が加入している自賠責保険会社から送付してもらい、被害者自身で医師に作成を依頼してもらいます。

症状固定となった最終診断日や医師に依頼してから、通常は約2週間前後で作成してもらえるはずです。

作成された後遺障害診断書は、病院から直接保険会社に送付してもらう場合も有りますが、ほとんどは被害者が病院窓口で作成料を支払って受け取ってもらっています。

基本的には、受領した「後遺障害診断書」の内容を被害者本人が確認してから、保険会社に提出するのを推奨しています。

その理由として、被害者が症状固定に納得して後遺障害の等級申請をすることを自らの意思で行うことを示してもらう意味もありますし、後遺障害診断書の記載内容について確認くらいはして欲しいからです。

被害者の症状や訴えなどが、きちんと記載されているのかを確認する必要もあるのです。

後遺障害診断書は、医師が診察をした結果として客観的な所見により作成されるはずなのですが、医師個人の見解や裁量の範囲で作成される部分もあるので、作成内容は医師によって程度の差はありますが違いや濃淡は出てきます!

後遺障害の等級に該当するのが妥当である!と読み取れる様な記載をされた診断書もあれば、これは非該当でしょう!と判断されていると思われる記載内容も有ります。

また、後遺障害の認定等級や損害賠償額などに納得されず、訴訟に発展した場合は「後遺障害診断書」も立証や証拠書類として採用されることになります。

保険会社としては、訴訟の迅速な審理や終結を考えると後遺障害診断書の記載内容について、遡って争点にはしたくない思いもあります。

つまり、後遺障害診断書の内容については、被害者においても確認してから保険会社に提出していますよね!と訴訟になった場合には言いたいのです。

後遺障害診断書の作成料金は、病院によって多少の違いは有りますが概ね約5,000円~10,000円位が相場になります。

この作成料金ですが、後遺障害の等級に該当した場合は損害の立証資料の費用として保険金で支払うことが可能になりますが、非該当の場合は損害の立証資料にはならないので後遺障害診断書料は原則として被害者負担になるのが普通です。



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|後遺障害診断書を作成する医師によって認定が左右されるか?!

時には被害者が「後遺障害診断書の作成は医師に任せているが、性格が細やかではない感じの医師なので、抜け落ちている内容が有るかも知れないと不安があるのですが・・」と心配されるケースもあります。

確かに、被害者が不安に思う状況も理解できなくは有りませんが、必要以上に心配することもありません。

多くの医師は必要かつ十分な診断をして、医師免許を有する専門家として診断書を作成します。

更に、一次的には損保担当者が等級申請書類を準備する際にチェックしますので、単純な不備や不足部分のほとんどはこの段階で発見しています。

そして、不備や不足部分について補記等を依頼した場合は、大抵は快く応じてもらえています。

基本的で形式的な不備等で最も多いのは、症状固定日の日付に関しての項目になるのかも知れません。

症状固定日は傷害に関する賠償の終期を意味し、後遺障害の損害の起算日にあたりますので、「後遺障害診断書」に記載される項目の中でも重要な部分のひとつになります。

不備の例として、固定日の記載漏れが一番多いのですが、稀に症状固定日の欄に「不明」と記載されていたり、最終診断書や最終の診療報酬明細書以前の日付が固定日欄に記載されたり、中には1ヶ月後の月日を記載し「予定」と書かれていたケースも有りました。

症状固定日が明確でなければ、損害賠償額の積算が出来ません。

いつまでが傷害の損害として、いつからが後遺障害の損害となるのか?傷害の終期と後遺障害の始期は症状固定日で分けられるからです。

|納得できる治療や後遺障害の適正な評価を得るために
被害者にとって不安や心配の多くは、診察や治療の過程の中で患者の痛みなどの訴えに対し「心配ない!気持ちの問題だ!気にし過ぎているからだ!」などと耳を貸さない状況や、医師の一方的な所見や治療を押し付けられている様に感じながら受診することだと思います。

その場合は、早い時期に転医を検討すべきかも知れません。

将来において後遺障害の等級申請手続きをする可能性を考えたら、独断専行型と言える様な医師個人の資質によっては、診断書の作成に時間を要したり作成に至るプロセスが大変になったりする可能性は高くなると思います。

そして、被害者が後遺障害診断書作成の段階になって最も心配するのは、診断書の単純な記載不備や不足では無く、残存した症状について正当に評価してもらえる様に作成されるのだろうか?!の一点に尽きるのかも知れません。


不安を抱えながら治療を継続するのは、症状改善に影響があるかも知れない心的な効果の面でも転医を勧めることになるでしょう。

納得感の締め括りとして、被害者は医師が作成された「後遺障害診断書」の内容を確認しておく必要があるのです。

確認した結果によっては被害者が後遺障害診断書の補足や訂正、修正の依頼や進言では無く、記載されている内容について医師に質問や確認するのはあり得る範囲です。

損保担当者は後遺障害の等級申請に関しての経験や知識から、後遺障害診断書の記載ポイントを知っています。

例えば、残存している症状について医学的な見地からの説明がなされているか、後遺障害に至るまでの治療と症状に関しての経緯が記載されているか等々がありますが、損保担当者が手続き準備の段階で、例え診断書自体に補記や修正が必要かも・・と気が付いたとしても、医師への照会や、補記訂正を依頼する事はほとんど有りません。

確認レベルの問い合わせをする場合はありますが・・。

医師の立場に立って考えると医療に関して教育を受けた損保担当者であっても、ネット検索で知識を得た被害者であっても、医療に関しては素人であることに変わりはなく専門的知識を持った医師ではありません。

専門家ではない素人が、医師が記入した診断書の内容について、どんなに注意して失礼の無い様に心掛けたとしても、補足や修正を依頼する事自体が失礼や非礼にあたるという考え方もあります。

更に、形式的な失礼や非礼だけでは無くそれ以上に、付け焼刃に近い知識で医師が記入した診断書の内容をチェックして、補足や修正が必要なのかを判断すること自体に知識的なレベルで無理があります。

何かの本やネット検索で知識を仕入れて、的外れの修正や補記を依頼し、徒に無駄な時間を費やし、医師の反感を買う様な行動は避けるべきです。

そして、保険会社の立場的には、特定の事案で医師および医療機関に対して気分を害する様な対応することは当該事案に限らず、今後や他の被害者の事案について協力が得られない状況や、後々の業務に支障が生じるかも知れないとの不安もあります。

地域の最前線に構えている損保の事故処理センターは、地域の医療機関と円滑な関係を維持したいと思うのは、ある意味当然なのです。

そして、医療機関側にとっても地域の損保と事を構える事は望んでいません。

それでは、診断書の記載内容について補記や修正が必要な場合はどうするのでしょうか?

答えは、後遺障害の等級認定をする「損害保険料率算出機構 自賠責保険調査事務所」(以下「損保料率機構」)が補記や修正に止まらず、医療照会文や質問を損保経由で実施して診断書の精度や客観的な信憑性を高めることをしています。

損保担当者も、後遺障害申請書類一式を送り込む際に、不足しているかも知れないと気がついた情報は補記や直接電話等で調査事務所の担当者と協議を実施しています。

つまり、後遺障害の等級認定は医師が作成した「後遺障害診断書」だけで認定はされていないという事になります。

補足や修正が必要な診断書は、「損害料率機構」独自の調査(新たな画像の取り付けや、文書照会、数値等の補足照会・・等々)によって補記や修正、追加等が保険会社経由で実施されるので保険会社は調査内容等を知ることが出来ますし、医療機関も「損保料率機構」からの照会であることを理解して回答してくれます。

損保担当者は、後遺障害診断書の内容について、精査をし補記や修正依頼も「損保料率機構」の名で実施される事も知っているので、「後遺障害診断書」の記載内容について質問や、不備の是正、照会等の依頼は後遺障害診断書を受け付た段階では基本的には実施していないのです。

しかし、認定手続きにおいてはほぼ適正な評価がなされる手順や状況になっていると思っています。

保険会社が主導した一括払いによる手続きでも、被害者請求における手続きでも認定される結果や内容には全く違いは無いということになります。

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