ケガの損害賠償を請求するための基本と自賠責保険基準!

対人賠償

|交通事故でケガや被った損害について立証の義務があります!
交通事故の被害にあってケガをした場合、賠償金として支払われる項目や金額は、何を基準にどの様にして決められるのか?


基本的な疑問ですが、そう言われてみると詳細は知らなかった!と気が付く人が多いと思います。

交通事故によって、被害者が被った損害は被害者側が立証して、加害者に請求するのが損害賠償請求の権利を行使する本来の対応手順です。


加害者側から「これも損害ですか?」「この損害は〇〇円を支払えばいいですか?」と被害者に働きかけることはありません。


どの様な種類の損害をどの程度被ったのか?
損害の範囲や程度、そして金額を証明する責任は請求する側、つまり被害者側にあるのです。

被害者でなければ、事故によりどんな損害が生じたのか、被った損害の内容そして金額について加害者では分からないのが当然なのです。

よって、被害者はどの様な損害をどの程度被ってその損害額がいくらなのかを根拠をもって、加害者に提示して請求することになります。

これが、損害賠償請求権の行使になります。


例えば街を歩いていて、すれ違いざまに肩が当たって肩を痛めた場合、「肩が当たって痛い思いをしたから金払え」は捉え方によっては、強要や脅迫になる可能性があります。

これでは、損害を立証したことにはなりません。

しかし、これが「肩が当たって痛かったので、病院で診察したらケガをしていた」「診察料と治療費で〇〇円支払って領収書もある」


更に「病院行くのに交通費も支出した」
「当日は仕事も休んだので休業損害も発生した」、よって「被った損害の総額〇〇円を払って下さい!」

例なので、相当因果関係などの詳細な諸条件を考慮していない単純な設定ですが、きちんと損害の項目と金額や計算等の損害根拠を明示すると、損害賠償請求権の行使になるのです。

しかし、その請求額が妥当なのか?休業損害の計算は正確なの?

賠償請求をされた加害者側にしてみたら請求額に納得が行かない場合、または感情や経済状況などから拒否する事態も起こり得ます。

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|損害賠償の協議を進めるための客観的な基準とは?

損害賠償に関して、請求手順や金額算定の基準を設定することによって立証の煩雑さを一定量緩和して、間接損害や慰謝料など目に見えない損害についても、客観的に数字化することが可能になります。

加害者と被害者の双方が、一定レベルで納得できる範囲で賠償協議を進めること出来ることになります。

賠償基準がある事によって、被害者の請求額や損害として認める範囲等も明確になることで、損害内容を客観的に確定されると被害者でなくても加害者側が積算しても賠償額は基本的には同じになる!?であろう。

明確な賠償基準があるという事が前提になり、加害者側の保険会社が賠償案を積算して被害者に提示できることが可能になっています。


他の基準と比較して、正確かつ正当なのか?妥当性は?・・と問題があるとの意見はここでは別にして、社会的にも賠償協議の一般的な手順として認識されているのが現状と思っています。


保険会社は積算の根拠として、各保険会社が持っているデーターベースで作成された任意保険の基準と、公的かつ開示されている誰でも積算できる「自動車損害賠償責任保険(以下自賠責保険)基準」とを比較して高くなる方の基準で積算しているはずです。

|自賠責保険の基準については会外秘の「規定集」があります!

保険会社の担当者は、自賠責保険金の基準に沿った積算する為に「自動車損害賠償責任保険 損害調査関係規定集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」という、かなり量感のある規定集を確認しながらの作業になります。

この規定集は3分冊で構成されており積算方法や認定範囲、基準等の規定についてかなり詳細に記述されています。

そして、規定集は自賠責保険の算定会から各保険会社に配布されて、さらに人身対応の担当者は個人で一組の規定集を抱えて、常に内容を確認しながら賠償案を作成します。

この規定集の取り扱いは厳格な社外秘とされており、部外者には開示もコピーの提供も禁じられています。


当ブログで自賠責保険基準に関わる記事を作成する際に最も注意を要する部分のひとつということになります。

会外秘ですので、根幹に触れる説明や引用は出来ませんが、ギリギリのラインでの説明を目指したいとは思っています。

それにしても、当規定集による積算の基準や認定の範囲については、微に入り細に入り非常に細やかに規定されています。

自賠責保険基準での示談が妥当と判断したにも関わらず、些細な解釈等の違いから数百円単位で自賠責保険基準を超えてしまう場合も時折ですが起こります。

自賠責保険基準に沿って支払われる賠償金であれば、任意保険を使用しないので翌年度の等級ダウンにはなりませんが、自賠責の基準を超えた場合は任意保険で支払うことになります・・。

同じ事故で、対物賠償保険等他の担保で任意保険を使用している場合は、既に3等級ダウンが確定していますので問題になりませんが、人身事故のみで他に損害が生じなかった場合は任意保険を使用しない事もあります。

そうなると、加害者側である契約者は自賠責保険基準の範囲で示談成立を望んでいます。

それが、自賠責基準を僅かでも超えて、数千円や数百円を任意保険で支払う状況になった場合、さすがに契約者は怒ります・・、しかし本来は保険会社の任意保険を使用することを前提にした示談代行なのです。

しかし、そうは言っても説明不足や了承を取り付けていなかった対応であったとして契約者への謝罪や説明、善処や対応に追われることになります。

最終的には自賠責保険基準をはみ出た分を契約者に負担頂き、等級ダウンを免れる方策を講じる対応をとる場合もあります。

|損保の対人担当者が避けたいのは「過少示談」!

今度は逆に、自賠責保険基準を下回る金額での示談は過少示談になります。

厳密に言うと、自賠法違反です。

保険会社の人身担当者が過少積算に気が付かず、示談を成立させシステムとして保険会社が一時立替払いをした自賠責保険金を回収するため、損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所に書類を送り込むと、再示談の指示とともに一件書類が戻されてきます。


あらためて示談をやり直す事になりますが、被害者側にしてみたら賠償金額が増えるために、再示談の交渉が難航することはほとんどありません。

担当者が周囲の社員に対して、少し恥ずかしい思いをすることにはなりますが・・。


保険会社にして見れば、示談した支払金額が規定より少なかったぞ!「良し!よくやった!」にはなりません。

過少示談の件数が多い保険会社は、損保料率算出機構から「お叱り」を受けることになるのです。

それだけ、自賠責保険基準の示談案は、規定通りの積算が代行する保険会社に求められているという事になります。

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車損害賠償保障法(自賠法)を根拠に制定された保険です。

被害者救済を目的とした、国土交通省管轄の保険です。

自賠責保険の要となっている自賠法3条で免責(保険が適用されず支払われない)条件として、「注意を怠らなかつたこと」「被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと」「自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたこと」を証明できた場合と規定しています。

この証明はかなりハードルが高く、被害者寄りの法律といわれる所以になっています。

|弁護士は通称「赤本」と「青本」の基準で賠償案を積算

その他には、被害者側の代理人として弁護士が介入してくると弁護士基準が使われます。

広告などで「交通事故に強い!〇〇法律事務所」や「交通事故の賠償は実績のある〇〇弁護士・・」等を目や耳にする機会があると思いますが、弁護士が算定する賠償請求にも根拠が必要なのは他の基準と同じです。

裁判外で弁護士個人の能力が影響する余地は、ほとんど無いと言ってもいいかと思います。

請求が交渉や協議から訴訟に発展した事案も数十件程傍聴しましたが、弁護士個人の力量や能力によって和解や判決が影響を受けたと思う様な裁判を、個人的には経験した事はありませんでした。

弁護士は、日弁連交通事故相談センター東京支部発行の
「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準通称「赤本」と日弁連交通事故相談センター本部発行の「交通事故損害額算定基準-実務運用と解説」通称「青本」を基準に賠償請求額を積算しますので、被害者の特性が同じであれば弁護士によって請求額が大きく変わるということは、ほとんど無いといっていいでしょう。

弁護士が積算の根拠とされる「赤本」は、簡単に言うと東京地裁の実務を見据えた場合の基準として使用され、適用範囲を東京地裁以外の全国の裁判所としているのが「青本」になります。

慰謝料等の基準にも若干の違いがあります。

交通事故の賠償額を算定するには、必ず基準や積算の根拠が必要になるので、単にケガをしたので自賠責保険基準でもいいので賠償して下さい!との申し出があってもダメということです。

事故によってケガをしたことを公的に証明されていることが大前提になります。



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