後遺障害の「逸失利益」を算定する基礎収入と労働能力とは?

対人賠償

|後遺障害の逸失利益を算定するために・・
ケガが完治せず後遺障害が残った被害者にとっては、日常の生活に支障が生じるのみでは無く、症状によっては仕事の効率が下がる、または仕事が出来ない状態になり、結果として収入減や将来の利益が見込めなくなる場合もあります。

後遺障害によって、将来にわたって得る事が出来なくなった収入や利益のことを賠償上では「逸失利益」といいます。


後遺障害による逸失利益を認定するに際して、基礎収入に失われた労働能力の喪失率と、労働能力喪失期間に対応した中間利息控除係数というものを乗じて計算します。


計算式は、基礎収入✕労働能力喪失率✕労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数=逸失利益になります。

 ネットで完結!バイクの写真を撮って送るだけのかんたん査定【バイクル】 広告

|逸失利益の算定には個別の「基礎収入」が必要
「基礎収入」とは、交通事故にあった以前までの被害者の収入金額で、基本的には源泉徴収票や確定申告書が算定根拠の資料になります。

基本的に収入がない家庭の主婦や学生については、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入として計算するのですが、その場合勤務年数が少ない若年有職者の「逸失利益」が、学生や主婦より低く計算されるという不均衡が生じることも起こります。


例えば、賃金センサス2017年の男女計全年齢平均賃金(学歴計)で、約491万円になっていますので、当該年度の賃金センサスで算定される場合の大学生は491万円が基礎収入として計算されます。


仮に、24歳の男性で年間収入が300万円ある給与所得者の「逸失利益」を源泉徴収票の金額を基礎に計算すると、仕事をしていない学生より「逸失利益」が低くなるという結果になります。


不均衡の是正もあって最近の判例の傾向として、事故前の実収入額が全年齢平均賃金よりも低額で、事故時に概ね30歳未満の若年有職者については、将来においても全年齢平均賃金程度の収入を得られる可能性が見込まれる場合には、全年齢平均賃金を基礎収入として計算するというのが有力になっています。

保険会社も遅まきながら、この傾向に準拠して来ています!が・・中には気が付かずに、「現実収入額で進めましょう!」という担当者もいるかも知れませんので、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎にして計算する事を主張してみましょう。


但し、「将来においても全年齢平均賃金程度の収入を得られる可能性が見込まれる場合」の部分に拘る担当者もいるかも知れません!


しかし、「見込まれない」事が証明できない限り「見込まれる場合」として進めるしかないのです。

また、後遺障害によって会社を退職した場合は、実際に支払われた退職金と、後遺障害が無ければ勤務を継続した場合に得たであろう退職金との差額も逸失利益となり得ますが、裁判では勤務先の退職金規程や、定年まで勤務を継続する事が見込まれる蓋然性が必要とされます。

なお、会社役員の場合は、労務の提供による対価部分のみで基礎収入が算出されるのが一般的です。


|被害者の就労状況によって「基礎収入」は大きく異なる
事業所得者や自営業者の場合は、前年度の確定申告の金額に基づく収入額から、固定経費以外の経費を差し引いた金額が基礎収入となります。

一部ですが収入を過少申告しておいて、現実の収入額が申告所得額よりも高いことが証明された場合、現実の収入額を基礎収入として請求してくる被害者もいます。

立証資料や状況等から認められた裁判例もありますが、かなりレアなケースといえます。


事業所得者等が家族従事者を使用している場合には、休業損害における基礎収入算定の場合と同様に事業所得者本人の寄与分の割合によって基礎収入を算出します。

家事従事者については、基本的には全年齢平均賃金を基礎収入とします。


仕事をしている兼業主婦の場合は、実際の収入額と全年齢平均賃金のいずれか高い金額を基礎収入として計算するのが一般的です。

学生についても、原則として全年齢平均賃金を基礎収入としていますが、被害者が大学就学前の年齢の場合、被害者の環境や状況から大学進学が見込まれる場合には、大卒の賃金センサスによる基礎収入算定が認められる事もあります。

被害者が失業者の場合は、労働能力と労働意欲があり、かつ就労の可能性がある場合には原則として失業前の収入を参考にして基礎収入を計算する事も有ります。

失業前の収入額が賃金センサスの平均賃金額を下回っている場合、将来平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる「具体的事情」があれば平均賃金額を基礎収入と認められる場合もあります。

高齢者の場合は、就労の蓋然性が認められる事で、賃金センサス年齢別平均賃金により基礎収入を算定することになります。


|「労働能力喪失率」の認定に関して
「労働能力喪失率」とは、例えば後遺障害第14級の場合で喪失率5%と定められている様に、後遺障害の程度によって失われた労働能力を数値化したもので、後遺障害の等級に応じて減収する割合をいいます。


保険実務上では、自賠責保険の「労働能力喪失率表」という後遺障害の等級に応じた労働能力の喪失率を定めた表を参考に被害者の症状や、個別事情を考慮して労働能力喪失率を算定しています。


したがって、個別の状況や状態によっては、労働能力喪失表に定められた数値を下回る喪失率が認定されることもありますが、ほとんどの後遺障害は労働能力喪失率表に従って喪失率を認定しています。


自賠責保険の喪失率は、労災保険の補償給付額に準拠して作成されており、喪失率表を基準に計算されることになっているので、自賠責保険基準では基本的に例外は有りません。


労災保険においては、後遺障害の程度が労働に対する影響力を判断して認定されています。


労災保険も自賠責保険の基準も、個人の状況や実態などと乖離が大きくなるケースも散見され、基準が単純であることで時代の多様化に後れを取っているとの指摘も有ります。


保険会社の実務上は、基準とは「物事の基礎となるよりどころであり、満たさなければならない一定の要件」と理解しているので、基準には個別の状況や事情によって斟酌する事を求めていないと解しています。


当然ですが、被害者は自賠責基準の喪失率に従わなければならない!と縛られる事はありません。


後遺障害による労働能力喪失の程度が、労働能力喪失率表の数値を上回る場合は、立証の義務は必要にはなりますが、個別に請求することは可能です。


|「労働能力喪失期間」の認定
後遺障害が残ったことで、例えば仕事の量や質に事故前の70%程度しかできない等の影響が十数年にもわたり残ることがあります。


事故状況によっては、例えば片方の腕を失ってしまう様な事態も起こり、一生影響を受け続けることもあるでしょう。

程度の違いはありますが後遺障害によって労働能力が失われた期間のことを「労働能力喪失期間」といいます。


「労働能力喪失期間」は、基本的には症状固定日から67歳までの期間内で認定されます。

被害者が若年の未就労者で、例えば症状固定時の年齢が15歳の場合は、労働能力喪失期間の始期は15歳の症状固定日ではなく、18歳または大学卒業を前提として22歳からとなります。

なお、労働能力喪失期間は、被害者の職業や後遺障害の程度、機能上の回復見込み等の個別の状況によって、67歳よりも短い期間に制限される場合もあります。

高齢者については、基本原則をそのまま当てはめた場合、労働能力喪失期間がまったく認められないか、認められたとしても短期間となる場合があるので、症状固定時の年齢が67歳を超える被害者は、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間として認定されています。

例えば、症状固定時の年齢が70歳の男性の場合、平成29年の簡易生命表によれば、平均余命は15.73ですから、労働能力喪失期間は約7年となります。


また、症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる場合も、原則として平均余命の2分の1と判断されることになります。

|労働能力喪失期間に制限を設ける場合

労働能力喪失期間が制限されやすい後遺障害として、「むち打ち症」等の神経症状が残存した場合の後遺障害第12級13号と第14級9号があります。


この神経症状残存の後遺障害の場合、第12級13号については6年~10年程度、第14級9号については、5年以下に労働能力喪失期間が制限されているのが実情です。


この制限期間は、「交通事故紛争処理センター」等のADLだけではなく、被害者が個別に依頼する弁護士においても、ほぼ了承済みとされた期間内で賠償請求が行われています。


「むち打ち症」以外の神経症状が残存した後遺障害の場合については、労働能力喪失期間を短期に制限した裁判例もありますが、「むち打ち症」に比べて比較的長期間の労働能力喪失を認めているケースが多い様です。


特に、後遺障害第14級9号については、他の後遺障害の等級と比較して対応や扱いが厳しいと感じている関係者は少なくないかも知れません。

              韓国アパレルセレクトショップ【Osul】 広告

タイトルとURLをコピーしました