ケガによって生じた損害の請求事例!保険会社はどうする?

保険会社の対応

|ケガによって生じた損害に関連した賠償請求の事例
件数は多くはありませんが、一定の割合で起きている賠償の請求事例です。

保険会社の基本的な対応や認定を含めて、認める?認めない?の判断や根拠を知って欲しい。

事故状況や被害者特性などによって損害は複数項目にわたる場合もありますが、基本の認定根拠は大きくは変わりません。


事例から、損害認定に関する基準や判断は妥当性と因果関係にあることが理解頂けると思います。


|遠隔地で事故に遭って、家族が駆け付けた費用
遠隔地で子供や親族が事故にあって、近親者(賠償上の遺族請求権者の範囲)が駆け付ける交通費や宿泊費は状況によっては認められます。

入院する程の重傷を負った状態や、入院等でやむを得ない事情等で、重篤な状態の場合は2名分まで認められるのが普通です。


不幸にして既に、被害者が死亡している時は駆け付け費用は葬儀費の一部として認定されます。


逆に、軽傷で通院レベルの場合は認められないという事になります。


被害者のケガの状態や家族が駆け付ける蓋然性などで判断されます。


これが、人身傷害保険ですと保険会社によって若干の違いはありますが、補償の対象者が死亡もしくは3日以上入院した場合は、家族の掛け付け費用が支払われます。

|出張先や旅行先などで事故があった時の帰宅旅費は?
事故発生の有無に関わらず、帰宅するのは当初から予定している当然の費用なので認定は出来ません。

但し、ケガの状態から交通手段を変更せざるを得ない場合は、交通費の差額分を認定することは可能です。


|講習会や稽古事のキャンセルや欠席した場合の費用損害

事故により受講出来なかった、講習会やピアノレッスン、お花等の習い事の費用の認定は困難との見解が主流ではあります。

自賠責保険の規定に、任意保険も同調している傾向があります。


例えば、コンサートのチケットを購入済みの状況や、費用を前倒しで支払い済み講習会等のキャンセル料が発生する契約の場合は、費用上の実損害が現に発生しているので一概には認定不可とは言えない可能性があります。


但し、ここでもキャンセルが妥当なのか?です。


症状や医師の指示で入院状態であった、また下肢の骨折等で大勢の観客の中に入ることが無理なためなど、明確にキャンセルが妥当と判断できる場合は、キャンセル費用の損害は認める事になるでしょう。


しかし、軽傷ですが気分的に行く気になれない等は因果関係で認められるか否か?となると問題。


キャンセルの時期によっては、全額では無く一部返金があるのか?


やはり個別に判断することになると思いますが、状態や状況によっては損害として一部であったり、割合や差額の認定を検討することもあるでしょうが、自己判断でのキャンセルは認められない可能性は高くなります。


また、交通事故のために旅行に行けなくなった場合、そのキャンセル料も賠償の範囲に含まれるという判例もあり、裁判所はキャンセル料について相当因果関係を認める傾向にある様です。


実務的にも、キャンセル料は賠償義務の範囲として定着しつつあるのかも知れません。

起こり得る
損害ということですが、心的な影響で参加できないや行動する気持ちになれない等は保険会社にとって認めることに抵抗が大きい損害のひとつかも知れません。

稽古事や習い事、講習会、コンサート等イベントのキャンセルについても相当因果関係のある損害として認定するには、ケガの状態や程度、キャンセルの内容や時期等を確認して個別の対応や判断が必要になると思います。

全面的な否定は困難な傾向にある様ですが、差額認定や一部の認定が落としどころかも・・。


|数年に1~2件位の請求事案ですが、実例です!

保険会社が認定するのか否か?

訴訟にした場合などは、どの様な結果が出るのかは被害者の状況や特性によって不明な部分はありますが、基本的な認定の基準や考え方になります。


|医師への謝礼や輸血の謝礼

交通事故による治療のために輸血が必要な状態の被害者家族が、宗教上の理由から輸血を拒否した事例もあったり、一度輸血を受けた人は献血出来ない等の規制もあったり、輸血に関しては非常にデリケートな部分もあるのが現状の様です。

ここでは、単に交通事故の手術等で知人や友人から血液の提供を受け、輸血した場合について簡単明瞭な範囲の内容にしています。


輸血の場合は、謝礼として献血者1人1回につき、5,000円を目途に認定されています。


治療してもらった医師等への謝礼として差し上げた費用を、加害者へ損害賠償請求が出来るか否かですが、保険会社としては損害賠償には含まれないと答えたいところです。


重篤なケガが医師の的確な治療により、一命を取りとめたなどの事情があった場合、被害者が医師にお礼をしたいという気持ちは理解出来ます。


しかし、医師等への謝礼は、感謝等の気持ちの部分であり謝礼分を加害者に損害として賠償請求するのは如何なものかと思うのです。


加害者に請求した事を知ったら、受け取った医師にしてみれば、謝礼は損害として判断されているのか?という思いや、結果的に謝礼は加害者からもらった事になるとも考えられます?!


理屈の上では、的確な治療と早期の回復の間に、因果関係が認められた場合には、医師への謝礼も損害賠償の一部として認められるという考えが成立することもあるのかも知れません。


裁判所においても、医師への謝礼は数千円から数万円程度の社会通念上妥当な金額であることを前提に、主流ではありませんが損害の一部として認めた判決もあります。


しかし、逆に裁判で認められなかった例もあります。


その理由として、やはり「そもそも謝礼とは、被害者が感謝の気持ちを表現するものであり、その気持ちを損害賠償として加害者に請求するのはおかしい」。


また、「公的機関の医師が謝礼を受け取ることは、賄賂を受け取る事と同様と解する、それを認めるのはおかしい」など必ずしも認められるとは限りません。


担当医師の的確な治療により一命を取り留めることができた場合や、医師の尽力によりケガが早く完治した場合などは、損害の一部として謝礼が認められる可能性は否定はしません。


保険会社の立場としては、客観的に医師の尽力等で治療期間が通常より短縮されたことが立証されたり、謝礼の必要性が根拠をもって主張されれば、全額とはいかなくても謝礼の一部金を認定する方向での検討は可能なのかも知れません。


|治療のために帰郷する場合の旅費

受傷後に、帰郷して治療を受ける場合の旅費は、状況によっての個別的な判断となります。

例えば、学生が事故でケガをしたために、一人で生活するのが困難だったり看護上の問題等で実家の方が治療に専念できる環境が確保できる事や、医師の同意や推奨により帰郷する場合は相当因果関係ありとして認定されると解しています。


一方でケガが軽度、或いは医師の同意が得られない場合は、認定はほぼ不可となるでしょう。

|観光旅行や結婚式、披露宴のキャンセル料が発生した場合

観光旅行のキャンセル料は、症状やケガの程度によっては被害者本人分が認められます。

軽傷だった場合は因果関係の部分で認定は困難になると思います。


結婚式や新婚旅行は、2名分は認められますので領収書等の損害を証明する書類などが必要になりますが、キャンセル費用の請求は可能です。


この場合も、症状やケガの状態によっては否定される事はあります。


交通事故の被害者が事故で入院等を余儀なくされて、結婚式をキャンセルした場合は、損害賠償の請求することになるでしょう。


この場合には、色々な項目の請求が可能になります。


入院
費や治療費、慰謝料の他にも、結婚式の式場の費用から結婚式代金、衣裳代、等々結婚式に関わるすべての費用についての請求です。


損害賠償の請求の際には、結婚式場や旅行会社のキャンセル料に対する領収書が必要になります。


すでに料金が支払い済みでキャンセル料と相殺する場合には、以前に発行された領収書と、キャンセル料についての明細書を発行してもらうことが必要になります。


また、結婚式場等と取り交わした契約書のキャンセルに関する「約款」等を準備頂く場合もあります。

キャンセルは可能でもキャンセル料が発生するもの、キャンセルは可能でキャンセル料金も発生しないもの、更にキャンセル自体ができないものの確認も必要になります。

結婚式場側で、事情を理解してくれて後日、結婚式をあげることの条件でキャンセル料も斟酌してもらえる場合もあります。


当事者の努力によってキャンセル料の実損害が抑えられたとしても、実損害以外の努力部分は賠償の対象にはなりません。


結婚式をキャンセルしたことに対して固有の慰謝料は、結婚式関連の費用や旅行代金のキャンセル料を支払っていることで、保険会社は拒否する可能性は高い。


最も大きな理由として、取りやめになったのではなく、延期であり後日実施する事が可能だからです。

とは言っても、この日の為に、時間をかけて準備してきた結婚式をキャンセルせざるを得ない状況は精神的にも辛いものかもしれません。


交通事故により人生の重大なセレモニーが延期せざるを得なくなった状況には、保険会社も一定の理解は示すと思いますので、交渉の余地はあります。


最も保険会社の了承が取り付けやすいのは、ケガによる慰謝料に上乗せした金額で示談することかも知れません。

|更に超レアな請求事例になります!

とは言っても、起こり得る状況の損害と思います。

|学生や学童が留年した場合の損害

原則として事故が原因で、登校日数等が不足して留年した場合は、1年間の授業料に相当する費用が認められるのが基本にあります。

問題は、どのレベルまで交通事故のケガによって生じた損害なのか?です。


単純明快に、医学的な根拠や医師からの指示による絶対的な登校日数不足の場合や、重傷で入院していた為に試験を受けられず単位を落とした等は、因果関係が明らかなので学費の賠償は充分に可能です。


しかし、試験は受けることができたが、成績が悪く単位をもらえなかった。


これは骨折で入院していた為に十分な勉強が出来なかったとなると、因果関係に問題が出て来ます。


なぜなら、病院のベッドで寝ながらでも勉強は可能だったかもしれないからです。


症状が酷く、痛みがあった為に集中出来なかった等の理由があるかも知れませんが、やはり最終的には医師への照会結果を踏まえて、個別に判断をすることになるのでしょう。


|身体切断部分の火葬費用

事故により、治療行為の一環として下肢や上肢の一部を切断した場合の火葬場等の使用料は、当然に認められます。

通常は医療機関側で処理されるもので、治療関係費として認定されます。


|事故が原因で早産した嬰児と胎児の損害

交通事故では嬰児を独立した固有の被害者と認め、その損害を認定します。

事故が原因で早産した場合でも、戸籍上の出生届が間に合わないのが普通です。


医師の証明が必要になりますが、それで対応が可能になります。


保育器の使用料や慰謝料が支払われます。


また、不幸にして死亡が確認された場合は、成人と同様に死亡事故として対応します。


被害者が胎児だった場合の扱いですが、交通事故の慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求の位置づけになるため、不法行為においては「生まれる前の胎児は既に生まれたものと看做す」(民法721条)と規定されています。


胎児であっても、事故による損害賠償の主体として認められていますが、胎児が生存して出生してくることが条件になります。


生きて生まれて来なかった場合は権利の主体にはなれない事になります。


|事故現場から被害者を搬送したことで生じた損害

事故現場を通りかかった車が、被害者を医療機関等まで搬送した時に被った損害については填補されます。

例として、被害者に手を貸した際に汚した衣服や、応急処置等のタオル類、被害者の血痕等で汚損した車のシートの洗浄及び状態によっては交換もあるでしょう。


|被害者を救助や捜索に要した費用

例として、崖から転落した車に乗車していた被害者の救助や捜索の為の活動に、援助や協力してくれた人達に対して、手当金や謝礼金を支払った場合は必要かつ妥当な範囲の実費が認められます。

崖下から車を引き上げる作業の費用は、自動車保険の車両保険や状況によっては対物賠償保険の範ちゅうになります。


しかし、車の中にいる被害者も同時に引き上げた時は、救助活動として必要かつ妥当な実費として認められることになります。

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